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獣人さまと一緒  作者: 牧野りせ
三獣師と一緒
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そして梟は獣化する

お越しいただきありがとうございます。


誤字報告ありがとうございます。

これからも頑張ります!

 アウルが買い物から戻ると、屋敷の庭にパンテーラが立っていた。手には細身の剣を持って、まるで剣舞さながらのように回して突いて薙いで振り払って切り上げて。その間にも足はつま先、かかとを両足で使い分けて踏むたびに地面が隆起してはキラキラと光ってまた伏していく。


 はじけ飛んだ輝きはパンテーラを引き立てた。彼女は大地、中でも石の精霊に好かれる素養を持っていたため魔法を使えば地脈より鉱脈が反応する。そのせいで魔法が輝きを持つ。


 馬車から降りてじっとそれを見つめている。ただただ美しい番から目が離せなかった。


 いつもの視線を感じたパンテーラは動きを止めることなく回転に合わせて視線の先に微笑む。不意に向けられた笑みにアウルは頬を染めている自分を自覚する。


 「っ!――反則ですよ。」


 片手で口元を隠してつぶやいた。どうやら彼女には聞こえていないらしい。しばらく見つめていると、ひとしきり気が済んだのか、パンテーラは動きを止める。


 握られた剣が地に溶けていく。


 「帰りましたか、アウル。珍しいですね一人で出かけるなんて。」


 「ただいま戻りました。とても大切なものでしたので直接出向いてみました。姫様も王城よりの帰還おかえりなさいませ。」


 「ええ。戻りました。」


 王城に行った時とは違う簡素な服で立ち回っているあたり帰宅してから暇を持て余したのだろうか?とも思うがどうもそうではないような。などとアウルは思っていた。


 「王城の用事は何だったのですか?」


 「ああ。それですか。なんでも新設の部隊があるので訓練を見てほしいとのことでした。あまりの不完全燃焼でかえって体を動かしたくなりました。」


 「それで急遽訓練ですか?」


 「ええ。基礎トレや素振りで大分すっきりしました。」


 「左様でしたか。」


 自然と歩み寄りながアウルはポケットから白いハンカチを取り出すと割と汗をかいたパンテーラの額をそっと拭いた。


 それはまるでガラスの置物を拭うような繊細で優しい手つきだ。


 その手でそっと頬に触れて上を向かせると露わになった額へをっと唇を落とす。


 「アウル?」


 それをパンテーラは嫌がることも避けることもせずにじっと受け入れている。それが嬉しいアウルは頬にあてた手をそのまま下に滑らせて首筋をなぞる。


 「ん……?」


 ぞくりと走る感覚に抵抗せずにいると追いかけるように小指の爪が優しく、でも確かにつつつつーとなぞり自然と顔に熱が集まる。そのまま肩をなぞり下がっていくと痺れた感覚が甘く駆け抜ける。


 そうしていると手の中に何かが握らされた


 「?」


 齎されたそれをパンテーラはじっと見つめた。


 「アウル?これは……。」


 手の中に納まるそれは赤いリボンがかけられている。


 「どうぞ開けてみてください。」


 しゅるりと絹の掠れる音と共に解かれた赤いリボンを丁寧に折り片手に持つと箱を開けてみる。


 「ふくろうの……指輪?」


 箱からするりと指輪を外すと、優雅な動きでアウルは片膝をつきパンテーラの左手を取るとすっと薬指にその指輪を嵌めると指輪に口づける。


 その手を離さないまま、じっと熱の籠った瞳で愛しいその人を見上げる。


 「姫……パンテーラ。私の愛しい宿り木。どんなに遠く離れていようと私は必ず貴方のもとに帰ってきます。どこに行こうと私の羽根はあなたのそば以外で休まることはありません。どうかこの哀れで焦がれる鳥が朽ちるまでお傍に侍ることを許してください。」


 「アウル?」


 「パンテーラ愛しています。どうか私の番としてそばにいてください。」


 逸らされない強い視線のままアウルはパンテーラの甲にキスをした。見せつけるようにたてられたリップ音が羞恥心を煽る。


 「っ!」


 言葉にできず頬を染めれば腕の中に閉じ込められてしまう。


 「ああ、愛しい人。可愛いパンテーラ。お願いだからその無防備な顔を他の人には見せないで。―――できればあの二人にも見せてほしくないけど……。無理なんだろうなぁ。」


 最後は情けない声をつぶやいて頭に唇を落とす。


 「アウル。私は民のためならばどこにでも行く。一所にいる様な令嬢でもない。だからあなたが私を見つけて追いかけてきてね。」


 「ああ。この翼がちぎれようときっと見つけるよ愛しい人。」


 茜に染まる空に長くなった影が一つに重な……。


 ボンっ!!


 「アウル?なんで今獣化なんです?」


 「っ!すいません。いろいろ耐えられなくなりました。もっと鍛錬します。」


 地面で動かぬ白梟をパンテーラはそっと抱き上げて背を撫でる。柔らかくつるりとした肌触りにずっと撫でていたいと思いながらじっとその様子を観察する。


 「羽を抜かれたらきっと痛かったよね。」


 「?」


 「いつもそばにいてくれてありがとう。これからも一緒にいてね。」


 微笑んでつぶやくと嘴にそっと唇を寄せる。


 「私も大好きだよ。」


 ささやかれた声に梟は己の翼に顔を埋めるのであった。

ご覧いただきありがとうございます。


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これからもよろしくお願いします。

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