高取は現る⑦
竜泉寺。
子角仙人は高取について話していました。
「高取城の崩壊を機に、もしかしたら、高取は心のどこかでと思ったのかも知れん。自分はもう人間様に愛されていない、見放されたのだ、と。もしそうならば、それが真実ならば、それが何を意味するか。お前達には分かるか?」
稲村と観音は真剣に聞いていました。子角仙人は続けました。
「高取はヤッカイに敗れたのではない」
観音がしんみりと言いました。
「でも・・・・・・ それでも高取ちゃん、可哀想です」
観音は泉に歩み寄ると、映し出されている高取山を見ました。
「あの山を高取ちゃんは守っていたのですね。今は、お猿さんが守ってくれている・・・・・・」
子角仙人は静かに深々と頷きました。
「そうじゃ。お猿が守っておる」
悲しい高取の話で辺りはシンと静まりかえっていました。しばらくして稲村が空気に水を挿すようにいいました。
「え? お猿? ・・・・・・宇宙人ですよね?」
高取の町の上空。
雲に紛れてヤッカイと思われる女の姿がありました。ヤッカイは空から液体のような物をポタポタと落としながら進行しています。
宇宙人も基地からヤッカイの気配に気付きました。また、その力の大きさにも気が付きました。
「コレマデノ ヤツトハ チガウ!(これまで戦ってきた者達とは力の大きさが違う!)」
宇宙人はヤッカイを迎え撃つために外へと出ようとします。しかし、手に持った明日香の雛人形に気がつきました。振り返ってガラスケースの中の高取を見ました。
「コレハ オマエダ(これはお前なのだ)」
宇宙人は大きなガラスケースを持ち上げて横に置くと、雛人形を高取の手に添えました。宇宙人はガラスケースを戻すと、更に隠すように大きな段ボールをかぶせました。そして、宇宙人はヤッカイを迎え撃つために、外へ出て行きました。
高取山にすでに異変が起きていました。木がうごめき、土がモコモコと生き物のように動いています。宇宙人は驚きました。
「ナンダ?(何が起きているのだ?)」
空に浮くヤッカイ。彼女はプロテクターの上に白衣をまとい、科学者のような姿でした。理知的な眼鏡越しに宇宙人を見つけます。
「猿?」
ヤッカイは目を細めました。
「ただの猿じゃない・・・・・・」
宇宙人は目から光のレーザーを発し、ヤッカイを威嚇しました。ヤッカイは身をかわすと、宇宙人にヤッカイの分子である、見た事もない生き物達(木の根やイモリ、アリ、ウサギ等に似た巨大な生物達)が襲いかかってきました。
「ナンダ!?(何だ、この生き物たちは!)」
宇宙人は目から光を発してヤッカイの分子達を攻撃すると、消滅した分子達は砂へと変わりました。宇宙人は再び驚きました。
「ツチ!?(土で出来ているのか!?)」
竜泉寺。
子角仙人が言いました。
「戦いが始まったようじゃ。あれは『新種を生み出すヤッカイ』。自然の生態系バランスを破壊してしまうヤッカイじゃ」
子角仙人は驚いてヤッカイを見ました。
「それにしてもヤツは!」
稲村も泉を覗き込みました。宇宙人は変異した生き物のようなヤッカイの分子達と戦っていました。しかし、奇妙な姿の者同士の戦いで、稲村には誰と誰が戦っているのかよく分かりませんでした。
「戦いが始まったようだが、ヤッカイ同士の仲間割れなのか?」
観音が言いました。
「違います! お猿さんが戦っているんです!」
稲村は真剣な目で言いました。
「あの宇宙人が、か!」
観音も両手にグッと力を入れていいました。
「はい! そうです! あのお猿さんが、です!」




