大和三山は結ぶ②
天から衣のような神々しい光が射し込む小さな山がありました。山の名は香久山(天香久山)といいます。空、雲、山。辺りはどこも雲の隙間から太陽の光が射し込んでいました。しかし、どこにも守護山娘の姿はみあたりません。視点をずっと下に移して、麓の地面を見ると、そこにこの香久山の守護山娘である香久がいました。耳成と同じくらいの背丈ですが、目尻がパチッとして、見た目は年上のようにも思えます。香久はとても緊張した様子で、体をもじもじさせながら、何かブツブツ話していました。
「あ、あの、人間様。今日も、良い天気ですね?」
太陽は射し込めど、むしろ曇が多く見られる空。香久はぎこちない笑顔を作ってみせました。話しかけている相手は人ではなく、案山子でした。香久の手作りでした。
「洗濯日和、ですね?」
香久はやはりぎこちない笑顔で、上目使いに人に見立てた案山子に尋ねていました。
「うふふ、うふふふ・・・・・・」
堅苦しい愛想笑いは、どこか不気味に聞こえ、心無しか案山子が怖がっているようにも見えます。辺りは、どうにも違和感に満ちた、不安気な空気が辺りを漂っていました。雲の間からは、こんなにも神々しい光が射しているというのに……。
うねうねとした木の枝。うねうねとした草のツル。うねうねとした長い髪。そこに櫛を入れる者がいました。一瞬、髪の毛が真っ直ぐになったかと思えば、また元のうねうねに戻っていきます。小さな山の頂で、ため息をつく眼鏡の女の子。彼女はこの畝傍山の守護山娘、畝傍という者でした。耳成、香久よりも少し背丈の高い、おっとりとした性格で、二人のお姉さん的な存在です。
「うねうね、うねうね・・・・・・」
畝傍は困ったように一人、ブツブツ言いながら、ずっと髪をといていました。




