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守護山娘シリーズ  作者: 白上 しろ
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高取は現る②

翌朝。竜泉寺にて。

子角仙人は悩んでいました。泉に映る高取山をじっと見ています。子角仙人の様子が気になった稲村もやってきました。

「どうされましたか?」

子角仙人は白い顎髭なぞりながらいいました。

「う~ん、変だ」

「変?」

「この高取山にはもう守護山娘はおらんはずじゃ。じゃが、何者かが代わりにヤッカイの攻撃を防いでおる」

稲村も泉を覗きました。

「確か数十年前、高取山の守護山娘は、ヤッカイに敗れて消滅したとか・・・・・・」

「そうじゃ。守護山娘のいない山は効力を失い、いずれ衰退していく。しかし、この高取山はまだ生きておる」

稲村は少し考えてから、いいました。

「まさか、高取の守護山娘は生きていたのですか?」


 高取山の山頂に築かれた高取城。この山の守護山娘『高取』は山と城を守る町のヒーロー(ヒロイン)でした。まるで御姫様のような姿の高取は町の人々から強い信頼を寄せられており、その着物姿から親しみを込めて『高取姫』と呼ばれていました。確かに高取はこれまでに数え切れない程数多くのヤッカイを退けて、高取の町や人々を守ってきたのです。

 しかし時代が明治に移ると、全国各地の城は無用な物となっていきます。老朽化した多くの城を維持する事は安全面でも経済面でも難しくなってきました。日本各地の城は取り壊されたり、そのまま放置される城もありました。高取城もその一つでした。特に高取城は山奥に位置しており、保存が難しく自然の中に埋もれて倒壊していきました。ついには安全を考慮して、石垣だけを残してすべて取り壊されてしまいました。

 これまで高取山を守ってきた守護山娘の高取。彼女は強さと優雅さを誇ってきました。しかし高取城と運命を共にするかのように城の解体後、高取は急速に力を失います。そして、ある時ヤッカイに敗れてしまいました。ヤッカイが強かったと言っても、高取が敗れてしまうとは誰も思ってはいませんでした。高取は突然姿を消したかのように、その最後を見届けた者はいませんでした。今なお高取はどこかで生きていると信じている人もいるくらい、突然の出来事だったのです。

 

 子角仙人はいいました。

「高取が生きているとは考えにくい。高取の気はまるで感じられん。あの山を守っておる者から感じるものは、むしろ、闘争心を持った『邪気』じゃ」

稲村は顔をしかめて尋ねました。

「邪気?」

「人間様にも危害を加えようとする悪い気を感じる」

「その者が高取山を守っている、という事なのですか?」

子角仙人は歯切れが悪そうに頷きました。

「何故?」

「わからぬ」

そこに通りかかった、いつも陽気な観音がいいました。

「何が『わからぬ』のですか? 観音にも教えてください。相談に乗りますよ」

真剣に悩む子角仙人と稲村は、腕組みした姿勢のまま、まったく観音に尋ねようとはしません。観音はわざとらしく二人の前にやってきていいました。

「お二人とも、おーい? 聞こえていますか? 観音ですよー?」

稲村は不機嫌そうにいいました。

「ちょっと静かにしてくれないか? 少しは考えてくれ」

観音は気持ちがシュンと縮みました。

子角仙人は考えていました。

「(一体何者なのじゃろう?)」

稲村も考えていました。

「(ヤッカイではない、人間様に危害を加えかねない存在とは?)」

観音もまた考えていました。

「(『考えてくれ』と言われても・・・・・・ 一体、何を?)」

『う~ん!』と三人の悩むうなり声が聞こえました。

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