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獣人さまと一緒  作者: 牧野りせ
三獣師と一緒
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領主代行は宣誓する

お越しいただきありがとうございます。


本日中二回更新まにあったぁぁぁ!

いよいよクライマックス突入!楽しんでいただけると幸いです。

 城門からも見える王城の入口でその式典は行われていた。50段ほどある白亜の階段に真っ赤な絨毯がしかれその一番上で40年に一度の式典は行われていた。


 広く庶民であろうと王侯貴族であろうともその歴史的瞬間が見られるようにとの配慮である。王城そばを見渡せる高い建物はこぞって画家たちが押し寄せ、新聞各社の記者も押し寄せている。


 現王の退位とこれまでの感謝をのべたスピーチには誰もが涙した。


 その後現王の前に次王が跪いてその頭に王冠が乗せられた。金の台座に宝石がちりばめられたそれは太陽の光を浴びて神々しいまでの輝きを放っていた。それから現王が腰の剣を鞘ごと外し片手で横に差し出すと次王が恭しく受け取る。


 すると立ち上がった次王は現王妃の頭からティアラを外した。腰を落とした愛しき番の頭にそれを乗せると現王、王妃が横にずれて場を明け渡す。次王が手を差し伸べて立たせると引き寄せて己の横に促し民衆を向いて並ぶ。


 「ここに王位継承は成された!新しき王には広く善く国民を導くものであってもらいたい!」


 高らかなファンファーレと共に青天を引き立てるように無数の白い鳩が飛び立つ。


 前王と王妃が退席をすると王の足元に黒の正装に身を包んだレオパルトと、黒に濃紺の総刺繍がなされたドレスに身を包んだパンテーラが跪いた。


 「新王即位心よりお祝い申し上げます!北の領地セプテント家の子息レオパルトおよび、息女パンテーラ本日よりレオニード・ライアン国王陛下に終生変わらぬ忠誠をお誓い申し上げます。」


 「軍神の加護とは僥倖である。これよりセプテントの領地はそなたら兄妹で行うがよい。」


 王の言葉と共に側近たちが兄妹の左胸に一つの勲章をつける。


 「40諸侯よ!ここへ。」


 王の言葉と共に各地を治める領主が歩み出て首を垂れる。


 式典の予定ではここで新王が治世の展望と民衆への誓いを高らかに宣誓するはずであった。しかし、いつまでたってもその声は発することなく一人の男を見つめていた。階段脇に集まっている貴族が訝し気に周囲の気配を浮かべ、民衆からざわめきが起こり始めた時、呻るような声と殺気がもたらされる。


 「ルクシア領はいつから領主を挿げ替えた?われの思い違いでなければ領主はデレクトリ・ルクシアであったはず、なんの許しあってここに侍っているバーモント・ルクシア。」


 急に名を呼ばれた男はびくりと肩を震わし身を縮め一層頭を下げた。


 ルクシアといえば領地を賜って100年がたつ名門だ。王に忠誠を誓い大きな野心を抱くこともなく領民にもあいされており、西にこの人ありとうたわれるほどだった。


 そう。前代までは。


 近年では羽振りのいい領主親子は随分と散財しているようで、社交シーズンに入った今でも王都に出てきた息子は次から次に恋人を作ってはせっせと宝石やドレスを貢いでいるとすでに噂になっていた。が、当の本人はそれが原因で目をつけられたなど微塵も思っていなかった。


 「申し開きがあれば聞こうではないか。発言を許す。頭を上げよ。」


 王に上げよと言われては上げぬわけにもいかず、歳若なその男は表を上げる者の青ざめた顔とわなわなと震える唇からは言葉が出ない。


 「申してみよ。父はどうした。」


 「そ、それは・・・・・・。」


 なんとか声を出そうにも喉は震えず、はくはくと口が動くばかり。まだ20代の男は思わぬ出来事に紡ぐ言葉を見つけられない。


 そもそも新王が自分を知っているとも思えなかった。40人もの領主が並んで首を垂れるだけだ。たとえ若くとも父とよく似た背格好をしているのだからわかるはずがないとたかをくくっていた。


