領主代行はつかの間の休息に揺れる
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誤字報告ありがとうございます!!毎度毎度本当にすいません。
ところでPCアプデかけたらまさかのキーボードの文字位置変更されてしまいシックハックしてますww
そんな私事ですが本日めでたく誕生日でした(どうでもいい)
これからも頑張ります!
王都を出てからすでに三日目の夜が明けようとしていた。辛くも北の領地に突入はしているが国境まであと一日はほしいところだ。それでも戦評定までは半日しかない。
走り続けの体はもう悲鳴を上げている。指先は固まるようだし。腰も尻も痛い。降りて屈伸したい。柔軟して固まった体を伸ばして揉み解したい。
だが今ここで馬を降りるわけにいかないのだ。馬ではなく己の体に鞭打ってもう少しスピードを上げるべきか身を屈めようとしたとき、隣を走るキャロルが失速しつつあるのに気づく。
チラリと視線をむければ、眉根を寄せて一瞬下唇をかんだキャロルが声を張る。
「姫様!この馬はもうだめです!私は捨てていってください!!」
その間も馬は失速し、すでに馬の体半分下がり始めている。
置いていく?キャロルを?
そんな選択・・・・・・。
「できるわけないだろう!こいっ!キャロル!!」
少しだけ速度を落として右手に力を入れ、左手を手綱からはなしキャロルに向かって振り返るような形でてを伸ばす。
「離れないといったのはお前だ!それともお前の忠義はその程度かっ!!」
ここでキャロルを置いていくのは簡単だ。しかし疲れ果てた馬とそれと変わらぬ姿のメイドをこんなところに置いていけば、いくら自領といえど野党の類はいるのだ。どうかすれば潜り込んだ間諜に捕まることだって容易に想像できる。
「こいっ!!キャロル!!」
こんな所に置いていきたくない。
切望する思いで叫べば、泣きそうな顔のキャロルは手綱から手を放し、真っ白な兎が飛び込んでくる。それをマントできっちり巻いていく首元を緩めて懐に入れる。
冷たい塊に目が覚める思いがする。同時に手を取ってもらえたことに対する喜びが胸に広がる。
「申し訳ございません。」
腹のあたりからくぐもった声が耳をかすめる。
「着いたらいっぱい働いてもらうから。今はしっかり休んでて。」
かじかむ手でマント越しにそっと撫でる。
「あと次置いていけって言ったら一族ごと潰してやる。」
拗ねた子供の様につぶやくと。腹に温かな呼吸がかかり、消え入りそうな声が「ずっとお傍に……。」とだけ聞こえると穏やかな寝息が風に消えていく。
「羨ましい。私だって姫様の懐に入りたい。」
つぶやかれた声に隣を見れば拗ねたような視線にぶつかる。
「ルナールなら首にいてくれるとありがたいですね。」
「それじゃ毛皮のマフラーじゃないですか。」
「まぁ、でもあと一年もすれば同衾することになるんですからそれまでは我慢してくださいね。未来の旦那様?」
「――んあ!?」
まさかの言葉にルナールは瞠目する。
動揺を隠すこともできずに染まる頬に言葉が出てこず口元を手で覆う。
「ど、同衾って……。」
「当然ですが私は初めてです。三人の誰が最初になるかはわかりませんが……。もしルナールなら優しくしてくださいね?」
「な、ん――あぁぁ!!」
急に速度を上げて走り出すルナールを眺めながらくつくつと喉を鳴らし、パンテーラも速度を上げる。
途中、領主邸前の道で馬を乗り換えてさらに速度を上げる。
真昼を超えたころ国境の砦にたどり着く。なんとか馬を止めて降りようとするが膝が震えてそういうわけにいかない。なんとか腕の力で降りようとするがうまくいかず、誤魔化すように懐のキャロルを先に下ろし、湯浴みと戦評定に必要な準備を頼めば、すぐそばにマルテルがやってくる。
「姫さんお疲れ。大分つらかっただろう。」
言うが早いか、両脇に手を入れられ馬から降ろされる。
「はぁ、姫さん軽すぎ。俺心配になるよ。」
一度地に足がついたかと思うとまたすぐに抱えられて横抱きにされる。
「ま、マルテル!?」
慣れない格好に動揺していると、頭に頬ずりされる。
「大丈夫見られにくい道選ぶから。戦評定まで一時間を切った。今は少しでも休んで。このまま浴場まで運ぶから。」
耳に落とされる囁きに安堵すると、忘れていたはずの睡魔が襲ってくる。温かな温度にうとうととすれば長いようで短いその距離はあっという間に終わり、脱衣所のベンチに座らされてここが砦内にある騎士団宿舎棟の大浴場だとわかる。
「しっかり温まってね。」
優し気に目を細めると額にキスを落として出ていってしまう。すると傍に控えていたキャロルが足早にやってきて衣服を脱がされる。差し出される手に支えられながら浴室に入ると、磨きはそこそこにふくらはぎを揉まれる。
「いっつぅぅぅ!!」
叫びたくなる衝動をこらえて奥歯をかみしめる。なんとか湯船につかると全身の力が抜ける。
「申し訳ございませんでした。」
後ろからの声に自然と笑みがこぼれる。
「いや。キャロルだって疲れているのにすまない。いつも感謝している。」
「姫様。」
「あともう少しあなたの力を貸してちょうだい。その後は休んでいて。」
「お任せください。」
最低限の湯浴みをすませ、浴室を出ると手早く髪を編みあげられ、柔らかな化粧が施される。着せられた青のドレスはそこが戦場であるということを忘れてしまいそうな格好だ。
「準備整いましてございます。」
「ありがとう。」
もはやここは王城かというような仕草で浴場から出るとそこにはアウルとマルテルが待ち構えていた。
「アウル状況は?」
「すべてご指示通りに。一切抜かりはありません。失礼します。」
声と共にさっと横抱きにされてパンテーラは目を瞬かせる。
「相手もそろそろ焦れてくるころでしょう。ところで、甘やかしすぎじゃありませんか?」
「会議室までですから。それに婚約者でありまして番ともなれば甘やかしたいのはオスの性です。可能なら少しでも休んでください。それからこれを。」
本当にここは戦場か?と思うような甘々の会話は周囲の視線など憚らない。
渡された三本のリボンにパンテーラの顔はゆがむもののすぐにそれは冷静な仮面に覆われる。外では兵士たちが今にもならされる開戦の合図に緊張しているのではないかとも思いつつ、耳を澄ますように目を閉じる。
ご覧いただきありがとうございます。
お祝い気分で浮かれマンボウなので
今夜中にもう一本行きたい!!




