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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
239/292

239.「《『ウチの門の前に到着して

「《『ウチの門の前に到着して、

   私、お父さんにお礼を言って自転車の荷台から降りた。

   背負ってたリュックをお父さんに返して、

   代わりに自転車のハンドルを持って、

   そうして、お父さんの方に目を向けた。

   お父さん、

   リュックを手に持って、私の家をじぃっと見てた。

   少しすると深呼吸して、

   もう一度して、

   それで、

   緊張した面持ちで私を見て言ったわ、

   “行こう”って。

   私も一度 深呼吸した。

   “うん”って返して、前を向いて、

   門を開けた。

   ふたりで庭に入っていった。

   自転車をいつもの場所に戻したあと、

   お父さんと一緒に玄関に行った。

   ドアの取っ手を掴んで、

   念の為、後ろを振り返ってお父さんを見た。

   お父さん、

   息をひとつ吐いてから、こっちを見た。

   黙って頷いた。

   私、

   前に向き直すと、

   ノブを回して、玄関のドアをそうっと開けた。

   ちょっと緊張しつつ、

   “ただいま・・・”って言って、ウチに入った。

   シーンとしていた。

   リビングの方を見るとドアが閉まってたから、

   ふたりとも、そっちにいるのかな・・・って思った。

   お父さんも、

   “お、お邪魔します・・・”って言って入って、

   玄関のドアを静かに閉めた。

   靴を脱いで上がろうとすると、台所の方で新聞を畳む音がした。

   イスが引かれた音がして、

   間もなく、台所からお祖父ちゃんが出てきた。

   こっちに歩いてきた。

   私、

   お祖父ちゃんに、お父さんを紹介したわ、

   “あの、

    この人、△△さん”って。

   隣にいるお父さんが、緊張した感じですぐに言った。

   “あ、

    オ、オレ、

    △△▽▽と言います。

    ◎◎さんとは、この春から付き合わせてもらっていて・・・。

    えと、

    こ、この度は とんだご迷惑をおかけしてしまいまして、

    本当に申し訳ございません”

   お祖父ちゃん、

   頭を下げてるお父さんの前に立った。

   間がちょっとあって、

   それから、

   “・・・どうぞこちらへ”って言って、

   リビングのドアを開けて、ひとりで中に入っていった。

   お父さん、

   ゆっくり頭を上げたあと、はぁ・・・って息をついて、

   その後、

   私に続いて家に上がった。

   リビングに入ると、クーラーが効いていて涼しかった。

   長四角の座卓が部屋の中央に移動してあってね、

   その左右に座布団が2枚ずつ敷かれてて、

   そのうちの1枚に、

   腕組みをしたお祖父ちゃんが、胡座(あぐら)をかいて座ってた。

   お祖父ちゃん、

   組んでいた手を一旦(ほど)くと、

   自分の対面を指してひと言 言った、

   “そちらへ”って。

   お父さん、

   “あ、

    はい、失礼します”って慌てて言って、

   お祖父ちゃんの向かい側に行って、

   持っていたリュックを下ろして、

   敷かれている座布団に、正座して座った。

   私も、

   リビングのドアを閉めたあと、

   お父さんの隣に行って腰を下ろした。

   お祖父ちゃん、

   腕組みをしたまま言ったわ、

   “今、

    @@が飲み物を持ってきます”って。

   お父さん、お礼を言った。

   “あ、

    はい、ありがとうございます”

   3人とも無言のまま、少しの間 待ってると、

   廊下を歩く音が近付いてきた。

   私、

   途中で気が付いて、慌てて立ち上がった。

   ドアを開けると、

   お祖母ちゃん、グラスと小皿の載ったお盆を持って立っていて、

   私に軽く頭を下げて、そのままリビングに入っていった。

   私、

   ドアを閉めてから、また お父さんの隣に戻った。

   お祖母ちゃん、

   お祖父ちゃんの横に行って腰を下ろすと、

   座卓に置いたお盆の上から、

   氷の浮かぶ麦茶のグラスと、煎餅か何かの茶菓子の載った小皿を、

   みんなの前へ置いていった。

   お父さん、

   自分のが置かれたとき、

   “あ、

    ありがとうございます”って言って、頭を小さく下げた。

   置き終えたお祖母ちゃんがお盆を下げると、

   お祖父ちゃん、

   腕組みを()いて、お父さんに言ったわ、

   “説明のため、

    わざわざウチまで足を運んでくれて、ありがとな。

    外、暑かったろ?”って。

   お父さん、答えたわ。

   “あ、

    えと・・・、

    はい、暑かったです。

    でも、

    オレ、暑いのは割と平気なんで・・・”

   “そうか、九州だもんな。

    向こうはもっと暑いのか?”

