242.「《『でね、昨日と同じように
「《『でね、
また、お寺さんに続く上り階段のところで自転車を駐めて、
預かっていたリュックをお父さんに返したあと、
途中の自販機で買った缶ジュースを前カゴの中から拾って、
片方をお父さんに渡して、
そうして、ふたりで階段を上り始めた。
脇にある手すりを乗り越え、
コンクリート壁の、細いヘリの上を歩いていって、
で、高架下に辿り着くと、
そこから丘をちょっと登って、大きな支柱の土台まで行って、
お父さんと一緒に腰掛けた。
前日とまったく同じ、見晴らしのいい風景がそこにあって、
緑の田んぼや、茶色っぽい畑が、
眩しいくらいの明るい日差しの中で、遠くの方まで続いてた。
“着いたね”って言ったら、
“うん”って返ってきた。
“いい景色だね”って言ったら、
“・・・うん”って返ってきた。
そのまま、
お互い、目の前に広がる景色を眺めてたわ。
少しして、
お父さんが缶ジュースをプシュッと開け、ちょっと飲んだから、
私も自分の缶に手を伸ばし、開けて、
ひと口飲んだ。
ふぅ・・・って息をついて、
そのあと、お父さんに、
“ねぇ、
▽▽がさっきウチからかけてた電話、
どんな感じだったの?
なんか、
怒られた、って言ってたけど・・・”って訊いた。
“ん?
・・・あぁ、
うん、怒られた”って返ってきた。
“どれくらい?”
“かなり”
“どんなこと言われた?”
“えっと・・・、
あなた、なんのために上京したの、とか、
毎月の仕送りだって大変なのに、お礼の電話ひとつ寄越そうとしない、とか、
ホント、あなたたちは親の気も知らずに昔から迷惑ばっかり、とか、
電話・・・は関係ないか。
・・・。
まぁ、だいたいそんな感じ”
私、心配してたことを尋ねてみた、
“あの、
こっちに帰ってきなさい、とか、
そういうのは・・・”って。
“あぁ、
そういうのは言われてない”
私、ホッとした。
良かった・・・って思ってたら、
お父さん、
続けて私に訊いたのよ、
“・・・あのさ、
◎◎って、
もしかして、電話で姉貴とよく話すの?”って』
続きます》」




