アイテム職人は攫われる
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硬い何かにぶつかって目が覚めた。
「っつ……。」
そこはルリがよく知っている鍛冶場の空気。だが慣れ親しんだ故郷の工房とも、やっと慣れてきた店の工房でもない。
固められた室内の土間。
どうにか体を起こしたもののぎしぎしと固まった体に一体何日寝ていたのかと頭を抱える。
周囲を見渡せば工場かと思う広さの両サイドに炉がずらりと並んでいて、それぞれに人が二、三人ついて炉にインゴットを入れる人、熱せられたインゴットを二人がかりで叩いている。
「何?ここ。」
こんな大きな鍛冶工場聞いたことも見たこともない。こんな工房個人の域を脱している。生産系ギルドのお抱え工房でもこんな工場めいた話を聞いたことがない。
「おい、新人だ!面倒見てやれ!」
後ろから響いた声に慌ててそちらを向いた。
自分の記憶に間違いなければここに連れてこられる前に見たのはシエルさんだった。強張る体をかばうように振り向いたがそこに立っているのは見知らぬ男だ。
傭兵のような恰好の男はそれだけ言うと鉄の戸を閉めてしまう。向こう側でガチャガチャと音がするあたり扉に鎖を巻かれた上に鍵をかけられたのだろうと予測する。
少なくともシエルさんがいないだけで安心した。おまけにすぐさま気概を加えられないのならそれだけで御の字だ。
とにかくこの状況を理解しなければならない。
「なんだよ、こんな子供まで攫ってきたんか。ったく何を考えているんだか。」
子供とはなんだ。こちとら立派な大人じゃい。いろいろ足りない自覚はあるが、身長とか胸とか胸とか胸とか……。
一人そんなことを想っているとすぐそばにやってくる人の気配。
「大丈夫か嬢ちゃん。一人でこんなとこに攫われて怖かったろう?」
しゃがんで覗き込んできたのはじいちゃんと言えるような年齢の男だった。顔に刻まれた皴が優しくゆがんでいる。
ポンポンと撫でるように弾む手が頭の上に乗せられて、なぜだかルリは泣きたくなった。悲しいわけではない。不安なわけじゃない。ただ怖かった。前に無理やりシエルに連れていかれそうになった時助けてくれた手があった。でも今回はそれすらなくて、自分がどんな目にあわされるか思い返すだけで手が震えた。
そんな様子を見た老人はちょっと困ったように頭の上の耳をペタリとしながらも、誘拐されたことがきっと不安で親がいない迷子のようにルリを思っているのだろう。
「お前さんも鍛冶師なのか?」
尋ねられた声にルリはかうなずいてじっと老人を見つめる。
「名前は?」
「ルリです。」
「そうか。おれはナナック。ここで一番最初に誘拐された間抜けだ。」
ニカッと人のいい笑顔を浮かべてナナックはルリを立ち上がらせるように両手を引いてくれる。
「ここはどこぞの血迷ったやつが鍛冶師ばかりを攫ってきて鎧や剣を朝から晩まで作らされている。行動は制限されているが朝と晩にパンとスープだけは出るし、奥の水場はいつでも飲み放題だ。」
そこまで説明すると、ナナックはまるで孫にするように視線を合わせてくる。
「俺が教えてやれるのはこれぐらいだ。」
「作らなければどうなるんですか?」
考えるまでもない質問だろう。だってここには誘拐されて鍛冶仕事を強いられているのだ。きっと拒否した人間が今までにいないはずはない。
「一日仕事を拒んだ奴はどこかに連れていかれて帰ってこなかった。どうなったかは儂らはわからん。だが攫ってきてここを見た上に動かなかったのなら口封じされたと考えるのが自然だろうな。」
「……戦争でもするんでしょうか?」
「さぁな。だがこうも武器をそろえるということはそう考えている奴がいるんだろうよ。」
「そうですか。」
そんなことちょっと考えればわかる。と、いうか鍛冶師は必ず師匠に言われることがある。王やそれに順じる公的機関以外から50を超える発注を受けた場合、反乱、密輸の疑いがあるので必ず領主や王城に届けるようにと。これは鍛冶師の証明である木簡をいだいたものに課せられる義務でもあり、またこの規則は貴族であれば誰でも知っている。
だからこそこうして鍛冶師を誘拐し監禁しているのだ。つまりここを管理しているのは少なくとも国内の貴族以上の身分の者ということは容易に推測できる。
「んで、嬢ちゃんは何が作れる?攫われたってことはお前さんも鍛冶師だろう?何が作れる?」
「えっと。」
首から下げている木簡を服から出して木簡を下げた革紐を持ったまま見えるように出す。
「げ。何の冗談だよ。ってお前さん18なのか。」
木簡には鍛冶師にしかわからない文字でその者の制作ランクが記載されている。主に鉄や銅しか加工できないブロンズランク、銀や金などの高級鉱石を加工できるシルバーランク、貴重鉱石を加工できるゴールドランク、貴重鉱石に素材を混ぜて加工できるプラチナランクがある。
「その歳でプラチナってどこの工房出身だよ。聞いたことねぇぞ。」
なぜかドン引かれている。理不尽だ。と思いつつもルリは木簡を服の中にしまうのだった。
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