梟は思いを馳せる
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宝飾店の個室に通されてアウルはしばし困惑していた。
本来ならば店先のガラスケースに張り付いてデザインやらいろいろ吟味したかったのだが、家令の男が『セプテント家所縁の方です』と店主と思しき中年に声をかけたもんだからそそくさと案内された。
まさか個室に通されると思っていなかったので正直どうしていいのかわからず、とりあえず出された紅茶を素知らぬ風を装ってみる。
「それで、本日はどのようなものをお探しで?」
身ぎれいで髭を整えた男に、さすがは王都の店だと感じつつも、アウルは淀みなく返答する。
「白金の梟がデザインされたものを。そうだな。できれば琥珀かシトリンのついたものならなおさらいいが。あるだろうか。」
男は頭を下げると『少々お待ちください』と声をかけて下がっていった。
男がいなくなると、部屋の中をおもむろに見回す。質の良い応接セットの向こうには机が一つ置かれており、そこには綺麗に行けられた花瓶がほんのりと室内に良い香りを纏わせている。壁には南国の海辺が描かれた風景画が飾られており、北とは無縁の風景にしばし魅入っていれば、男がいくつかの箱を持って戻ってきた。
ロ―テーブルに黒いベルベットでできた広く浅いトレーを置くと、指輪の一つ一つを箱から取り出し、トレーへと並べていく。
その様子を見ながらアウルは息を一つ吐いた。
「どれも厳めしいな。」
はっきり言ってごつい。
太めのリングに梟の顔が象られていているものが圧倒的に多く、その目に石がはめられている。まるで目をぎらつかせる様なそれは猛禽類特有の厳めしさを表しているのだろう。
だが、アウルはこんな厳つい指輪を探しているわけではない。これでは自分の欲を押し付けているようにも感じるし、その存在感の大きさは何より監視しているみたいで本意じゃない。マルテルに『ぎらつかせ過ぎ』と言われるのは目に見える。
次に目についたのはリング自体は細いのにアンバランスに梟の飾りがつけられたもので、第二関節までとどくその大きさは鳥の細かさは引き立っているが、アンバランスさを感じた。間違いなくルナールに『不細工』と言われそうだ。
こんなバランスは美しくない。と素直に思う。
三つ目に見つけたのは細いリングに刻まれた蔦と小さな梟。サイズは申し分ないがあまりにもそれは小さいため彫繊細さが欠けるし、石も当然小さい。こんな不出来なものを渡せば身に着ける彼女の品格を疑われる。
それから目についたのは二本の細いリングの間に四葉がいくつか彫り込まれた隙間からそっと姿を現すぽってりとした梟。丸みのあるフォルムは愛くるしいとも思うがこれが求婚の返しにしては何とも締まりがない気がする。デザイン自体は良いがそのせいでやはり幅を取ってしまい、剣を握るパンテーラの負担になってしまうであろうことは容易に想像ができた。
最後に出てきたのは広げた翼が指に絡むようにデザインされた指輪だ。本体はそう大きくなく、試しに小指に嵌めて、立てた手を覗き込むと傾げた顔がこちらを窺っているような愛嬌のある顔だった。造形は悪くない。
嵌められた二つのシトリンはけして大降りではないが、小さくもないので仕草に加えてその愛嬌を引き立てているようで、それまでの指輪と違い純度も高いのかギラギラした感じではなく、澄んだ美しい色をしている。
光にあてたり陰で動かしてみたりとしばし観察し、アウルは店主にうなずく。
「これにしよう。」
「畏まりました。お箱はこちらになります。包みはいかがいたしましょう?」
しばし悩んだあと赤いリボンだけかけてもらい、懐から折り畳みの財布を出す。それを見た店主はしばし珍しいそれに魅入っているようだった。
財布を広げるとレールのようなものが五本取り付けられており、レールの間に銅貨、銀貨、金貨、白金貨が綺麗に並んでいる。通常巾着に大雑把にまとめて入れるか、几帳面な者でも小さな巾着型の袋に種類別に入れるのがせいぜいだし、そもそも名の通った貴族たちなら財布など持ち歩かず店側が集金に行く。
「お客様、失礼ですがとても珍しいものをお持ちですね。」
