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守護山娘シリーズ  作者: 白上 しろ
32/78

高取は現る⑤

鬼ごっこが終わると、明日香達は石垣の上に座り込んでいました。疲れた様子の明日香達と違い、宇宙人の表情に変化はありません。

「宇宙人、やっぱすげぇな。足がメチャクチャ速ぇ」

ヒカルが言うとナマコも頷きました。

「ほんとです。結局、宇宙人が鬼になったの、最初の一回だけですから。それに比べると・・・・・・」

ナマコは悪戯っぽく明日香を見ました。明日香は鬼ごっこが終わってしばらく経った今でもまだ息を切らしていました。

「仕方ない、でしょ! 私、運動、苦手だもん!」

タツミが突然、真面目な顔で立ち上がると宇宙人の所に歩み寄りました。

「なぁ、宇宙人。その・・・・・・ごめんな」

ヒカルとナマコも立ち上がり、申し訳なさそうに頭を下げました。タツミ達は言いました。

「本当は怖かったんだ。何されるか分からないな、って思って。でもいきなり捕まえようなんて、ずるいよな」

「もう俺たち捕まえようなんてしないから」

「反省してます」

明日香は言いました。

「宇宙人さん、きっとつらかったと思うの。私達と違う姿をしているから、いじめられるかも知れないって思っていたんだと思う。でも、大丈夫! 宇宙人さんをいじめたら、私が怒ってあげるから!」

明日香達は笑顔を作っていいますが、宇宙人の表情は変わらないままです。

「やっぱり怒っているよな、そりゃそうだ」

あっけらかんと言うタツミに、宇宙人はようやく口を開きました。

「ナゼ オコル?(どうして怒っていると思うのだ?)」

明日香達は宇宙人を見ました。明日香は言いました。

「怒ってないの?」

「イナイ(怒ってなどいない)」

再び少年達は嬉しそうに笑いました。ヒカルは言いました。

「だって顔が怒っているみたいだから」

「カオ オコッテナイ(顔も怒っていない)」

明日香は言いました。

「そうだ! 笑ったらいいんだよ」

「ワラウ?(笑う?)」

明日香達が頷くと、みんなわざとらしく、大袈裟に笑った顔を様々に作りました。タツミはいいました。

「宇宙人もやってみなよ」

明日香も無理に笑顔を作ろうと両手で顔を挟んで、変な顔をしながらいいました。

「宇宙人さんも笑ってみて。こんな風に、ほら」

宇宙人は顔に変化を作ろうとしますが、無理でした。変な顔を止めた明日香はいいました。

「ごめん。私が変な事を言ったから。いいの。宇宙人さんは宇宙人さんのままで」

タツミが明日香に悪戯っぽく言いました。

「そうそう。無理に作っても変な顔になるだけだし。明日香みたいに!」

明日香はムッとして言いました。

「わ、私だけじゃないし!」

少年達は笑い、明日香はプンプンと怒っていました。宇宙人に眩しい夕日が射し込んできました。見渡せば高取城の一帯はきれいなオレンジ色に染まっていました。


夜。

宇宙人は秘密基地の暗闇の中でガラスケースの少女をただじっと見つめていました。


 竜泉寺。

夜は松明によって泉などの周囲が照らされていました。

稲村は子角仙人に尋ねました。

「あの宇宙人をどうされるつもりですか?」

「どうと言われても、な・・・・・・」

稲村は尚も問いかけます。

「このまま、あの者を放っておくつもりですか?」

観音が口を挟みました。

「まぁまぁ、稲村様。見慣れてくるとかわいいですよ。あのお猿さん」

「一体、どこがだ!?」

子角仙人はいいました。

「守護山娘の高取に代わって、これまで高取山を守ってきたのは、おそらくあの者であろう。この世界を侵略するには最初に最も力のあるヤッカイを倒さなければならないとでも考えたのじゃろうか?」

稲村は反発しました。

「山を守ってきたのは結果的に過ぎません。あの者が人間様に危害を加えかねないとするなら、見過ごす訳にはいきません!」

子角仙人は『うーむ・・・・・・』と、考えた後、ポツンといいました。

「もしあの宇宙人を倒したら、あの人間様達は悲しむであろうな」

『あの人間様』とは明日香達の事です。泉に映し出された明日香達はそれぞれの家で、高取山の空に光る星を眺めていました。さすがに稲村も言葉が詰まります。

「それは・・・・・・」

子角仙人は問いました。

「人間様が悲しむ姿など、見たくはあるまい」

「当たり前です!」

思わず声を上げた稲村に続いて、観音も少し力んで言いました。

「はい! 当たり前ですよね?」

稲村はうっとうしそうに観音を一瞥しました。そして稲村はため息をついていいました。

「もう、分かりました。好きになさってください」

稲村の後ろで観音がおどけて嬉しそうに叫びました。

「ウッキ~!」

稲村はすかさず怒っていいました。

「うるさい!」

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