大和三山は結ぶ⑯
稲村は呆れて剣を背負い直しました。
「お前達と関わっているとすべて茶番に思えてくる。このような事に稲村剣を使うなど馬鹿馬鹿しい。自分自身で己の行動を反省するのだな」
諦めた様子の稲村に、畝傍と香久はホッとしました。そこに
「私じゃないもん・・・・・・」
ぽつりと耳成のつぶやく声が聞こえました。畝傍と香久は耳を疑いました。そしてまた、今度は明らかに聞こえるように耳成は言いました。
「悪いのは私じゃないもん! 団五郎が意地悪するから! 悪いのは団五郎だもん!」
畝傍が耳成の言葉を止めようとするよりも早く、香久が稲村の剣を奪うと、そのまま天高く振りかざしました。
「香久ちゃ・・・・・・」
今度は香久を止めようとする畝傍でしたが、言葉が詰まりました。香久はそれほど本気で怒っていました。
「もう一度言ってみなさい! 耳成!」
「香久ちゃんに怒られる筋合いなんてないもん!」
「私も本当はすごく怒っているんだから! でも、まさかそこまで馬鹿とは思わなかった! 耳成は簡単に人間様とお話出来るのに! 毎日人間様の側にいられるのに! 耳成は一体、人間様の何を見てきたのよ!」
「じゃ、香久ちゃんは人間様の事が分かるの? まともに会話もしないで、分かる訳ないもん!」
剣を振りかざしていた香久の手に力がこもります。香久は怒りでワナワナと震えながらいいました。
「ドッ! ドングリみたいな頭して!」
耳成はビックリした後、怒っていいました。
「ドングリじゃないもん! ドングリ、関係ないもん!」
後ろから来た稲村に、香久はあっさりと剣を奪われました。
「言ったはずだ。この剣はこんなくだらない茶番に使うものではない」
すぐに耳成は香久に『べー !』と舌を出して、走り去って行きます。しかし、たくさん地面に落ちているドングリで耳成は滑って転んでいました。稲村が言いました。
「ドングリが転がっているのか」
畝傍は不安そうに思いました。
「(稲村様は地面に落ちているドングリの事を言ったのですよね? 耳成ちゃんの事を言ったのではないですよね?)」
呆れている稲村と不安そうな畝傍。そして、その後ろのうつむき加減の香久の目には、うっすらと悔し涙が浮かんでいました。




