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獣人さまと一緒  作者: 牧野りせ
鳥獣様と一緒
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アイテム職人は空を飛ぶ

お越しいただきありがとうございます。


ブックマークありがとうございます!

 鍛冶師たちは廊下を駆け抜ける。


 どうやらここは貴族の屋敷のようだ。規模から考えてどこかの領主の居城と考えていい規模だ。それを踏まえて裏からの脱出を試みる。


 しばらく走ったところで緑の騎士服を着た男たちにであう。男たちはひどく慌てた様子で「この忙しい時に!」とか「今はそれどころじゃない」などと叫んで過ぎ去っていく。


 敵兵が現れた!戦闘か!?と血気盛んな男たちが血走った目をむけようとしていたのに、まさかの無視!以外というよりもこれは個々の人間にとって不利な出来事が起こっているらしいと分析しつつ足は止めない。


 すると今度は見慣れた黒い騎士服の男たちが現れてルリは肩の力が抜ける。


 「王都の騎士様です!きっと助けですよ!」


 王都から騎士が派遣されるということは王はこの反乱?に気づいていたということだろうか。そんな疑問を抱きつつも一同が騎士の方へとかけていく最中、ルリを呼び止める声がかけられる。


 「ルリ嬢!団長の指示で探していました!ご案内します!」


 「え?」


 「団長は作戦行動中であちらにはいません。敵に気づかれてはいけませんのでお早く!」


 なぜか早く早くと急かされ手まで引かれて鍛冶師たちから引き離される。そんな行動に焦り、何度も振り返るがどこかに連れて行こうとする女騎士の力は強い。


 何度か廊下を曲がり、階段を上がったところで違和感を覚える。


 「どこまで行くんですか?」


 掴まれている手とは逆の手に持っている短槍をぐっと握りなおす。女騎士の髪につけられた飾りに見覚えがあった。


 「もうすぐですよ。この先です。」


 「私、あなたと会ったことありますよね?」


 階段がまだ先があるのを確認しながら、ルリは廊下に引っ張られる。それでも女に対して違和感の正体に気づいて問いかけた。


 その質問に一瞬女騎士はピクリと反応したものの、何事もないように歩く。


 「……先日騎士団にいらした時じゃないですか?」


 「貴方の声聞き覚えがあります。王都で私に声をかけた人ですよね。」


 確信をもって淀みなく言うルリの言葉に女騎士の足が止まった。


 「あら、意外と記憶力がいいのね。泥棒猫のくせに。」


 それまでの愛想のいい声と打って変わってぐっと低くなった声にルリの手汗が止まらない。


 「どういう意味ですか。」


 「あら、心当たりがないとでも?団長を私から盗人のくせに知らないとは言わせないわよ。いつだってどんな女と浮名を流したって団長は最後には私のもとに帰ってきたのに。お前なんかいなくなればいいのよ!」


 女騎士の言葉と同時に廊下の向こうにシエルを認めてルリは焦る。握った短槍を女騎士に向かって振ると、女騎士はしゃがんでそれを交わした。


 女の表情に浮かんだ妖艶な笑みに背中がぞくりとする。


 だがそんなことに構ってられない。振った勢いを殺すことなく、ルリは槍を騎士のマントめがけて強く突き立てると、その場に女騎士を動けないように縫い付けてもと来た廊下を戻り、階段を駆け上がる。


 「城壁の上……。」


 さらされた風に髪をなびかせながらルリはいけるとこまで行くしかないと城壁の上細い通路ををかけた。


 城の内側はすでに大方の制圧が終わっているのか、喧騒は静まりつつある。


 「ねぇ、ルリ?私を置いてどこに行くんだい?今ならお仕置きも少しで済ませてあげるから戻っておいで。」


 走って追われているわけでもないのに背後から迫るその恐怖に背中に汗が流れる。この城壁もどこまでつながっているのか。いつまでも追いかけっこをするわけにいかないだろう。


 焦るルリの耳に微かに掠れて風に乗って届くものがあった。


 ここにいるの?来ている?


 泣きそうになるのを必死でこらえながらその姿を探すが城壁の上にそれらしい姿はない。


 さっきの女騎士は団長と言っていたのだからきっといるのだろう。空耳じゃない。


 恐怖を振り切るようにルリは肺の中にいっぱいの空気を吸い込む。


 「エリュトローン!レイヴーン!!」


 かすかに聞こえたそれに縋るように精一杯その名を呼ぶ。


 「……り!……だ!!」


 聞こえた!


 風にあおられつつもルリは崩れないように一層足に力を込める。


 「ルリ。いい子だから帰っておいで。」


 後ろから聞こえる足音で近くなってることを悟りながらもルリは振り返らない。そんなことしてしまえば恐怖に足がすくんでしまいそうだった。


 「エリュトロン!レイヴン!」


 もう一度名を叫べば近くから返ってくる声が二つ。


 足を止めて城壁の下を覗き込めば最近になって見慣れた顔が二つこちらを見上げている。


 「ルリ!迎えに来た!」


 「エリュトロン!レイヴン!」


 しかしこの近くに安全に降りれそうな場所がない。後ろから迫ってくる存在をちらりと見る。そんなルリの顔面蒼白となった姿に城壁の下にいるエリュトロンとレイヴンは切羽詰まった状況なのだと悟る。


 「るぅりぃ?ほら、おいで。今なら痛くないお仕置きにしてあげるよ。だから自分から戻っておいで。それともここから飛び降りるかい?三階の高さから?君には無理だろう?ルリには翼がないんだから。」


 ねっとりとした声に血の気が引く。心の底から気持ち悪い。


 「ルリ!飛べ!」


 下からの声に地上までの高さにめまいがする。でも目の前の存在に足がすくむ。同じ動けない状況なら自分は……。


 スカートをぐっとつかんで顎を引いた。


 「貴方なんかに辱められるぐらいなら死んだほうがマシっ!!」


 初めて向ける蔑みの視線にはっきりとした拒否の言葉を添えて、ルリは城壁のレンガに足をかける。


 息を止めて身を丸めるようにして眉間にしわを寄せルリの体は宙を舞った。下からの風に頬を撫でられて肩とお腹のあたりに強い力を感じすがるように手を伸ばした。


 ルリは自分がもう落下してないことに気づいて目を開ける。


 地面がすぐ目の前にあるがけしてぶつかってはいない。力強く支えられた肩に回された腕をたどればエリュトロンの困ったような顔と、お腹のあたりに感じる力をたどればレイヴンの安堵した顔があった。


 「怖かった怖かった怖かった怖かった……。」


 まるで念仏のようにつぶやくルリの体がカタカタと震えだしたことに気づき、二人の男はその華奢な体を抱きしめた。


 「ルリ……。」


 「無事でよかった。」


 結果的に二人にサンドイッチされるように抱きしめられたルリはその暖かさに泣きたくなるほどホッとした。もう大丈夫だと思えた瞬間に体の力が抜けた。


 そこからぷっつりと記憶が途切れた。




ご覧いただきありがとうございます。


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