アイテム職人は接客する
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昨日はPVが1700超えでした。ありがとうございます。
「え~。えぇ~!?」
今日は珍しくも珍客が多いなぁ。と思いながらルリは店の屋根を見つめた。
「ジョン?あなた生き物食べるんだったっけ?美味しいのソレ?」
カッカッと一定のリズムで刻まれるチョークは文字を刻む。
『食べない。おいしくない。邪魔。』
「じゃぁ、ぺってしなさい。ぺって。」
ルリの言葉を実行しようと建物は上下左右に揺らして屋根にある煙突から何かを放り出した。ドスンと音を立てて地面に放り出されたそれは少しのうめき声を立てるともぞもぞ動き出す。
「ここにたどり着けるということはお客さんだと思うけど。」
黒い羽根をはやしているということは半獣状態の鳥獣人で間違いないだろうと思うが……。思わず足元の枝を拾って近寄ってみる。
「あのー。」
一歩。
「大丈夫ですかー?」
また一歩。
「ケガとかしてませんかー。」
さらに一歩。
ガバッ!!
「うわっ!」
女らしからぬ驚きの声を上げてルリは一歩下がる。咄嗟に枝を後ろに隠した。
勢いよく起き上がった人物はパタパタと衣服のホコリを払い人化するとこちらを振り向く。
「あ、あの……。」
なぜか睨まれている。何もしてないのに。
「ここがジョンのアイテム用品店か?」
すごく不機嫌そうだ。
「はい。そうですが。」
「あんたはここの店員か?店主はどこだ?」
随分横柄な態度である。と、いうか初対面の男にあんた呼ばわりされるのは不本意だ。さりとてそこは接客業。あくまでもさわやかに。母さんも言ってた。女は愛嬌だって。
「店主は私です。何をお探しでしょうが。」
「お前が店主?ジョンとは男じゃないのか?」
「あー。ジョンですか。店の持ち主がジョンですから。」
正しくは店がジョンなのだが常連になるかどうかもわからない相手にいちいち説明などしてられない。日も傾いた時間の客などさっさと帰ってもらうに限る。
「まぁ、ご用は中で聞きますのでどうぞ。」
胡散臭そうな目で見つめられる。なんだか野良猫みたいなお客さんだなぁ。用事あるから来たんじゃないんだろうか。
「ご購入でしょうか?ご注文でしょうか?」
カウンターに入りながら横目に聞いてみる。一応初見のお客さんにはそう言って声掛けしている。
「どちらでも構わない。」
無口な人なのだろうか。どうにも横柄な態度である。店の中が珍しいのかしげしげと見て回っている。
「はぁ。そうですか。ご注文もお受けしていますが、内容次第ではありますが今ですと納品は一週間後になります。なにか魔法による付与効果が必要でしたらそれよりもう少々お時間をいただいています。お探しの物があればお出ししますが。」
初めてのお客さんなので説明をすれば何やら面倒そうな顔でこちらを睨まれる。漆黒の目と髪が迫力を上乗せする。
あ、わかります。洋服屋さんとかに行って自分好みの物はないか物色しているだけなのに店員が横に張り付いてくると嫌になるやつ。
はいはい。黙ってますとも。
自分も店では放っておいてほしいくちなのでこういうお客さんは触らないに限るのだ。泥棒さえされなければいい。気の小さな客なら何か手ごろな装飾品か回復薬を買って出ていくだろうし、期待外れというなら黙って出ていくだろう。
「杖はあるか?」
「杖ですか?はい。あります。」
獣人は基本的に身体能力が高く魔力が少ないなので自然と魔法を使う獣人は珍しい。
「お待ちください。」
カウンターから出て男の脇を抜けると壁にある腰高の棚の一番下にある引き出しを次々と引き、杖を拾い上げていく。
「今作ってあるものはこの5種類です。」
赤、青、緑に茶色と白の杖をカウンターに並べる。男は早速それらを手に取りしげしげと眺めている。せっかく杖を求めているならちょうどいいので、もう一度引き出しの方に戻ると同じように五つ拾い上げてから引き出しを足で戻していく。
両手ふさがってるからね。お客さんこっち見てないからダイジョウブ。きっと。
カウンターで杖を吟味している男の横に新たに持ってきたものを並べる。
「俺は杖をといったが。」
「ああ、これは魔道具です。杖ほど何でも使えるわけではないですが魔石と宝石を核にしてあるので基礎魔法と属性特化の付与がついています。特異な系統があればこちらもお勧めです。」
そういうと見せたほうが早いだろうと思い、赤い鳥のぬいぐるみを手に取り魔力を流す。すると鳥は縫い目がなくなり本物の赤い鳥となって立ち上がりカウンターから飛び上がると、店の中を一周してルリの肩のあたりでホバリングしている。
「一見するとテイマーが使役物を連れているようにしか見えませんが、能力は属性特化の杖です。例えば今のこれなら火属性特化ですので他の魔法は基礎レベルか無属性しか使えません。そのかわり杖の二倍の威力は確認済みです。」
詠唱もなしに指先に火を灯す。魔法使いが火属性で最初に習う魔法で本来なら指先に蝋燭ほどの灯がともる程度のものだ。しかし、火はまるで油に浸したランプのように力強く高く上がっている。
それだけ見せると鳥に手をかざし魔力を抜くと元のぬいぐるみに戻りカウンターの上に落ちる。
「初めて見るタイプだな。」
じっと観察していた男がぽつりとつぶやく。」
「この魔道具はうちのオリジナルです。他ではないと思います。」
「なるほど……。つまりこれの制作者はきみなんだな。」
「はぁ。ここに技術者は私だけなので。」
しばし考えた後でぶつぶつ言いながらも、男は白い杖と緑の魔道具を選ぶと代金を革袋入りで払っていった。
「今日は気前のいい変な客ばかりねぇ。」
ぽつりとつぶやくと、本日の売り上げである小袋を二つ持って工房に入る。室内の端っこにあるいかにも宝箱!という木作りの宝箱を開いて小袋の中身を半分ずつ箱の中に入れて閉じる。
「ジョン、今日はもう店仕舞いだよー。看板よろしく。……臨時収入できたから明日にでも日用品買いに行こうかなぁ。」
ちょっと潤った懐にルンルン気分で住居スペースである奥に進むのであった。
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