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守護山娘シリーズ  作者: 白上 しろ
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金剛は駆ける⑧

風が吹き付けてきました。それは段々強くなりました。段々、段々と。そしてついにすさまじい突風となり、金剛山に吹き付けます。姫乃は叫びました。

「何!この風!」

金剛は姫乃を庇うように、その前に立ちました。

「この異常な風は……」

金剛達の目の前に、宙に浮く女性が現れました。彼女は人間と同じ姿でありながら異様な気を放っているのが、初めて見る姫乃にも分かりました。金剛の目つきが変わり叫びました。

「ヤッカイ!」

『ヤッカイ』と呼ばれた者は、不敵な笑みを浮かべながら自らも名乗りました。

「そう。私は風のヤッカイ」

ヤッカイの透き通るような青い髪、目、そして爪。全体から見ても、不気味さの中にどこか美しさすらありました。姫乃は息を呑んで言います。

「なんて綺麗な・・・・・・」

ヤッカイは僅かに表情を変え微笑みます。

「まぁ、なんて素直な娘」

姫乃の結びの言葉。

「・・・・・・おばさん」

ピシッと眉間に筋が走ったヤッカイは早速宣戦布告をしました。

「この山のすべてを吹き飛ばしてあげるわ!」


竜泉寺にて。

「ついに現れましたね、ヤッカイ。金剛ちゃん、ちゃちゃっと、やっつけちゃってください!」

軽いノリの観音の言葉に、稲村は頷きました。

「金剛とは、どの程度の者か。楽しみだ」

楽観的な二人とは対照的で、子角仙人の眉をひそめた顔には笑顔がありませんでした。


 金剛山にすさまじい風が吹きつけ、人々は慌てて下山や避難を始めました。

「姫乃様も逃げてください!」

「金剛はどうするの?」

「私はヤッカイを倒します。大丈夫です。それが私の役目ですから」

真っ直ぐな金剛の目を見た姫乃は金剛の言葉を信じました。

「分かったわ」

しかし姫乃は逃げようとしましたが、杉の木が突風で倒れ下山出来ません。姫乃は近くの建物に避難しました。

「分かるかしら、金剛。私達ヤッカイの力がこれまでと違う事が」

「どんな力を持とうが、関係ありません!人間様の生活を脅かすのなら、あなたを倒すまでです!」

「あら、そう。真っ直ぐで真面目な子。全然、かわいくない」

ヤッカイが不敵な笑みを浮かべると、空を覆うヤッカイの分子とも言える無数の黒い物質が風を起こし、金剛山全体を攻撃しました。金剛山も巨大杉を含む多数の杉からレーザー光線のような光を発し、ヤッカイの分子を攻撃します。ヤッカイと金剛山との間では、壮絶な戦闘が繰り広げられているのです。ヤッカイからすれば、山全体が武器で覆われた巨大な要塞と言っても過言ではありません。その親分とも言える金剛とヤッカイも戦闘を開始しました。

「喰らいなさい!」

ヤッカイから繰り出される突風に正面から金剛は立ち向かいます。二人の力は今の所互角と言った所です。

「『さすが金剛』と言っておこうかしら。でも正面から向かって来るなんて」

口元の笑うヤッカイが突風を起こすと、風に浮かんだ巨大な岩が金剛を襲います。金剛は避けようとしましたが、足が動きません。いつの間にか風の渦の様な風が、金剛の両足にまとわりついて、動きを封じていたのです。巨大な岩は一つだけではなく、次から次へと金剛に向かって飛んで行きました。

「金剛!」

思わず建物の中から窓に張り付いた姫乃は叫びました。巨大な岩は無情にも金剛を直撃します。姫乃は言葉を失いました。

「さすがに無事じゃないわね」

ヤッカイは確信したように言いました。しかし、土煙の中に人型の光が見えます。

「ん?」

ヤッカイは目を懲らします土煙が薄れて消えると、七色の光に輝く金剛の姿が現れました。


竜泉寺の稲村は尋ねました。

「何だ、あれは?」

子角仙人は答えました。

「金剛は一時的ではあるが、全身をダイヤモンドの強度にまで高める事が出来る」

まばゆい金剛を見て、観音の目もキラキラしていました。

「金剛ちゃん、綺麗です! 輝いています!」


 ヤッカイは悔しそうでしたが、金剛は姿が元に戻ると、力を使った為に息を切らしていました。

「なるほどね。その力、長くは続かないようね」

再びヤッカイは執拗に風を起こし、金剛を襲います。金剛は両手で塞ぎますが、少しずつ体が押されていきます。姫乃が叫びます。

「金剛!」

金剛は正面から突風を受け、横からは変化する風で飛来する岩や木を体に受けていました。金剛は防戦一方となっていました。苦しそうにしながらもグッと堪えている金剛を見て、姫乃は何とかしてあげられないのかと、歯がゆい思いでした。耐え続ける金剛の姿を見守る姫乃は、ずっと心の奥に引っかかっていた金剛の言葉をふと思い出しました。


― どれだけかかっても構いません。何日でも、何年でも、何十年でも、何百年でも。例え何千年かかっても。私は待っています ―


「(あの言葉…… あんな馬鹿げた言葉、とっさに出て来る訳がない。金剛は本当に思っているんだ。心のどこかで正成が帰ってくるのを。今もずっと待っているのよ。でも、もうとっくに正成は……)」

姫乃は心の中で金剛に問いかけました。

「(本当は知っているんでしょ? 分かっているんでしょ? ねぇ、金剛・・・・・・)」

姫乃はとっさに外に飛び出ようとして、閉まっているガラス扉に顔面をガンッ! とぶつけました。しかしすぐに扉を開けて、吹きつける強風に飛び込みました。体を柵に乗り上げて叫びます。

「金剛! あなたには正成様が付いているのよ! 風の正成様が! 正成様に比べたら、そんな風使いどうって事ないでしょ! 正成様はとっても強いって、あなたが一番良く知っているじゃない!」


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