 実際父親もそういっていた。だからお前は王都へ向かえと。


 「ち、父は……。」


 それ以上が言えずに黙っていると頭上からの嘲りを含んだ声に心臓が跳ねる。


 「近頃は随分とルクシアは羽振りがいいとか。税収に加えて……。なんでも新たな貨幣が通っているようだな。一部は王都にまで流れているようだが?」


 懐から出された金貨にバーモントは息を止めた。新王の言葉に諸侯たちの頭が上がる。


 「影から報告が上がっているぞ?領主邸は地下工房にこれと同じもので埋め尽くされていたと。近頃は武具の製造にも熱心だとか。消えたそれらはどこに流した?」


 言葉と共に投げられた袋からチャラチャラと軽い音が響いて散らばる。散らばった金貨の行方を探るように男の視線は下られた。


 国の造幣は経済にかかわる。よってその工房は王城にて決められた人材と数のみで行われておりその工程は秘匿とされている。その年に発行される数は前年の経済をもとに議会で定められ、国王が発布する。よってその権限は王のみにある。


 贋金の造幣は王への反逆に等しいものとされ、その罪が暴かれれば極刑は免れない。


 「ルクシアは我の治世では不服と見える。ああ、流れた先は言わずともわかっている。もう音に聞こえているからな。」


 もはや動くことも叶わずガタガタ震えだす男に一瞥をくれることなく、表情の消えた顔面からは冷徹な声が落とされる。


 「牢につながれていろ。あとから来る父親と共に沙汰を待つがいい。」


 騎士たちに連れられた男を見るでもなく新王は高らかに宣言する。


 「たとえ名門貴族であろうと市井の民であろうと捌きは等しく下される。正しく生きる者が豊かに過ごせる国を作ろう。諸侯貴族は心せよ!」


 覇気と共に放たれた声に階段の者たちは首を垂れ、階下の者たちは歓声を上げた。


 それらを切り裂くように割って入る声が響く。


 「申し上げます!!北の国境付近の平原にて敵兵が展開!その数200万!!」


 もたらされた声に民衆がどよめく。


 北の領地では昔から小競り合いがあった。しかしそれも数年前の停戦協定からなかったしそのときのへいだってせいぜい1万程度だっただろう。これまでとの数の違いに相手が本気で中央、この王都を目指していることがうかがえる。


 だからこその民衆の動揺も大きい。


 「重ねて申し上げます!戦評定は3日後!……敵軍の中にデレクトリ・ルクシアの姿あり!」


 「セプテント。」


 静かに発せられた声に凪が広がる。誰もがその様をかたずをのんで見守る。


 『はっ。』


 「初勅を持って命じる。この戦見事収めてみせよ。」


 『御意。』


 姉弟が立ち上がるとパンテーラのそばに三つの影がそばによる。影の一つからスカートの形に添って網のように組まれた鎖を腰に巻き、眉間と耳の位置にシトリンが飾られた銀の額当てを装着する。


 「パンテーラよ。軍神たる力、存分に振るえ。」


 「賜りました。」


 ばさりと翻したマントを身に纏い、大地に手をかざせば金色の剣が顕現する。王の声に民衆を眺め不敵に笑みを浮かべる。


 「パンテーラ・セプテントの名において宣誓する!此度の戦、無血での勝利を捧ぐ!!」


 力強いその声に民衆は歓声を上げる。くるりと王へと身を戻し、立礼をする。


 「これをもって我がセプテントより新王陛下への献上品とさせていただきます。」


 前代未聞の宣言に貴族たちが息をのむ。当の新王はニヤリと笑みを浮かべる。


 「今一度知らしめるがいい。そなたの名を。」


 「はっ!……アウル、マルテル先に行け!」


 声と共に両の手を傍の陰に伸ばす。するとすぐさま貂に獣化したマルテルが跳躍と共にその身を預ける。飛び乗った勢いをいかしてぐっと屈んで思い切り空に放つと、真っ白な梟がしっかりと足でつかんで一直線に北の空へと消える。


 「ルナールは我に続け!」


 諸侯が身をよけ人波が割れるように開かれた赤絨毯を駆け下りれば一番下で白と黒の馬が三頭用意されている。その傍には見慣れたメイドの姿。


 先頭にいる黒い馬にひらりと跨れば民衆から黄色い声が上がる。応えるように口元に笑みを浮かべる。


 「開門せよ!ケガしたくなければ道を開けよ!」


 ぐっと引かれた手綱に馬が後ろ脚で立ち上がり、前脚がつくと同時に地を駆ける。


 奏上の間に開かれていたであろう道の端に市民や路肩に寄せられて馬車を視界の端に入れつつも、風のように疾走する三頭の馬は瞬く間に王都を抜け北への道を走り始めた。


 北の領地まで止まらず駆けてうまくいって3日、国境ともなれば4日はかかる。逸る思いを抑え愛馬の首をそっと撫でる。


 「頼んだよ。相棒。」




ご覧いただきありがとうございます。


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