高取は現る⑭
ヤッカイは周囲を見ると更に驚きました。辺りが白銀の世界へと変わっていたのです。
「いつの間に、こんなに雪が!」
「雪では御座いません」
背後から聞こえた、紛れもない高取の声。ヤッカイは驚いて振り返りました。
「高取のお城でございます」
巨大な幻の白い塔。その光が周囲に映し出されていたのです。その光も消え、周囲は元の高取の山へと戻りました。高取を取り込んだ植物達はすでに消滅していました。ヤッカイの目の前には石垣だけの高取城と、それを背後に立つ、守護山娘の高取がありました。
「馬鹿な! 確実に捉えたはずなのに! くそう、どこかにゆきなさい! 雪だけに! 『雪』繋がりで!」
ヤッカイは全力で大きな注射器を構えて襲いかかりました。高取も特殊な扇子で迎え撃ちます。勝負は一瞬でした。ヤッカイの注射器は高取の扇に粉砕されて消えていきました。ヤッカイ自身もダメージを負っていました。ヤッカイは苦しそうに、皮肉を交えて言いました。
「・・・・・・多くの人間に待ち望まれて復活し、一度敗れた相手に勝利する。これほど気持ちの良い勝利はないのだろうな、おめでとう、高取・・・・・・」
高取の声は思いの外、静かでした。
「どうして・・・・・・」
突然、大きな声で高取はヤッカイに問いました。
「どうして妾を倒してくれなかったのじゃ!」
ヤッカイは驚きました。
「何? 何を言っている!?」
高取の目には悔し涙で、普段以上に目尻に涙が浮かんでいました。
「どうして妾を、こてんぱんに! もっとボロボロに! 叩きのめしてくれなかったのじゃ!」
ヤッカイは戸惑いながらも言いました。
「これは! 高取を泣かせた! 私は目的を一つ遂げたのか? でも違う、何か違う! 何よりおかしい! 『おかしい』と言っても、面白いという意味ではない! うぬぼれるな! 様子が変だという意味よ! と言うか、『もっとボロボロに叩きのめして欲しい』とか、意味が分からない!」
ヤッカイは苦しそうに混乱しながら高取の山を去って行きました。
竜泉寺。
子角仙人はいいました。
「高取は復活したと言っても以前よりも強くなった訳ではない。力は同じじゃ。むしろヤッカイの方が力は増しておる。更に力を付けたヤッカイに、高取は勝った。つまりそれは、以前高取が敗れたのは、ヤッカイの力によるものではなく、自らの心の弱さであった事を、今回の勝利で実証してしまったことになる。それが悔しくて、高取はあのような事を言っておるのじゃ」
稲村と観音は首を縦に振りました。子角仙人は話を続けます。
「決して高取がMだと言う訳ではないぞ」
稲村と観音は、今度は首を横に傾げました。




