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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
233/292

233.「《『1階に着いて

「《『1階に着いて、エントランスをふたりで歩き始めたとき、

   不意にお父さんが訊いたわ、

   “どうする?

    まずはどこかに寄って少し休む?”って。

   私、

   “あ。

    うん、休みたい。

    なんか、ちょっと疲れちゃった・・・”って返した。

   お父さんの、

   まずは・・・って言葉で、少し気が重くなった。

   これから話すんだなぁ・・・って。

   お父さん、外への扉を押し開けながら言った。

   “分かった。

    じゃあ、寄るか。

    ・・・前と同じ店にする? それとも別の店?”

   “うん、ありがと。

    私、前と同じ店がいいな。

    あそこのオレンジジュース、美味しかった”

   “あの、トマトジュースみたいなヤツ?”

   “うん”

   “美味しかったの?”

   “うん。

    意外とサッパリしててね、美味しかった”

   “へぇ。

    じゃあ、オレも飲んでみるか・・・”

   “▽▽は、前は何を頼んでたっけ”

   “オレ?

    クリームソーダ”

   “なんか、

    ▽▽って、喫茶店ではいつもクリームソーダだよね”

   “えぇ? そうかぁ?”

   “そうだよ・・・”

   “うーん、

    そんなことないと思うけど・・・”

   “そんなことあるよ。

    じゃあ、他に何頼んでる?”

   “えーと、ちょっと待って・・・、

    あ、メロンソーダ”

   “ほとんど一緒じゃん・・・”

   “ほとんどじゃなくて半分だろ”

   “え、そっち?”

   そんな感じの、普段通りのお喋りをしながら、

   雑居ビルの間にある道をふたりで歩いていったわ。

   来たときは空に少しあった雲は、確かそのときにはもうどこかへ行ってしまっていて、

   上には、

   いつもの夏の、いつもの青い空が広がっていた。

   途中、会話が切れたタイミングで、

   どこで話し合うのかを訊こうとしたんだけどね、

   やめることにしたわ。

   “ねぇねぇ、そう言えばね・・・”って、

   すぐにまた別の話を始めたわ』》」


「《『そのイタリアンカフェのお店には、1時間近くいたんじゃないかな。

   ついでにお昼ゴハンも食べたから。

   で、

   お会計を済ませ、また駅に向かって歩き始めたとき、

   私、訊いてみた、

   “ねぇ、どこで話すの? またボート?”って。

   私ね、

   そこら辺のひと()の少ない広場とか公園でもいいよ、って言う気だったの。

   知らない人になら、ちょっとぐらい話を聞かれたって別に構わないし、って。

   そしたら、お父さんが言ったの、

   “それなんだけどさ、

    実はさ、

    そう言えば◎◎の街で良さそうな場所があったなって思い出して・・・”って。

   え・・・って思った。

   “どこ?”って訊いてみたら、

   “◎◎の街の奥に、新しく住宅地が出来たじゃん。

    そこにある橋の下”って。

   私、そっちにはほとんど行ったことがなくて、

   しかも、行ったと言っても、

   まだ住宅地のない、畑とか雑木林ばっかりの頃だった。

   だから、いまいちピンと来なかったの。

   橋って言われても、

   用水路に架かっているような、

   長さ1、2mくらいのものしか思い浮かばなかった。

   “どんな橋?”って訊いてみた。

   そしたら、

   “え?

    あぁ、

    橋って言うか、あれはスロープか。

    えっと・・・”って言って、手振りを交えて説明をし始めた。

   そこの新興住宅地ね、

   近くに土手・・・と言うか、丘があって、

   その丘の(ふもと)に沿って、道路が1本ずうっと延びているの。

   で、その麓に延びてる道を丘の上から(また)ぐように、

   立体交差の道路がちょうどその頃に新しく作られたんだけどね、

   その新しい立体交差の下なら落ち着いて話せるんじゃないか・・・って。

   周りにある住宅地も、住んでる人はまだあまりいないみたいで、

   近くを歩いてる人もほとんど見かけなかったし・・・って。

   私、聞いたときは少し不安だったわ。

   でも、

   考えてみたら、

   そこはウチからは結構距離があるし、私の通ってた小中学校とも区域外の場所だった。

   私の知ってる人がたまたま近くを通りかかるようにも思えなかったし、

   たとえ通りかかったとしても、

   セミがうるさくて、余程のことでもない限り話の内容は分からないだろうし、

   まぁ、大丈夫かな・・・って思って、オッケーした。

   実際に行って、この目で見てみて、

   それでダメそうなら、また別の場所を探せば良いだけだし・・・って。

   続けてお父さんに、

   いつ来てたの?、って訊こうとして、

   でも、途中でやめたわ。

   だって、

   たまたまそんな落ち着いて話せそうな良い場所を思い出しました、って、

   ちょっと都合の良すぎる話でしょ?

   探してくれたんだろうな・・・って思ったの。

   電車に乗って、私の街の駅まで行った私たちは、

   まずは私のウチに寄ることにしたわ。

   自転車で行くことにしたの。

   お父さんがお祖母ちゃんに見付かっちゃうと紹介しないといけないし、

   話が長くなって面倒なことになりそうだったから、

   お父さんには外で待っててもらうことにして、

   私だけウチに帰って、自分の自転車を出してきて、

   またお父さんのところへ戻った。

   自転車を漕ぐ役はお父さんに任せて、

   私は荷台に乗って、後ろからお父さんに掴まって、

   そうして、

   新興住宅地の方へ走り出したわ。

   自転車のふたり乗りって昔もダメだったんだけどね、

   ただ、その頃はあまりうるさく言われなかったの。

   空からの日差しは相変わらず強くて、うんざりするくらい暑かった。

   辺りの空気もムシムシしてて、肌にベトついた。

   でも、

   丘の麓の、舗装されたばかりの新しい道を走ってるときは風が当たって、

   涼しくて、

   とても心地よかった。

   お尻は、あまり心地よくなかったけどね』

  続きます》」

2023/02/26

クリームソーダって言えばソーダ部分はメロン味ってイメージを持っていたのですが、

さっき調べてみたら、

イチゴ味とかレモン味とか、他の味の場合もあるようです。

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