表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護山娘シリーズ  作者: 白上 しろ
PR
23/78

葛城は咲く⑪

空を覆う黒い雲が一瞬に白く輝く雲へと変わりました。眩しい光にヤッカイは目を腕で遮ります。

「何だ、この光は!」

白い雲から切り離された巨大な物体は地面へと降りてきます。その姿は葛城が呼んだように白鳥ですが、翼を広げたその姿は、葛城山を覆うくらいに巨大なものでした。

「クジラさんがヤッカイの力を削いでくれたおかげで、白鳥さんが地上に舞い降りる事が出来ました。白鳥さん、ヤッカイをやっつけてください!」

『クエ~!』と巨大な白鳥は大きな叫び声をあげながら舞い降りると、翼の光に呑まれたヤッカイの分子達がことごとく破壊されていきます。凄まじい威力にヤッカイは言葉が出ません。巨大な白鳥は葛城の台地に舞い降りると、すぐにまた翼を広げて飛び立っていきました。葛城は手を振って見送りました。巨大な白鳥が過ぎ去った周囲を見渡せばヤッカイの分子達はすべて消滅させられていました。しかし、ただ一人残ったヤッカイは、また高笑いをしていました。

「さすが神話に聞く葛城山。色んな物が出て来るな。しかし分子など最初から必要なかったのだ。私一人で十分!」

葛城もムチと盾を構えます。

「退くつもりはないのですね?」

ヤッカイはニタリと笑って言いました。

「当然! いいか。良く聞け。わたしが身につけているプロテクターは世界でも珍しい特殊合金で出来ている。私の放つ雷にさえ十分に耐えうる強度だ。つまり攻撃力にばかり目立つように見える私だが、実はこのプロテクターこそ最強の・・・・・・」

途中で葛城は苛立ったようにいいました。

「どうでもいいです、そんな事!」

「ど、どうでも、いい・・・・・・ だとぉ! 最後まで私の話(自慢話)を聞かないとは、許さん!」

怒ったヤッカイは両手両足を広げると、再び雷が発生し葛城を襲います。葛城はムチを空振りさせると煙で姿をくらませました。ヤッカイは闇雲に何度も雷を発生させます。ようやく葛城を捕らえたかと思うと、葛城は吹っ飛ばされながらも盾で防いでいました。盾からまた幻覚を誘う甘い匂いが発生します。匂いによってヤッカイの感覚は麻痺しますが、口元がニヤリと笑っていました。

「後悔させてやる! 葛城!」

ヤッカイが突然、背中の剣を抜いて一降りすると、最大級の落雷が一撃、葛城山を越えて人々の住む町に落ちました。あまりの衝撃に葛城は一瞬何が起こったのか分かりませんでした。町から煙が上がります。葛城は信じられませんでした。

「そんな! この葛城山を越えて、人間様の町にまで攻撃が届くなんて!」

ヤッカイは鼻で笑いました。

「私がこれまでのヤッカイだと思ったら大間違いだ! 直接ここから町を襲う事も出来るのだ。妙な匂い(と、自慢のプロテクターを『どうでもいい』と侮辱した言葉)のせいで手元が狂った。狂わせたのは、お前だ!」

葛城は呆然として言葉が出ませんでした。

「全部、お前だ!」

情けないような声で駄目押し気味に言ったヤッカイは、更に意地悪そうに続けました。

「その武器がある限り、また手元が狂うかもしれないな」

「わたくしのせいで人間様の町が・・・・・・」

「そうだ! お前が悪い。さぁ、何が正しいか考えるのだ、葛城!」

葛城は息を呑みました。そしてムチと盾を手放したのです。

「そうだ! それでいい!」

ヤッカイは剣を空へと振りかざしました。

「これはただの雷ではない! 強力なこの力は終わりを告げる一撃となるだろう。直撃すればお前は消滅し、避ければお前の背後にいる人間達もただでは済まない。葛城よ。選ぶがいい! ここで滅ぶか、人間に甚大な被害を与えるか!」

「あなたの狙いはわたくしです。ですから、わたくしを倒せば退いてください!」

「そうだな。それも考えてやろう。だがそんな事を本当に・・・・・・」

ヤッカイの言葉の最中に、葛城は後ろを庇うように両手を広げました。ヤッカイは最後の問いかけをします。

「そうまでして人間を守りたいか!」

葛城は即答しました。

「当たり前です!」

「ふん。その度胸は称えてやろう。では冥土の土産に教えてやる。私のプロテクターこそ、並み居るヤッカイの中でも最強クラスの防御力を誇る・・・・・・」

ヤッカイは説明を始めますが、葛城は目をつむって聞いている様子はありませんでした。

「(聞いていない!)もう! いい!」

雷が直撃すれば本当に滅んでしまうかも知れません。ですが葛城は悔いのない穏やかな気持ちでした。なぜならこれまで『人間様』にたくさんの愛をもらったことを思い出していたからです。

「(わたくしは幸せでした)」

葛城は優しい気持ちに包まれて目をつむっていました。葛城には思い出すようにしながら、見えていたのです。自分の周りにたくさんのツツジが咲く風景を。楽しかったこれまでを。葛城はそれがとても美しいと思いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