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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
250/292

250.「《『“決まったわけじゃない・・・って

「《『“決まったわけじゃない・・・って、

    あなた、何を寝ぼけたことを言ってるのです。

    堕ろす以外ないでしょう。

    他に何があると言うのです。

    冗談はおよしなさい”

   “いや、冗談とかじゃなくて、

    その・・・、

    まだ、ふたりでちゃんと話し合ってなくて・・・”

   “はぁ?

    話し合う・・・って、何をです”

   “その、なんて言うか、

    ・・・堕ろすか、堕ろさないか、って、

    要するに、そういう話を・・・”

   “はぁ・・・、”って、

   ため息ついた▼▼お祖母ちゃん、

   “ホントもう、

    あなたたちは いつもいつも・・・。”って愚痴を少し(こぼ)したあと、

   更に続けた。

   “いいですか、

    あなたは学生で、

    しかも、結婚だって まだしてない身ですよ?

    相手の女性を妊娠させてしまったこと自体、恥ずべき失態であり、

    由々しき問題なのに、

    それを、あろうことか産むかもしれないだなんて・・・。

    あり得ないでしょう。

    どうしたら そんな発想が出てくるのですか。

    恥知らずにも程があります。

    まったく、なに言ってるんだか・・・”

   私、▼▼お祖母ちゃんに言った、

   “結婚してないから堕ろせだなんて、

    考えが少し、古いと思います。”って。

   ▼▼お祖母ちゃん、

   顔をこっちに向けて、私を睨んだ。

   私、構わず続けた、

   “それに、

    ▽▽はいつも、私のために避妊してくれてました。

    それで なっちゃったんだから、仕方ないと思います

    ▽▽は悪くないと思います”って。

   ▼▼お祖母ちゃん、

   やれやれ・・・って表情して、ため息ついたわ。

   そうして、

   “悪くないことはないでしょう。

    避妊したからと言って必ず避けられるものでもないことくらい、

    十分に承知していたはずです。

    ▽▽、そうですね?”って言って、お父さんの方へ目を向けた。

   “・・・”

   お父さん、

   下向いたまま、何も答えなかった。

   “なら、

    そうなった場合のことを考えた上、ことに及ぶべきでしょう。

    違いますか?”

   “・・・”

   ▼▼お祖母ちゃん、

   少ししてから、私の方に顔を向けた。

   “あなたもです。

    どうしようと思っていたのですか?”って尋ねた。

   “・・・”

   私も、何も答えられなかった。

   ▼▼お祖母ちゃん、

   少ししてから、再び ため息をついた。

   それから言った。

   “あなた、もう いい年でしょう。

    ご自分の体に関わる大事な問題なのに、

    なぜ、もう少し考えて慎重に行動できないのです。

    理解に苦しみます。

    考えが古いとか、ひと様のことを偉そうに批判する前に、

    まずは、ご自身のことをしっかり見つめ直した方がよろしいと思います”

   “・・・”

   “▽▽、あなたもです。

    これからは、

    もう少し考えた上で行動なさい”

   “・・・”

   “それと、

    今後 誰かと付き合う際は、もっと ちゃんとした人を選びなさい。

    いいですね?”

   お祖父ちゃん、すぐに割り込んだ、

   “おい、あんた、

    ちゃんとした、ってどういう意味だ”って。

   ▼▼お祖母ちゃん、

   お祖父ちゃんの方に顔を向けた。

   そうして、

   “そのままの意味です。

    常識人らしく、ちゃんと分別を心得(こころえ)――”って答えてるところで、

   お父さんが言ったの、

   “お袋”って。

   ▼▼お祖母ちゃん、

   すぐに、お父さんの方に目を向けた。

   “▽▽、なんですか?

    今、ワタクシが喋ってます”

   “お袋、悪いのはオレだ。

    ◎◎は、悪くない”

   “・・・はいはい”

   “それと、

    ・・・オレ、◎◎とは別れない。

    別れる気、ない”

   “・・・。

    なら、少なくとも堕ろしなさい。

    それが条件です”

   “・・・”

   “どうしたのです。

    返事をなさい”

   “・・・お袋、

    その、

    一日か二日でいいから、待ってほしい・・・”

   “待ってほしい、って、

    どうしてです。

    何を待つのです”

   “・・・返事。

    まだ、

    どうするか、決まってないから・・・”

   ▼▼お祖母ちゃん、

   大きく ため息をついたわ。

   そうして言った。

   “・・・まだ決まってない、って、

    だから、あなた、

    さっきも言ったでしょう。

    そんなの堕ろすに決まってます。

    それ以外にありません。

    まったく、同じことを何度も言わせないでちょうだい”

   “・・・”

   私、

   “あの”って、割って入った。

   ▼▼お祖母ちゃん、

   こっちをジロリと見て、

   “・・・なんですか?”って訊いた。

   私、▼▼お祖母ちゃんに言った。

   “あの、

    ▽▽、本当は堕ろしたいんです。

    ただ、

    私が、もうちょっと考える時間がほしいってワガママ言ったから、

    だから――”

   “オレ、

    そんなこと言ってない”って、

   お父さん、私の言葉を途中で遮ったわ。

   “え? ・・・でも”

   “言ってない”

   “・・・”

   ▼▼お祖母ちゃん、息を大きく吐いた。

   そうして言った。

   “・・・▽▽、

    なら尋ねさせてもらいますが、

    あなた、産んでもいい・・・と、

    そう考えているわけですか。

    結婚前にも関わらず女性に手を出し、妊娠させてしまい、

    それを、

    あまつさえ、恥ずかしげもなく産んでしまってもいい・・・と、

    あなた、そう考えているわけですか”

   お父さん、

   少ししてから、言葉を返した。

   “・・・その、

    恥ずかしげもなく、ってのは、ちょっと違うけど、

    でも、

    オレ、そう考えてる。

    ・・・産んでもいい、って、

    オレ、そう思ってる”

   ▼▼お祖母ちゃんが すぐに言った。

   “バカおっしゃい!

    何を血迷ったことを言ってるのです。

    そんなことになったら、

    あなた、周りに どう説明するつもりですか。

    未婚のときにできた子でして・・・って、

    正直に そう答えるつもりですか。

    ふざけるのもいい加減にしなさい。

    そんなの、噂が あっという間に広がってしまって、

    そこら中で笑いものにされます。

    道行く人に後ろ指をさされ、

    恥ずかしくて表を歩けなくなってしまいます。

    あなた、

    ワタクシたちに、そういう思いをさせたいと言うのですか。

    ご先祖様たちが代々守り抜いてきた 大切な一族の名を汚すことになっても構わないと、

    あなた、そう思っているのですか”

   “・・・”

   “▽▽、

    考える必要なんてありません。

    明日にでも病院に行き、

    即刻、堕ろしてもらいなさい。

    産むなんて許しません。

    いいですね?”

   “・・・”

   “▽▽、

    返事をなさい”

   “・・・まだ、決まってない”

   “▽▽!

    ワガママ言うんじゃありません!

    産むのは許さないと言ってるでしょう。

    どうして分からないのです。

    堕ろすと言いなさい”

   “・・・”

   “▽▽!

    堕ろすと言いなさい!

    言うことをきかないのであれば、親子の縁を切りますよ。

    勘当しますよ”

   “・・・”

   “▽▽!

    分かってるんですか、勘当ですよ!”

   “・・・”

   そのときね、

   @@お祖母ちゃんが言ったの、

   “あの、

    ▼▼さん、ちょっといいかしら”って』

  続きます》」

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