表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護山娘シリーズ  作者: 白上 しろ
10/78

金剛は駆ける⑨

 風の音で聞こえないはずの姫乃の言葉が金剛の心に届きました。そしてヤッカイにも姫乃の言葉が引っかかります。

「風の正成? 正成って何!」

金剛が風を押し返し始め、足が前へと進み始めました。

「何!?」

ヤッカイが驚いた直後、金剛は正面からの突風から逃れ、あっ、という間にヤッカイの正面まで距離を詰めました。ヤッカイも金剛の素早さに驚きましたが、即座に反応します。二人は両手組みの力比べとなりました。

「私の風の拘束を破るなんて!」

「あの程度の攻撃、何でもありません! それに姫乃様が教えてくれました。私には正成様がついているのです!」

「正成、正成と! うるさいのよ!」

力で押し返そうとするヤッカイを、逆に金剛が持ち上げました。そのままヤッカイを前方に放り投げ、素早い動きで真っ直ぐに飛ぶと、ヤッカイの胸部に拳を打ち込みました。ヤッカイの胸部を守るプロテクターは粉々に砕けます。流石にヤッカイも苦しい表情です。


竜泉寺。

稲村が感心したように言いました。

「なかなかやるな、金剛」

子角仙人は慎重にいいました。

「金剛は金剛山地の中でも最強の守護山娘と呼ばれておる。だが、侮ってはならぬ。今のヤッカイは格段に力をつけておる」


思わず空中に逃げたヤッカイはひどく怒っていました。またさっきからずっと、ちょこまかと風を上手くかわしながら走り回って仕事をしている郵便局員さんも、金剛と紛らわしく、ヤッカイを苛立たせていました。

「(少し早いけど『風の正成』とか言うものが気になる! 作戦を考える余裕がないわ!)金剛! いいわ。私の本気を見せあげる! あなたも人間も終わりよ!」

「そうはさせません!」

金剛はジャンプして空高く飛び、ヤッカイに突っ込んで行きます。風の動きが急速に変化し始めると、今度は段々と力が弱まっていきました。あっさりと金剛は地面へと降り立ちました。風はいつの間にか消えていました。

「あれ? 風が無くなった? ヤッカイを倒したの?」

そう言った姫乃に金剛は背を向けた姿勢のまま動きません。どこからかヤッカイの声が聞こえました。

「感じるかしら、金剛。今ここは台風の目となったわ。この山の周辺の人間は私の力によって、すべて吹き飛ばされるのよ!」

ヤッカイの言葉に姫乃は驚きました。金剛はヤッカイの言葉が聞こえていないのか、それとも別に何かに集中しているのか、動く気配がありません。

「風となった私を倒すことなどもはや不可能。あなたの使命は果たせなかったという訳よ。フフフッ・・・・・・」

ヤッカイの笑い声が空全体からこだまする中で突然、凶暴とも言える巨大な風が空に渦巻き始めました。

「金剛! 空が!」

姫乃は叫びました。まだ金剛は動きません。そして、突然の嵐に見舞われて人々の悲鳴が聞こえた、その時、金剛の体が空気のように段々と薄れていきました。

「金剛?」

そして金剛の姿は完全に無くなってしまいました。

「金剛が…… 消えた……」

姫乃が息を呑むと、金剛山全体が青く輝き始めました。


竜泉寺。

観音は驚いて言いました。

「金剛ちゃん、消えてしまいました!」

「ヤッカイの力が最大限発揮されたと判断したのじゃろう。あれは金剛の奥義とも言える技じゃ」

稲村がそのまま聞き返しました。

「奥義?」

「自らが風に限りなく近づき、正面からぶつかり、対象とする物の動きを止める。しかし、力負けした場合、自らを消滅させてしまう」

稲村も観音も驚きました。仙人は叫びました。

「金剛! もし生きておれば、来年お年玉をやろう!」

観音は別の意味でまた驚きました。

「(どうしてお年玉なのですか!?)」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