領主代行は空を見上げる
お越しいただきありがとうございます。
今日はスマホから投稿しちゃったので一度途中掲載させていただきました。中途半端ですみません。
いよいよ三章ここに集結です。
お付き合いいただければ幸いです。
戦争勃発と思われたあの日から早五日、平原から兵を引き上げたクリストファーは王都に攻め入った。王都までの移動中各所で『人質にされていた家族は隣国のセプテント領にて巻き込まれないように保護してもらっている』という噂が広がり、これまで重税、飢饉、戦争と不満だらけの国民が膨れ上がるようにその列に加わり王都陥落は呆気なく終わった。
さらにそれを見越したように日をまたいでアニマからの使者がもたらされ、同盟締結となることで弱り切った北国は周辺諸国から領土のパイ切戦争が回避された。
クリストファーとその重臣の婚約者や妻たちは少しでも不安を和らげられるようにと連日招かれるパンテーラのお茶会に参加しているうちに、すっかり彼女の人となりに心酔し、別れの日には涙を流すほどであった。
そんな彼女たちを見送った後、パンテーラは変わることなく忙しい毎日を送っていたが、そんなこと気にすることもないマルテルは相変わらず少年のような瞳で執務室に用もなく入り浸っていた。それを咎めるという目的でルナールもそこに堂々といるわけだが、目的どおりマルテルを諫めることもなく寧ろその場に腰を落ち着けている。
「ところで姫、どうして山まで要求したんですか?平原はわかります。あそこは国境に沿って食い込むような地形ですからあれがこちらのものとなれば戦において今後有利になります。しかし山は険しいばかりで山城も作れるようなものでもありませんし……。」
セプテントは根っからの軍事領だ。そのおかげで領民まして男ともなると思考がどうしても軍事的になりがちだ。
考え込むルナールに浅いため息をついて、パンテーラは手元の書類から視線を上げ、それを控えたアウルに手渡した。
「まぁ、確かに今後の戦略を思えばたしかにあの平原は有用でしょうが、私の目的はそれではありません。あの平原は地形から我が国の三領に面しています。あの地を観光にできればずいぶんと潤うでしょうね。」
「観光??」
要領を得ないルナールに加えてマルテルも頭に疑問符を浮かべる。
「一年の半分はあそこは雪ですから、冬季限定の雪や氷を使った宿を作るんです。」
「宿?」
「南の人には珍しいですし位置関係から自領だけじゃなく経由地になる他領もお金は落ちるでしょうし、観光地として直接人が来ればお土産としてものも売れます。ひいては経済も回りますもの。おまけに雪や氷は重いですから軍の鍛錬にもなります。一石二鳥ですね。」
「では、山に関しては?」
「あ〜、あそこですか。精霊が話してたのですが、あの山からは温泉が出るそうです。それに女性の喜ぶ美容に良い成分を含んだ鉱石の鉱脈があるそうです。」
「鉱石ですか?」
「なんでも引いて粉にして水に解くだけで乾燥と日焼けを防ぎ虫よけにもなるこの山でしか取れない石だそうですよ。女性は美容となれば財は惜しみませんからね。定着すれば安定した領民の収入になります。」
パンテーラの頭の中では将来の展望が見えているのだろう。窓の外を見る彼女の表情はとても穏やかだ。
「ま、うちとしては戦争を回避したことで王への忠誠を内外に示せた。おまけに領土を広めたことでこちらの価値を印象付けれるのですから万々歳だわ。」
「それより姫さ〜〜ん!俺らの結婚どぉすんのぉ〜〜。順番決まったぁ?婚約の時はアウルに遅れを取ったけどもう俺待ちたくないんだけど?」
「そんなこと私に言われましても……。」
無事婚約は果たしたものの、結局今度は誰から式を済ませるかで親同士の論争となっている。今日も朝から応接室ではその件で三者の父親が牽制しあっている。今のところ有利なのはまっさきに婚約の返事をしたアウルらしいが、それもどうなるか定かではない。
若干げんなりしたパンテーラは差し出された紅茶を受け取りながらため息をつく。
「結局三人の子供を産めばいい話なんですから私にしてみれば全員セプテントの子です順番はどうでもいいんですけどねぇ。だいたい跡継ぎは兄様ですから私の子は女でない限り家督には関係ない地元軍人になるだけでしょうに……。」
あまりに貞操観念への無頓着さに唖然とする三人だが、自分の子供を意識すれば悪い気はしない。
他人事のように『頭が痛いですねぇ』と呟く姿に男たちは笑みが溢れる。
いつか賑やかになる庭を思い浮かべて窓の外の青空を見つめるのであった。
fin
ご覧いただきありがとうございます。
三章にしても二章にしても恋愛要素とモフモフが薄すぎるので、ぜひ機会があれば設定見直してがっつりべた甘にやり直したいなぁと思いつつも、次回第四章突入です。
【募集】
毎回獣人を出しているのですが個人的好みでどうしても強い犬猫科に偏ってしまうので、もしよろしければ獣人にする動物のリクエストを感想からいただければ幸いです。(幻獣は除く)
採用させていただいた動物は第5章で登場させたいと思います。
気が向いた奇特な方はぜひよろしくお願いします。




