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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
248/292

248.「《『到着予定の時間になって

「《『到着予定の時間になって、

   お父さん、息をひとつ吐いたわ。

   “・・・行こう”って言って席を立ったから、

   私も立った。

   ふたりで到着口の方へ近付いていって、

   大勢いる、他の出迎えの人たちと一緒に待ってると、

   到着口の向こうに人の列が入ってきた。

   来た・・・って思ってね、

   私、背伸びをして、

   前にいる人の肩越しから、その入ってきた列の方を見てたら、

   隣のお父さんの声が聞こえてきたわ。

   “・・・あ、いた。

    ほら、

    今、そこの角を曲がってきて、

    青のバッグを持ってる人。

    あれ。あれがオレのお袋”

   “青のバッグ?

    ・・・あぁ、あのスポーツバッグの人?

    後ろで髪を()ってて、白のブラウス着た”

   “そうそう。

    あのバッグ、

    オレが高校のとき使ってたバッグでさぁ、

    なんか、ちょっと懐かしい”

   ▼▼お祖母ちゃん、キョロキョロしながら歩いてて、

   で、

   こっちに目を向け、お父さんを見付けると、

   小さく息を吐いて、

   そのままこっちへ来たわ。

   お父さんが、

   “お袋、久し振り”って言いながら、手を差し出すと、

   お祖母ちゃん、

   その手にバッグを渡しながら言ったわ。

   “何が久し振りよ。

    まったく、面倒ばっかかけて”

   “ゴメン・・・”

   私、

   すごい緊張してたんだけど、お祖母ちゃんに、

   “あの、初めまして。

    私、▽▽さんとお付き合いさせてもらってます○○◎◎と言います。

    本日は遠いところからお越しいただき、ありがとうございます”ってなんとか言って、

   頭を下げた。

   ちょっと間があって、声が返ってきた。

   “・・・▽▽の母の▼▼と申します。

    本日は宜しくお願いします”

   “あ、はい、

    こちらこそ宜しくお願いします”

   その後は、

   お祖母ちゃん、

   お父さんに渡したバッグの中から自分のバッグを出して、それを持って、

   “で、

    どっちに行けばいいの?”って、お父さんに訊いた。

   お父さん、

   “あぁ、こっち。

    こっちにバスがあって、それに乗る”って答えつつ歩き出した。

   お祖母ちゃんも歩き出したから、私も慌ててついていった。

   私、お祖母ちゃんに話しかけた、

   “今日、朝一番で来たんですか?”って。

   お祖母ちゃんが答えた。

   “いえ、違います”

   “・・・えと、

    じゃあ、今朝は何時頃に家を――”

   “ゆうべです”

   “あ、ゆうべだったんですか・・・。

    ゆうべの何時頃――”

   “▽▽から返事の連絡をもらってすぐです”

   “あ、そうだったんですか・・・”

   “・・・”

   “・・・”

   なんか、あんまり話したくないみたいだったから、

   私、それっきり黙ることにした。

   そしたら、

   お父さん、なんとなく察したらしくて、

   自分の大学や普段の生活のことを、ひとりで ずっと喋ってたわ。

   バスに乗って、駅で降りて、

   で、

   喫茶店に入って、ひと休みしていくのかな・・・って思ってたら、

   ▼▼お祖母ちゃん

   “あぁ、結構。

    このまま向かいましょ”って言ってね、

   私、慌てて家に、

   ゴメン、ちょっと早く着く・・・って電話した。

   それから、

   電車に乗って、タクシーに乗って、

   私の家の前で停めてもらって、

   それで、

   ▼▼お祖母ちゃんが料金を払ってくれてる間にタクシーを降りたんだけど、

   つい、ため息が出ちゃったわ。

   メインイベントがこれからなのを思うと、憂鬱で仕方なかった。

   玄関の前まで行って、ドアを開け、

   “ただいまー”って言うと、

   ちょっと間があってからリビングのドアが開いて、

   お祖父ちゃんと@@お祖母ちゃんが出てきた。

   “これはこれは。

    お暑い中、遠いところからどうも。

    ◎◎の父のΩΩで、

    こちらは家内の@@です。

    さぁ、どうぞこちらへ”

   “▽▽の母の▼▼でございます。

    本日は宜しくお願いします。

    これ、

    夫の父の畑で採れた日向夏をマーマレードにしたものです。

    もし宜しければ・・・”

   “あぁ、これはどうも。

    ありがとうございます”

   その後は、

   @@お祖母ちゃんが、

   “これ、▼▼さんがお作りになられたの?”って訊いて、

   そのまま、お祖母ちゃん同士でマーマレードの作り方の話をしながらリビングに入っていって、

   で、

   私は台所に行って、

   氷入りの冷たい麦茶とかをお盆に載せ、リビングに戻って、

   長机のみんなの前に配っていった。

   長机には、

   ウチのお祖父ちゃんたちと向かい合う位置に▼▼お祖母ちゃんが座ってた。

   お父さんは、

   長机の空いてる辺の傍らで、お祖母ちゃんたちの話を黙って聞いていて、

   私は、

   そのお父さんの隣に行って腰を下ろすと、

   お父さんと自分の分の麦茶を置いて、お盆を下に置いた。

   そしたら、

   こっちのことを色々と喋ってたお祖父ちゃんの話が一段落したところで、

   姿勢よく正座してる▼▼お祖母ちゃんが言った、

   “あの、

    お互い、それほど時間がないことと思いますし、

    そろそろ本題に入らせていただきたいのですが・・・”って。

   お祖父ちゃん、すぐに返した、

   “あぁ、そうでした。これは失礼しました。

    では、そうしましょう”って。

   ▼▼お祖母ちゃんが言った。

   “あの、

    昨日、ウチの▽▽から電・・・あぁ、

    電話は、こちらのお宅のを使わせていただいた・・・とのことで、

    その節は、ありがとうございました。

    突然のことでしたので なにぶん気が回らず、つい長話をしてしまって・・・”

   “あぁ、

    いえいえ、とんでもないです。

    それくらい、お気になさらないでください”

   “はい、ありがとうございます。

    それで、

    昨日、ウチの▽▽から電話があり、

    そちらの◎◎さんを▽▽が妊娠させてしまった・・・と伺いました。

    まず確認しておきたいのですが、それは本当なのでしょうか”

   お祖父ちゃん、

   一瞬、ちょっとムッとした表情になってね、

   でも、すぐに戻すと、

   普通の調子で返したわ。

   “あぁ、

    ◎◎を妊娠させたのが、

    もしかしたら△△君以外の男かもしれない・・・ってことですか?

    でも、それは確認しようがないでしょう。

    本人たちがそう言ってるのだから、

    私たちは、

    ただ、それを信じるしかないと思ってます”って。

   そしたらね、

   ▼▼お祖母ちゃんが言ったのよ、

   “いえ、

    それもそうですが、

    そもそも、そちらの◎◎さんは本当に妊娠しているのでしょうか。

    ワタクシ、

    まず、それを疑っております”って』

  続きます》」

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