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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
237/292

237.「《『次の日、遅めに目を覚ました私は

「《『次の日、

   遅めに目を覚ました私は、

   台所で朝ゴハンをちょっとだけ食べて、また2階の自分の部屋に戻っていって、

   お布団の上で仰向けになってたの。

   気分が悪くてね、

   天井を見上げつつ、首振り扇風機の風を浴びてボーッとしてた。

   そしたら、

   下からお祖母ちゃんの声が聞こえてきたの、

   “◎◎ー、お買い物に行ってくるからねー”って。

   “はーい、いってらっしゃーい”って返したら、

   玄関のドアの閉まる音と、少し間があってから門の閉まる音がして、

   あとは、聞こえてくるのは、

   いつも通りの うるさいセミの声と、

   遠くでやってる野球部の練習の声とか、バイクや車の走る音とか、

   そういう音だけになった。

   家に誰もいないみたいだし、

   念のため、1階にいた方がいいかな・・・って思ってね、

   で、

   起き上がって、部屋を出たの。

   1階に下りると誰もいなくて、リビングの窓も()きっぱなしになっていた。

   やっぱり下りてきて正解だったな・・・って思いつつ、

   ふたつ折りにした座布団を枕にして横になったの。

   そしたら電話が鳴ってね、

   “もしもし・・・”って出たら、お父さんだったわ。

   お父さん、その日の午前中もバイトだったんだけどね、

   現場に届いてる資材だか何かの器具が足りないとか、確かそんな理由で、

   もしかしたらバイトがちょっと長引くかも・・・って、休憩中に電話してきたの。

   “遅れる・・・って、どれくらい?”って訊いてみたら、

   “分からん。

    さっき会社の人が連絡してて、

    足りない分は、これからこっちに持ってきてくれるみたいなんだけど、

    それが届かないと、どうにもならない作業があって・・・”って。

   “そうなの・・・”

   “うん。

    で、

    今日、お昼ゴハンを一緒に食べる約束してたじゃん。

    あれ、多分ちょっと無理。

    ゴメン”

   “仕方ないよ。

    じゃ、終わったらまた連絡して。

    それまで私、家にいるから”

   “分かった。

    ところでさ、

    お弁当って、もう作っちゃった?”

   “ううん、まだ作ってない。

    今日、朝からちょっと気分が悪くて・・・”

   “・・・。

    えと、

    もしかして、その・・・”

   お父さん、そこで口ごもったから、

   私、言ったわ。

   “ううん、ツワリじゃないと思う。

    昨日ね、

    夜 寝る前に色々と考えてたの、

    その、自分の妊娠のことについて色々・・・。

    そしたらね、

    なんか、全然 眠れなくなっちゃってね、

    寝るのが遅くなっちゃって、

    だから、

    多分、それで・・・”

   お父さん、

   ちょっと間を置いてから、

   “・・・今って、家に誰もいないの?”って訊いた。

   私、答えたわ、

   “うん、今は私だけ。

    ●●は、多分 学校のプールだし、

    お母さんも、さっき買い物に出掛けたし・・・”って。

   “そっか。

    分かった、

    じゃあ、終わったら・・・と言うか、お昼頃にまた電話するよ”

   “うん。

    今日も暑いから気を付けて”

   “おう。

    じゃあ、またな”

   “うん、また”

   そう言って受話器を戻した私は、

   再びリビングに戻って、横になったの。

   そしたらね、

   その1分後くらいに、玄関のドアが開いたのよ。

   あ、お祖母ちゃんかな・・・って思ったんだけど、

   それにしては帰ってくるのが早過ぎるから、

   だからね、

   多分、弟だろうな・・・って思ったの。

   でも、

   “ただいまー”って声がなくて、

   あれ?、って思って、

   で、

   頭をちょっと持ち上げて、玄関の方を見たの。

   そうしたら、

   そこにお祖父ちゃんが立ってたの。

   普通のポロシャツ姿で、麦わら帽子を頭の後ろへ外しててね、

   タオルを首に掛けて、軍手を片手に持って、

   で、

   じぃっと こっちを見ていたの。

   私、

   平静を(よそお)って、

   “あ、おかえり・・・。

    えっと・・・、

    あれ? 今日、仕事は?”って訊いてみた。

   そしたら、

   “有休だ。

    今日は朝から庭の草むしりだ”って。

   “えと、

    あ、そうなんだ・・・”

   “・・・”

   お祖父ちゃん、そのままこっちを見ていたんだけどね、

   でも、何も言わずに横向くと、

   廊下を歩いて自分の部屋に向かった。

   私、持ち上げていた頭をゆっくりと下ろした。

   リビングで仰向けになったまま、

   セミの大合唱の中に微かに聞こえる、お祖父ちゃんの着替えの音に、

   耳を澄ませていた。

   心臓バクバク状態で、気が気じゃなかった。

   やがて、

   お祖父ちゃんの、部屋を出る音が聞こえてきたわ。

   廊下を歩く音が、1歩1歩近付いてきた。

   寝たフリをしようか・・・とも思ったんだけどね、

   やめたわ。

   息をひとつ吐いて、体を起こすことにした。

   お祖父ちゃん、リビングに入ってきて言ったわ、

   “◎◎、

    お前、まさか妊娠してるんじゃないだろうな?”って』

  続きます》」

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