アイテム職人は三度王都に訪れる
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あくる朝、ルリはレイヴンに朝食まで進めてから見送ると頭を悩ませた。
「材料の入手を考えれば間違いなく冒険者ギルドに行って素材依頼出せばいいと思う。でも昨日の今日だし。もう会いたくない。」
鉱物や鉱石に限ってはジョンが出してくれる。しかし、魔物から採取する素材はジョンが出すことができない。難易度の低い素材であればルリも自分で入手すべく槍を片手に狩りに行く。
当初は魔法を使えるのだから~。と、火の魔法を駆使していたが、素材ごと焼いてしまって使い物にならず、普段障壁ぐらいにしか使わない風魔法を使えばノーコンぶりを発揮して素材ごと切り刻む。なけなしの水魔法を使うと致命傷が与えられない上に素材は水浸しになり乾燥させると縮んで変質する。結果武器を握ることになった。
しかし、いかに武器を持って狩りに挑もうとも所詮ルリは鍛冶師である。上級魔物に至っては当然自分で仕留めることはできない。
となれば獲れる者に依頼するしかないわけだが、そうなると冒険者ギルドに依頼に出すか、在庫を買い取るかしかないわけだ。
そうなると一番規模の大きい王都のギルドに行くのが一番いいわけだが。
「この数日で何回シエルさんに遭遇しているのか……。」
正直怖い。今後何をされるかわからない。隠れ番と指摘された彼が何をするか、どう出るか……。
だが隠れていても材料はそろわない。レイヴンだけの分なら確かに彼に直接依頼してもいい。しかし、エリュトロンからの依頼物だってある。
「行くしかないか。……ってか、私この数日で同じ決断何回してるんだか……。」
苦渋の決断をしつつ、ルリは牡鹿のぬいぐるみに魔力を流す。
「よかったぁ。二人分の素材あった~。でも失敗できないなぁ。」
カバンの中をちらちら除きつつ顔を引き締める。家に帰るまでが遠……じゃない。買い出しである。無事に帰るまで気が抜けない。
そう気合いを入れてカバンを閉じたその時だった。
「もし、もし!お嬢さん落としましたよ。」
後ろから聞こえる澄んだ女性に、はて何か落としたろうかと振り返る。
フードを被った女の人……。顔は見えない。なんて思っていると口に何かが当てられて横の小道に引きずり込まれた。
「ん!んー!」
「暴れたらだめだよ?ルリ。」
甘ったるい声のはずなのに背筋に寒気が走る。それとほぼ同時に意識が遠のいていくのを感じながら、ルリは女の方に注目した。
「貴方がいなくなればきっと彼はまた私を見てくれる。さっさと連れて行ってちょうだい。」
やっぱり顔は見えない。そんなことを途切れる意識の中でルリは思うのだった。
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