「ああ、これは私の仕える主が数年前にくださったものだ。たくさんは入らないが納まりがいいので持ち運びもよく管理もしやすくてね。中身をみられるというのは少々居た堪れなくもあるが主からの贈り物だと思うと手放せずにいてね。」
「いやいやどうして、その財布はとても美しいと感じ入ってしましました。」
余程気になったのか会計をしつつもその視線は財布から離れない。
「ああ、これは王都からの土産でもらったんだが、聞けば山奥にとても良い名工と知り合ったとかでその方に特別に作ってもらったとかおっしゃられていた。なんでも精霊の加護がついてるとか本当かどうかはわからないがおかげでこの財布にしてから掏られることもなくなったし、落としても中身を失うことなく戻ってくるんだよ。」
「ほう!それは商人にとってぴったりな代物ですな。その名工ぜひとも探して訊ねてみましょう。」
釣銭を財布に収め、箱を受け取り懐に入れると席を立つ。
商人の性なのか物珍しい品の情報に満足したのだろう店主は恭しく頭を下げると出口まで案内してくれた。
帰りの馬車に揺られながらふと先ほどの財布を上着の上から押さえていると向かい側からくすりと笑みがこぼれた。ふと視線を向けると家令の穏やかな表情があった。
「そちらの財布はパンテーラ様からの贈り物でございますね。」
「ええ。先ほども申しましたが使いやすく美しいのでとても気に入っているんです。」
「懐かしゅうございます。それはお嬢様が街で絡まれた女性を助けた折に、その方がお礼に作ってくださったものだとか。なんでもすぐに財布を無くす幼馴染に絶対に無くさない財布を贈りたいと伝えられたそうです。」
「それ・・・は…。」
何年前だったか。隣国との小競り合いで領地に難民が入ってきた。戦で親を亡くしたもの、身元が定かでなく仕事にありつけなかったものが町にいた。
それはただの自己満足でただの偽善だ。
目の前にいる者だけ救ったところで何の足しにもならない。そんなの分かってる。でもそれでも何もしないでいられなかった。
無差別に誰でも助けたわけじゃない。
本当に困っているものや弱いものに少ない給料を渡していた。
もともと実家にいるわけだし、物欲もなかったから使用用途なんてなかった。後悔もしていない。
毎回変わる小袋に不信を感じたのであろう。
『どうして毎回財布を変えるの?』
と聞かれてとっさに出たのは「失くしてしまった」だけだった。
毎回そういってれば誰だって気づく。それなのに姫さんはただ穏やかに笑うだけだった。
「しかし、いくら名工といえ加護を選べるものなど精霊姫ぐらいのもの。そこでパンテーラさまは自身が操る地の魔法を好む精霊に力を借りました。なんでも財産を守る加護がかけられているそうです。」
「この財布に?」
「はい。曰く、施すばかりで己を顧みらない者はいつか身を亡ぼすと。そんな優しいものが傷つかぬ領地を作るとおっしゃっていました。」
家令の穏やかな声に目を見開く。
そんな話アウルは知らない。
思えば軍人ばかり相手にしていたパンテーラが戦略指南書や地形図ばかりでなく図鑑や歴史書を読むようになったのもそのころだったように思う。
ずっと領民を想っているのだと思っていた。いや、その想いにウソはないのであろう。しかし、その向こうにまだ見ていた景色がることに言葉を失うには十分だった。
「あの方は…本当に……。」
「思われていらっしゃいますね。」
うらやましい。とこぼす家令はどこまでも穏やかだ。
「身に余る栄誉です。」
そう答えながら窓の外を眺める。流れる景色なんか思っちゃいない。ただただ思うのはあの人の笑顔だけ。不敵でいつも自信に満ちていて。それなのに誰一人見下ろしたり下げたりしない。たった一人の君主にして唯一の人。
(早くあなたに会いたい。)
ご覧いただきありがとうございます。
頭の中で姫さんがバッタバッタと走り回る向こうで次の主人公がちょろちょろし始めてる。
まて。待つんだお前。お前の出番はまだまだ先なんだ!頼むからおとなしく待ってってくれ!!
私の頭がパニックだよっ!
というわけでまだまだ姫様暴れますww
次回まではアウル君のターン(たぶん)




