大和三山は結ぶ⑨
数百年前。
もともと香久は非常に恥ずかしがり屋で、人間様がいても木陰でそっと見守る事が多くありました。この日もまたそうでした。そこに、
「あれ? 香久ちゃん、また隠れているの?」
いつの間にか来ていた耳成が、小馬鹿にするように香久に声を掛けました。香久の態度が一転して、偉そうになりました。
「は? 何を言ってるの? 私は今日、洗濯が干せる天気かどうか、空を見て考えていただけよ」
空を見上げた耳成が尋ねます。
「考えて…… た?」
考えるまでもなく空は快晴でした。香久は腰に手を当てながらいいました。(耳成と話す時、香久はこのポーズを取る事がよくありました。)
「それより、耳成こそ何しているのよ? また人間様に相手にされなくてここに来たわけ?」
耳成が余裕な顔を作って言い返します。
「そんな訳ないもん。人間様と私はいつも一緒だもん。誰かさんと違って。一緒にいると楽しいのになぁ~」
香久の額にピシッと怒りのシワが出来ます。
「何が『楽しいのになぁ~』よ! 実際、人間様をちゃんと守れていないくせに! 守護山娘としてどうかと思うけれど!」
耳成も怒って言い返します。
「私だってがんばってるもん!」
喧嘩する二人の間に割って入る者がいました。
「まぁまぁ、お二人とも落ち着いて。人間様に見られたら恥ずかしいですよ」
どこかおっとりとした声の主は畝傍でした。いつも喧嘩ばかりする耳成と香久の間に入るのが、畝傍の役目でした。耳成と香久が犬猿の仲であるのに対し、耳成も香具も畝傍の事は大好きでした。ただ、いくら畝傍の言葉であっても、仲直りという訳にもいかず、
「ふん!」
耳成がそっぽを向くと、香久はイラッ! として同じくそっぽを向くのでした。




