275.次の日、お昼になると
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│ 次の日、
│ お昼になると、お兄ちゃんとカメさんが来ました。
│ 前の日より早い時間でした。
│ 体を起こしたワタシは、
│ 身だしなみをちょっと整えたあと、
│ 『どうぞ。』って返しました。
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│ 『今日は早いね。
│ お昼ご飯、もう食べたの?』
│ カメさんを迎え入れた、戸口のお兄ちゃんにそう訊くと、
│ お兄ちゃん、
│ ドアを閉めながら答えました、
│ 『いや、
│ メシは まだ。このあと食べる』って。
│ ワタシが、
│ 『え、
│ 食べてからでも良かったのに・・・』って、こっちに来たお兄ちゃんに訊くと、
│ お兄ちゃん、
│ 床頭台の、昨日置いていった雑誌を拾って言いました。
│ 『大学の研究棟を出たところでさ、カメに言われたんだよ、
│ 昼メシ、
│ あとのほうがいいんじゃないか、って』
│ 『え?』
│ 『お前、
│ 食べ物の匂い、ダメなんだろ?
│ なら、
│ 念のため、
│ 終わってからのほうがいいんじゃないか・・・って、カメが』
│ 『えっ』
│ 驚いたワタシは、
│ すぐに、カメさんを見ました。
│ カメさん、
│ 自分のイスをワタシのベッドの近くに置き、そこに腰掛けようとしているところでした。
│ ワタシ、
│ カメさんにお礼を言いました。
│ 『あの、
│ 気を遣っていただいて、ありがとうございました・・・』
│ カメさん、
│ イスに坐ったあと、ちょっと照れくさそうに頭をかきました。
│ そうして、
│ 『・・・まぁ、
│ うん、
│ もしかしたら、って思ったから・・・』って言いました。
│ お兄ちゃんの声がしました。
│ 『じゃあ、
│ オレ、
│ 今日もここで雑誌 読んでるから。
│ 終わったら教えてくれ』
│ 目を向けると、
│ お兄ちゃん、壁際のイスに腰掛けていて、
│ 自分の胸ポケットから、イヤホンを引っ張り出してるところでした。
│ 同じくお兄ちゃんを見ていたカメさんが、
│ 『あぁ、分かった。』って返しました。
│ 続きます。
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