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守護山娘シリーズ  作者: 白上 しろ
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葛城は咲く①

 早朝。

奈良県、御所市内。国道24号線を車で通りかかった男性は、葛城山の山頂を見て『ウワッ!』と驚きました。葛城山は同じ金剛山地の金剛山のように雄大な姿を見せていますが、幽玄で凜とそびえ立つ金剛山と比べて、葛城山は四季折々、色鮮やかに姿を変える山です。その山頂に男性は異変を見たのでした。

「火事だぁ!」

真っ赤に染まる葛城山の山頂。男性は慌てて消防署へ連絡しました。


 葛城山。山頂の見晴らし台にて。

眼下には美しい朝日。段々と光に彩られ始める少女の美しい赤い髪。彼女は見た目の年齢で言うと十二、三歳才位ですが、同じ年齢層である守護山娘と比べると大きな胸とお尻が目立っています。彼女は葛城山の守護山娘『葛城』と言いました。

葛城は欠伸をしながら、グイッと背伸びをすると、新鮮な空気を吸い込むように大きく深呼吸して『わたくしは目が覚めました』とばかりに大きな目をパチッと開けて、くるりと一回り。お気に入りの髪飾りにそっと手を触れました。

「美しい日の出。新鮮な空気。人間様も感じておられるでしょうか? 何より、この美しい・・・・・・」

葛城はバンザイしながら、くるりと回って周囲を見渡そうとした、その時、

バッシャーン!

サイレンと共に大量の水が飛んで来ました。葛城は大量の水に呑まれて見晴らし台から落ちると『あっ!』という間に真っ逆さま! と、言いますか、地べたにズルズル下へ下へと流されていきました。消防車が到着して無事に放水したのです。消防団員さんの数名が急いで駆けつけました。しかし、見渡せば一面がツツジの花、花! 花!! 通報した男性はこの一面に咲き渡る、真っ赤なツツジの群れを山火事だと勘違いしたのでした。

「なんだぁ。火事じゃないよ、これ。良かった。良かった」

消防団員さん達は安心して言うと、あっさり帰って行きました。

水に流されて、全身水浸しの葛城が『ケホッ! ケホッ!』と言いながら、むっくりと立ち上がりました。びしょびしょに濡れた顔を上げると、水濡れ妖怪が、ではなく、葛城が笑顔のようでもあり困ったようでもある、ヘンテコな顔で言いました。

「火事ではありません、人間様。ケホッ!」


 登山途中には滝があります。流れ落ちる水、その向こう側にある岩の内部では全身が機械仕掛けの大きなクジラ(オオクジラ)が『ホエ~ル!』と欠伸のように間延びした、うなり音を上げていました。


葛城山の上空。雲々に紛れて巨大な鳥の頭らしきものが見えます。鳥の姿は雲に同化していますが、雲間からひょっこり出た頭から推測するに、かなり巨大だと思われます。その白い鳥は羽根を広げた形で空に浮いて、ひっそりと息を潜めているのでした。


昇り来る日の出が葛城高原の高さを超えると、台地一面には鮮やかな彩りを魅せる、真っ赤なツツジの群れを明るく照らします。それはまるで山頂とは思えない、別世界のようでした。葛城の赤い髪、それ以上に赤い葛城の髪飾りもまた、光り輝いていました。


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