   “えーっと、

    まだ こっちに来て3、4ヶ月なのでちょっと分かりませんが、

    でも、向こうの方が暑かったような気がします。

    こっちは、

    日差しが幾分柔らかい感じがして、ちょっとラクです”

   “これでちょっとラクなのか。

    私も家内も生まれは東北でね、

    これくらいの暑さで、お互い もう限界だよ。

    九州に住むのは、私たちにはちょっと厳しそうだな”

   お祖父ちゃんが笑いながらそう言うと、

   隣にいるお祖母ちゃんがお父さんに尋ねたわ、

   “△△さんは、

    何かスポーツをやられてたの?”って。

   お父さん、お祖母ちゃんの方を向いて答えた。

   “はい。

    スポーツって言うか、

    その、父が剣道の道場をやってまして、

    なので、

    小さい頃から剣道を・・・”

   “まぁ、

    それで体つきがしっかりしてるの。

    何段くらい?”

   “3段です。

    でも、

    3段までなら、

    ある程度普通にやっていれば、結構取れてしまう段数なので・・・”

   “こっちでの暮らしは どう?

    もう慣れた?”

   “はい、だいぶ慣れました”

   “こっちは人が多くて驚いたでしょう”

   “あ、

    はい、驚きました、

    テレビで見ていて知ってはいたんですけど・・・。

    駅の構内を歩くとき、

    最初の頃は、他の人にぶつかりそうで怖かったです。

    なんでみんな、

    あんなに普通に歩けるんだろう・・・と思ってました。

    今は もう慣れましたけど。

    あと、車もすごく多いです。

    こんなに たくさん走ってるとは思いませんでした”

   “△△さんは、

    アパートに ひとり暮らしなんですって?”

   “あ、

    はい、そうです、

    ひとり暮らしです”

   “炊事場は付いてらっしゃるの?”

   “一応、付いてます”

   “共用ではなくて?”

   “はい、共用ではないです。

    部屋に付いてます、

    ごく簡素なものですけど・・・”

   “なら、

    自炊してらっしゃるのね?”

   “あ、はい。

    朝と、

    あとは、バイトのない夜だけですけど”

   “それでも毎日 大変でしょう”

   “はい、

    正直に言えば、ちょっと面倒です・・・。

    なので最近は、

    袋ラーメンを作って、

    あとは、

    実家から送られてくる野菜や、スーパーで買ってきたバナナを適当に食べて・・・、

    というパターンがほとんどです”

   “ご実家からは、どんな野菜が送られてくるの?”

   “えーと、

    カボチャとか、トウモロコシとか、シイタケとか、オクラとか・・・。

    あぁ、

    あと、野菜じゃないんですが日向夏も送られてきます。

    ウチの祖父が作ってるので”

   再び、お祖父ちゃんがお父さんに話しかけた。

   “△△君は、##大学だって?”

   “はい、そうです”

   “学部は?”

   “工学部です”

   “学科は?”

   “情報工学科です”

   “情報工学科・・・”

   “えと、

    コンピュータとか、プログラミングとか、

    そういう方面の学科です”

   “あぁ、

    マイコンとか、そっちか”

   “そうです”

   “じゃあ、

    △△君は、

    将来的にはそっちの道を考えてるわけか”

   “えっと、

    まだ分かりませんが、今のところは・・・”

   “そうかそうか。

    勉強は楽しいか?”

   “えと、

    楽しい、って言うか、大変です。

    あぁ、でも、

    FORTRAN(フォートラン)っていうプログラミング言語の勉強は楽しいです。

    ときどき、時間のあるときに大学のコンピュータ室に行って、

    適当にプログラムを組んで遊んでます”

   お祖父ちゃん、

   また、“そうかそうか。”って満足そうに言って、

   麦茶のグラスを手に取ると、

   ひと口 (すす)って、ふぅ・・・って息をついた。

   そうしてね、グラスを座卓に置くと、

   打って変わって真剣な顔つきになって、

   私たちを見て言ったわ、

   “じゃあ、

    そろそろ色々と聞かせてもらおうか”って。

   お父さん、

   “はい・・・”って返した』

  続きます》」

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