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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
249/292

249.「《『“は? えっと・・・

「《『“は? えっと・・・、

    じゃあ、あなた、

    ウチの娘とあなたの息子がウソをついている・・・と、

    そう おっしゃりたいわけですか?

    妊娠していないのに妊娠している・・・と”

   “いえ、

    ▽▽は言わされてるだけでしょう、(たぶら)かされて”

   “誑かさ・・・って、

    ちょっと待て、

    じゃあ、あんた、

    もしや、ウチの娘が――”

   “あぁ、違う違う、”って、

   お父さん、

   慌ててお祖父ちゃんの声を遮って、

   ▼▼お祖母ちゃんに向かって、続けて言った。

   “オレ、ぜんっぜん言わされてないから。

    ホントに病院に行って、ホントに医者に――”

   “あなたは黙ってなさい!”

   ▼▼お祖母ちゃん、

   ピシャリと言ってお父さんを黙らせると、

   正面にいるお祖父ちゃんをまっすぐ見据え、続けたわ、

   “だって、

    どう考えても不自然じゃないですか、たかが中絶の費用に23万だなんて。

    普通は10万程度でしょう。

    なのに、倍以上だなんて。

    あり得ない金額です”って。

   お祖父ちゃんが、すぐに言い返した。

   “あんたの息子がそう言ったんだ。

    じゃあ、何か?

    ウチの娘が、

    妊娠した、ってウソをついて、

    あんたや私らから お金をふんだくろうとしてる、って、

    あんた、そう言いたいわけか。

    ふざけるな。

    いくらなんでも失礼だ。

    だいたい、

    こっちの方こそ、あんたのとこの息子のせいで迷惑してるんだ。

    その上、

    こんな言いがかりまでされたら、たまったもんじゃない。

    不愉快だ”

   お父さん、

   “いや、だから、”って割り込んで、

   ▼▼お祖母ちゃんに向かって、

   “オレ、

    ◎◎とホントに病院に行ってきたんだって。

    ほら、これ。見てよ”って言って、

   自分の財布から出した、病院の領収証を見せた。

   ▼▼お祖母ちゃん、

   その領収証の紙を受け取り、じっと見たあと、

   無言でお父さんに返してね、

   そうして、

   向かい側で怒ってるお祖父ちゃんを見て言ったわ、

   “だとしても、

    いくらなんでも高すぎます。

    おかしいでしょう”って。

   お祖父ちゃん、すぐに言い返した。

   “だから、

    あんたの息子がそう言ったんだ。

    だいたい、それを言うなら、

    ホントの金額は10万くらいなのに、

    どうせだからちょっと高めに言って ひと儲けしてやろう、とか、

    そっちの方こそ企んだんじゃないのか、

    ひと様の娘を妊娠させた挙句、誑かして!”

   “失礼な。

    ワタクシたちの一族は、

    そんな はしたない真似をするほど落ちぶれてはおりません。

    天地神明、先祖代々に誓って、

    そのようなこと、絶対にいたしません!”

   “それはこっちのセリフだ! ふざけるのも大概にしろ!”

   お父さん、

   また、たまらず割って入ったわ。

   “あぁ、もう、

    ちゃんと説明する、

    ちゃんと説明するから、最初から!”って言って、

   公園でボートに乗った、その前日の大学でのやり取りから、

   また延々と説明し始めた。

   もうね、

   いま思い出してみても、最悪のスタートだったわ。

   私、

   正直言って、かなり頭に来てて、

   心中まったく穏やかじゃなかったんだけど、

   ただ、

   隣でお父さん、ひとりで一生懸命に喋ってたから、

   だから、なんとか気を取り直すことにして、

   途中からは、

   お父さんが説明に困ったとき、ちょっと助太刀に入ってあげたり、

   買ってきた本とか診察券を見せたりして、

   お父さんの説明をサポートした。

   ▼▼お祖母ちゃん、

   病院に行ったときの、感じの悪かった対応のことを話したら、

   ようやく、ちょっと納得したようだった。

   “どうする?

    意味ないかもしれないけど、

    一応、病院に電話してみる?”って、お父さんが訊いたら、

   ▼▼お祖母ちゃん、

   “いえ、結構。”って答えて、

   続けて お父さんに言った。

   “ただ、やはり23万は高すぎます。

    堕ろすのは、別の病院になさい”

   お祖父ちゃんが すかさず言った、

   “その前に、

    何か私たちに言うことがあるだろう”って。

   間がちょっとあって、

   それから、

   ▼▼お祖母ちゃんが言った、

   “・・・◎◎さんを疑い、申し訳ありませんでした”って。

   “もうひとつあるだろう”

   “・・・ウチの息子が◎◎さんを妊娠させたことで、ご迷惑をおかけしました。

    申し訳ありません”

   “ふん”

   お祖父ちゃんが そう吐き捨てると、

   ▼▼お祖母ちゃん、まったく意に介さない様子で、

   お父さんの方に静かに向き直してから言ったわ。

   “▽▽、

    いいですか、

    今からでも病院を変えなさい。

    いくらなんでも高すぎます。

    もっとちゃんとしたところにしなさい。

    いいですね?”

   “・・・”

   “どうしたのですか?

    聞こえなかったのですか?”

   “あぁ、

    えと、聞こえてる・・・”

   “なら、

    返事をなさい”

   “いや、あの、

    ・・・病院を変えるのは構わないんだけどさ、

    と言うか、変えようと思ってたんだけどさ、

    ただ、その、

    まだ決まったわけじゃないから・・・”

   “決まったわけじゃない、って、

    何がです”

   “その・・・、

    堕ろす、って、

    まだ、決まったわけじゃないから・・・”』

  続きます》」

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