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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
218/292

218.「《『翌日、目を覚ましたのは

「《『翌日、

   目を覚ましたのは、いつもより遅めだったわ。

   9時くらいだったかな。

   外のセミがうるさかったけど、

   まだ眠かったから、そのまま布団の上で少しウトウトしてて、

   で、

   あー、気持ち(わる)・・・って思った瞬間、

   ハッとした。

   ちょっとしてから、

   あ、夜()かしのせいか・・・って胸を撫で下ろしたんだけど、

   でも、不安はあんまり晴れなかった。

   布団の上で、また悶々と考え出しちゃってね、

   仕方ないから起きることにしたの。

   1階に下りていくと台所にウサギのお祖母ちゃんがいて、ひと休みしてた。

   “お母さん、おはよー”って声をかけると、

   お祖母ちゃん、

   こっちを振り返ってから言ったわ、

   “あら、おはよう。

    なんか調子が悪そうじゃない。大丈夫なの?”って。

   ギクッとした。

   慌てて、

   “あ、えと、

    昨日、かなり遅くまでレポート書いてたから・・・”って返すと、

   お祖母ちゃん、

   “そう。

    あんまり無理しちゃダメよ”って言って、

   朝ゴハンを用意してくれたわ。

   私、その朝ゴハンを静かに食べながら、

   お祖母ちゃんの方をチラチラと見ていた。

   ひょっとして何か勘付かれているんじゃないか・・・とか、

   さりげなく、ちょっと口に出してみようか・・・とか、

   頭の中で色々と考えていたわ。

   でね、

   “ごちそうさまー”って言ってゴハンを食べ終えると、

   部屋に戻って支度して、家を出て、

   電車に乗って大学に向かったの。

   キャンパス内にある大学の図書館・・・の話は、いっか。

   取り敢えず、

   図書館の自習スペースでレポートを仕上げるついでに、妊娠についての本を借りて、

   ちょっと調べてみようと思ったの。

   けどね、

   生憎、途中で友達とバッタリ出会っちゃって・・・。

   で、仕方なく諦めることにして、

   そのまま図書館で友達と一緒にレポートを仕上げて、

   教授のところに行って、提出して、

   それから、

   適当な場所でちょっと立ち話をしたあと、友達とは別れて、

   バスに乗って、

   そうして、お父さんの大学に向かったの。

   友達には何も言わなかったわ。

   不安だったし、相談したい気持ちも多少あったんだけどね』

  続きます。

  あと、

  お母さんのスマホに付いてるアクセ、

  確かに、もしかしたら牙じゃなくて角かもしれません。

  訊いたことがないのでちょっと分からないです。

  ただ、お母さんのスマホ・・・と言うか携帯には、

  ワタシの小さい頃からずっと、そのアクセがぶら下がっていたような気がします》」

2022/7/25

連載の続きを長くお待たせしてしまって、この短さだとちょっと申し訳ないので、

おまけとして、

カットしたエピソードを載せておきます。


   キャンパス内にある大学の図書館に入ると、

   冷房が効いてるおかげで涼し・・・じゃなくて、ちょっと寒かったわ。

   その図書館ね、夏になるといつもそうだったの。

   半袖だと、ずっといると風邪を引いちゃいそうなくらい寒かったの。

   それで、

   冬は、逆に暖房が効き過ぎてて暑かったの。

   友達が、

   “あそこの図書館、

    設定できる温度がひとつしか存在しないんじゃないの”って言ってて、

   私、思わず笑っちゃったわ。

   でね、

   図書館に着いてから、

   取り敢えず、いつもの場所をチェックしに向かったの。

   いつもの場所・・・ってのはね、

   仲の良い友達と一緒に調べ物するとき、よく利用してた学習スペースのことで、

   4人用の丸テーブルがいくつか置かれていて、

   あとは、

   北向きの窓に沿って、長ーいカウンターテーブルが取り付けてあって、

   イスがポツポツと並んでる・・・って、そんな場所。

   そこに行けば、

   図書館に既に友達が来てるときは、だいたい会えたの。

   でも、

   その日は、友達は誰も来ていないみたいだった。

   少し、ホッとしたわ。

   そのまま、窓際のカウンターテーブルの空いてる席に行って、

   バッグを置いて、

   中からいつものカーディガンを出して、羽織(はお)って、

   そうして、

   ゆうべ、レポートを書いてるときに気になった箇所があったから、

   念のため、確かめておこうと思って、

   で、

   本棚が並んでる方へ、また引き返していったの。

   参考になりそうな本があったから、立ち読みして軽く確かめて、

   それから、

   その本を手に、

   次は、自然科学の本棚が並んでる場所へ向かったわ。

   そこに着いてからは、

   本棚の間を歩きつつ、分類の若い方から順に見ていって、

   それで、

   終わりの方の、医学書のコーナーに差し掛かったとき、

   前方の棚に、

   出産や育児に関する本が並んでるのを見付けて、

   私、足を止めたわ。

   取り敢えず、

   すぐ横の棚に並んでた、よく分からない医学の本をチェックしてるフリをしつつ、

   横目で、

   近くに人がいないか、確認したの。

   でね、

   その本棚の向こうにある別の棚で、何かの本を選んでる人がいたから、

   私、

   ときどき、そっちをチラチラ見ながら、

   本を読んでるフリを続けていたの。

   そうしたら、

   肩を、トントンって叩かれてね、

   思わず、

   ひえっ・・・て、変な声が出ちゃったわ。

   持ってた本も下に落としちゃってね、

   それを拾い上げようと屈んだら、後ろから友達の声がして、

   “ゴメンゴメン。

    そんなに驚くとは思ってなくて・・・”って。

   ため息をついた私は、

   本を棚に戻しながら言ったわ。

   “もー、心臓が止まるかと思った・・・。

    おはよ・・・”

   “おはよー。

    窓際の席にバッグが置いてあったから来てると思って。

    何の本、読んでたの?”

   “えと・・・。

    うん、ちょっと・・・”

   その後、

   友達と話をしながら、窓際の席に戻ったわ。

   何かね、

   友達はもうレポートは終わってて、提出済みで、

   で、

   サークルに顔を出す前に、

   涼みがてら、こっちに寄ってみたんだって。

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