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守護山娘シリーズ  作者: 白上 しろ
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高取は現る⑮

完全に夜は明けていました。高取が国見櫓から町を見渡すと、声援を送るたくさんの人々の姿がありました。高取へのエールです。実はヤッカイとの戦いの最中ずっと聞こえていた声援でした。ふくれっ面の高取が声援に応えるように、目一杯笑顔で手を振りました。人々の歓声は更に大きくなります。

しかし、高取城に向かって歩き始めた高取の足つきは、今までと違い、弱々しいものでした。高取は俯いたままフラフラと進み、ついには途中で両足を跪きました。すぐ側に散る美しい桜の花びらすら、高取の目には映っていないようでした。目の前には高取城の石垣。正座をしたままずっと俯いている高取。黒く長い前髪に目が隠れて、ふくれたほっぺたしか見えません。ゆっくりと高取は顔を上げました。目尻には普段より大粒の涙が溢れていました。高取は弱々しくいいました。

「人間様、ありがとうございます」

高取は頭を下げると、また僅かに顔を上げました。

「ですが、今は・・・・・・」

高取は震える口元をきゅっと閉じました。そしてまた語り始めました。

「この高取を愚か者だと叱ってくださいませ! お願いです! この高取を、叱ってください!」

悔しい表情の高取の目から涙がこぼれ落ちると、深々と頭を下げました。

「申し訳、御座いません!」

高取はしばらく頭を上げる事はありませんでした。


やがて後ろから山を駆け上がってくる者がいました。明日香でした。明日香は興奮気味に目を輝かせながらも息を整えて、遠くで座り込んでいる高取に大きな声で叫びました。

「おかえりなさい! 高取姫! ずっと待っていました!」

明日香に声によって我に返った高取は、ようやく目の前に美しい桜の花びらが舞っている事に気がつきました。高取は涙を拭い立ち上がると、振り返って明日香に言いました。

「ただいま、戻りました」

高取のふくれっ面の口元が笑っていました。


 それから。

高取山の登山道。

タツミ達、少年三人は石となった(自称)宇宙人 ― 猿石 ― に抱きつきながら泣いていました。側でいる明日香は涙をぐっと堪えて言いました。

「泣いちゃダメだよ! だって宇宙人さん、笑っているんだよ。あんなに笑わなかった宇宙人さんが、笑っているんだよ! だから、褒めてあげなきゃ……」

明日香は涙をこらえて、微笑んで言いました。

「頑張ったね、宇宙人さん」

しかし言うと同時に涙がこぼれ、明日香もまた号泣していました。

その時猿石の目が光りました。

「ワレワレハ イキテイル(私は生きている)」

間違いなく(自称)宇宙人の声。明日香達は信じられない顔をして涙がピタリと止まりました。そして、明日香も猿石に抱きつきついて、また泣きながら言いました。

「生きていたのね! 良かった! 良かった!」


守護山娘の高取は、明日香達の様子を見守ると、再び高取城の石垣の上から四方を眺めるのでした。懐かしい思いで町を見渡します。その顔は、いつものようにほっぺたは少しふくれて、目尻は少し涙目ですが、小さな口元は僅かに微笑んでいました。


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