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守護山娘シリーズ  作者: 白上 しろ
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プロローグ

遙か昔の日本。

集落に暮らす人々は、いつも自然の恩恵を受けて生活を営んでいました。自然の中に生きるからこそ、人々は命を育む事が出来たのです。しかし、時に自然は人間に無情な牙を向けてきます。暴風、落雷、洪水、等々・・・・・・ 天災と呼ばれる様々な自然災害を前に、どんなに人間が頑張っても力の差は歴然。人々はどうにも為す術がありませんでした。作物は言うまでもなく、家を失い、命さえ落とす人もたくさんおりました。悲しみと途方に暮れた人々は、いつしか祈りました。自然の怒りを静め、私達の命を守って欲しい、と。

その祈りの先にあったのが、山でした。そして、山を敬い、山を愛し、また山を恐れ、山そのものを神様として奉りました。

山の自然効力は確かに大きなものですが、昔から人々は直感的にそれを知っていたのかもしれません。

そして、その山々。

― どうにかしてあげたい。どうにかならないものか ―

どの山も思いました。そしてついに、何がどうなったのか、それらの山々から、人間と同じ姿をした娘が生まれました。彼女達は『守護山娘』といいました。守護山娘達は人々のたくさんの思いによって生まれてきた者達です。ですから、守護山娘達にとって人間は産みの親でした。守護山娘達は人間を『人間様』と敬い、ひどく人間を愛し、ひどく人間に忠誠心をもった、とにかくひどい者達でした。ただ残念な事に、守護山娘達は古来から存在するにも関わらず、人と同じ姿のためか、今でも人々の多くは彼女達の存在を知りません。普段、彼女達はそれぞれが守護する山を守っているのでした。


自然は地球規模でなくてはならない存在です。しかし、極端に大きな力をもった自然は人間を苦しめてきました。守護山娘達が生まれたのと時を同じくして、凶暴化した自然もまた、人間と似た姿で生まれました。

彼女達を『ヤッカイ』と呼びます。

自然災害を起こす、その中心には、いつもこのヤッカイの存在があったのです。ヤッカイにおいて、一番邪魔な存在、それは山でした。山はヤッカイの力を、大きく削ぐのです。ヤッカイの最初の目的は、山を攻略し支配下に置くことでした。しかし山には、山を守る守護山娘達がいます。

人間を愛し、守ろうとする守護山娘達。人間にも大きな被害を与えようとするヤッカイ。そこから『守護山娘 対 ヤッカイ』という対立関係が出来上がりました。



奈良県に清流名高い『天川』という村に『龍泉寺』というお寺があります。そこには『龍の口』という泉があります。遠い昔に人間を愛してしまった為に、両目を失ってしまった白い大蛇が、今もこの泉の中で生きています。

彼女の力によって、泉の水面には現世のものであれば、離れた場所でもその様子を映し出す事が出来るのでした。水面には、それぞれの山の守護山娘達の様子が映し出されています。そのほとりに、水面を見ている三人の姿がありました。

真ん中に立っているのは、立派な髭を生やした「()(づぬ)仙人」。人間の姿を借りていた頃は『(えんの)子角(おづぬ)』と名乗り、修験道の開祖と呼ばれている人物です。様々な伝説を、全国のあちらこちらに残しています。今は仙人として、人々の生活を見守っており、守護山娘達のリーダー的な存在でもありました。

仙人の右側には、大峰山系の主峰である山上ヶ岳と並ぶ、「稲村山」の守護山娘「稲村(いなむら)」が、左側には「みたらい渓谷」の美しい景色が麓にある「観音峰」の守護山娘「観音」という守護山娘達がおりました。

稲村は見た目が二十歳くらいで漆黒の鎧に、大きな剣を背中に背負い、まるで剣士のような風貌でした。観音は見た目が十三、四歳くらいで、頭の冠には観音様の偶像がいらっしゃいました。

 子角仙人は稲村と観音を呼んで共に泉に映し出される守護山娘達の活躍を見届ける事にしました。最近になり、ヤッカイはますます凶暴化してきています。守護山娘達は、この強力なヤッカイの猛攻を防ぐ事が出来るのか、そう心配に思ったからです。


今、ヤッカイは人々に、いいえ、地球に生きるすべての生き物に、まるであざ笑うかのように、前代未聞の甚大な被害をもたらそうとしているのでした。


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