アイテム職人は森に住まう
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獣人の国アニマ。その王都の街から少し離れた東北の森。そこに彼女は住んでいた。
「やっぱりこのぐらいのほうが私には住みやすいわね。」
ぽつりとつぶやきながらうーんと伸びをする。木立の隙間から入る朝の光は幻想的でこの光景が気にっている。
南端の領地から成人と共に単身移住してきた。王都で一旗揚げてやろう!とか、稀代の冒険家になるのだ!などといった野心からではない。
単に気候が合わなかったのだ。
最南の領地でルリカケス獣人の両親から生まれた少女、ルリは5人兄弟の中で唯一生まれた突然変異の人族である。最近ではそれも珍しいことではなく、嫌われるどころか獣人のメスが減っている昨今人族であろうと女の子が生まれることはどの種族とも交わることのできる優良個体とされ町ぐるみで歓迎されていた。実際ルリの兄弟残り4人は男である。
ルリの両親は鍛冶師でかつては女が鉄を踏むものであったが、女性が少なった結果最近では男女問わず鉄を打つ。な、もので、もちろんルリも基本は鍛冶師である。
鍛冶師の仕事はとても楽しいからルリは気に入っていた。しかし、いかんせん南でその仕事は人族のルリには厳しく、なかなか体力が続かない。そこで考えたのが『気候が合わないなら自分の合う土地で仕事をすればいいじゃない!』と実に安直な理由で家を出た。
定住する住処を決めるまでは二番目の兄がついてきてくれた。兄はルリの定住先が決まりある程度仕事のできる環境になると故郷に羽ばたいていった。
というわけで、ルリはこの森の中に住んでいる唯一の鍛冶師である。
店の表で伸びをすると入り口に置いてある看板代わり黒板がカッカッと音を立てて文字を刻む。
『おはようルリ。今日は何作るの?』
書かれる文字を追ってルリはその内容を理解すると建物に向かって声をかける。
「おはよう、ジョン。今日は剣を一本こしらえるつもりよ。」
すると文字が消えてもう一度白い字が並ぶ。
『呪いのネックレスがいい。』
「いやいや。呪いなんてかけれないから。私は鍛冶師。そもそも装身具は彫金師の仕事なんだよ?まぁ、作るの好きだからいいけどさぁ。」
ぶつくさと文句を言いながら室内に入る。戸をくぐるとそこは四畳半ぐらいの狭い店舗である。真ん中には細長い台があり、台の上には指輪やピアスにネックレス、腕輪にアンクレット、ブローチ、髪飾りなどという装身具が並び、壁には剣と短剣が飾るように並んでいる。腰高の棚にも弓に杖、盾といった正直何屋なのかわからないラインナップだ。
ただいえることはそれらは大げさなくらい整然と並べられている。まるでコレクションの様だ。
カウンターにある小さな黒板がカッカッとなって文字を刻む。
『呪えないなら呪いのまじないの本用意する』
「いらないよ!」
間髪応えてかぶりを振る。
「大体ネックレス作るにも宝石もうないよ?どんなのがいいの?」
すると、カウンターの奥の部屋からゴトリと音がして、顔だけのぞかせてみると濃紺の塊が部屋の真ん中に落ちている。
「これは……ブルーゴールドストーン?ってこれ宝石じゃなくてガラスじゃない。確かに貴重で高価だから価値はあるだろうけど、私はガラス職人じゃなくて鍛冶師なのよ?」
『この前できた。今日もできる。』
どうやら譲る気はないらしい。
「はいはい。ジョンのお好みのままに作るわよ。」
そういうと工房のスケッチブックを広げてデザインを考える。濃紺の中でキラキラと光るソレはまさに夜空の星を思わせる。
「星屑シリーズなんてどうかなぁ。」
いろいろなモチーフを考えてスケッチブックに書きなぐる。最終的に残ったのは兎と鳥。どうしても鳥族の出身なので毎回鳥のモチーフがはずせない。
「あ、そうじゃなくてまずジョンが好みそうなものから作らなきゃね。」
一枚紙をめくって豪奢なネックレスをイメージする。貴族のご婦人が好むようなゴテゴテしたものだ。
「これでいい?」
天井に向かってデザイン画を見せると、工房の壁に取り付けられた黒板がカッカッと音を立てて『グッド』とだけ書かれる。
「ってことはまず土台のストックでよさそうなのはぁ。」
壁にずらりと並んだ引き出しから土台を選び作業台に戻る。
「ジョン、ダイヤが足りないわ。用意してね。」
すると後ろでじゃりじゃりと音がするとカッティング済みのダイヤが一山できている。そばにしゃがみこむとその中から出来の良いものを選別して必要な数を取ると、残りを箒と塵取りで集めザルに移し余計な砂を落として引き出しに入れると作業に戻る。
焼きや乾燥などの合間に余りそうな材料で鳥のモチーフを作り銀製のワニ口ピンにくっつける。子供っぽくならないように真珠で縁を飾る。
「せっかくだから表に出しとくか。値段はぁ……。」
少し考えて値札を出して金額を記入しワニ口に挟むと店舗の真ん中にある台にスペースを作って飾る。
「うんうん。いいじゃない。自分用でもいいなぁ……って使うことないか。」
工房を通り過ぎてその奥にある居住スペースからパンを一個とってかじり、食べ終わるとまた工房に戻る。
熱中して作業していると時がたつのを忘れる。気が付くと店舗で誰かが歩く気配がする。覗き込むように店舗を見る。
そこには茜色の髪を一つに結んだ男がしげしげとアクセサリーの並びを見ていた。よほど珍しいのだろうか前かがみで眺めている。
「いらっしゃいませ。」
声をかけながらカウンターに入れば、男は落ちるんじゃないかというほど目を見開くとゆっくり体を戻す。よくよく観察すると男には獣人特有の耳がないので鳥族か人族なのだろう人間の耳の位置は髪に覆われているので確認はできない。
男はクリッとした黒い目の視線だけで台を見ると一つの髪飾りを手に取るとルリをじっと見つめてゆっくりとカウンターにやってくる。
(あ、さっき作ったやつ。)
ご覧いただきありがとうございます。
ルリの話はだいぶ前から脳内浸食してて早く書き出したいとうずうずしてました。
今回はできるだけ恋愛要素強めにいけたらいいなぁと思ってます。
よろしくお願いします。




