アイテム職人は困惑する
お越しいただきありがとうございます。
新章突入してテンション上がってまさかの三回目更新(アホと言ってください)
前にも触れましたが予約アップしないので不定期更新です。ごめんなさい。
じっとこちらを見つめる客にルリは後ずさりたくなるのをこらえて接客用の笑顔を浮かべる。
飛び込みの客だろうか。いくら山の中とは言えたまに飛び込みの客が来る。週に一人とか月に一人とかだが。ここの客はどちらかというと特注が多い。武器ともなればその人の体に合わせて作るからだ。装身具も作ってはいるがその売り上げはおまけ程度である。外に向けて宣伝もしていないのだからなおさらである。
そもそも売るために作っているのではない。鍛冶師であるルリにとってはジョンの満足に足るものを作るための習作である。なので材料代程度しかとっていないのだ。
初めての客ならばこんな森に店がある時点で驚きながらも入ってきた理由だとか、なぜこんなとこに店があるのだとかいうものだが、この男はそれがない。誰かの紹介ならばその旨を先に言うだろう。
ということは初めてではない。しかしルリはこの男に見覚えなんてない。
おまけになんだか顔が怖い。というか表情がない。呆然としているのか何も考えていないのか。せめて何か反応とか言葉はないのか。や、動いているから何かくしょんを起こすつもりなのか。
「あの、お客様……?」
恐る恐る声をかけるとはっとしたように一瞬男の動きが止まった。
「あ、えっと。エリュトロン・ショゥビーンです。約束のものを取りにきま……した。」
最後は消え入りそうな声で男は言う。おそらく自分より年上だろうな。とは思うのだが、なぜ客である方が弱気なのか。
「あ、失礼しました。いつもは別の方がいらっしゃるのでわかりませんでした。こちらがご注文のお品でございますご確認ください。」
カウンターから一つの箱を取り出して中身を見せる。
「あ、ああ。これ……です。」
だからなぜ語尾が……?どこかで聞いたことあるような。
中にあるのは女性もののブレスレット。赤いベルベットの箱におさまるそれは随分豪華なつくりだ。自分だったら重たくて付けたくない。とはおくびにも出さずに。
「でも、もうそれも……。」
ささやくような声はルリには届かず、ルリはカウンターの下から布とリボンを出す。
「ではいつものようにお包み致しますのでお待ちを……。」
「あ、今日は包まなくていい……です。」
「え?あ、はい。」
「それと、この髪飾りもくださ……い。」
カウンターに乗せられたのは先ほど並べたばかりの鳥飾りがついたワニ口のピン。
挟んでいた値札を外しながら包むかどうかを聞いたらそれもいらないと言われ、合計の金額を告げれば小さな袋が渡される。
この払い方の場合、釣りはいらない。ということだ。何とも羽振りがいいようだ。
「ありがとうごいま……。」
購入の礼と共に頭を下げようとした時、しなやかな手が延ばされた。何事かと動けずにいると今買ったばかりのワニ口ピンで前髪を止められる。
「また、きま……す。」
これまでとは打って変わった柔らかな微笑みに目を見開いていると、男は颯爽と出ていってしまった。
「え……?なに?」
元のように人がいなくなった店舗を見つめて現状が分からずそっと髪を触る。普段ない重みの場所を触ればカツンとあたる感触。
「買ったのに置いてくって何?」
南で両親の店で店番をしていた時に差し入れをもらうことはあった。しかしそれは外で買ったものを持ってきてくれるのだ。普通に小物をもらうこともあった。プレゼントってやつだ。
「差し入れ……は違うか。プレゼント……?や、それもちがうような。作った本人に渡すってなんだ?」
めでたくも人生初体験の困惑にルリはただ鳥の髪飾りを見つめた。
ご覧いただきありがとうございます。
ちょっと短めかな。とも思いつつ。
さ、次回は男ことエリュトロン目線ですよ!
これからもよろしくお願いします。




