208.「じゃあ、またあとでねー」
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│ 「じゃあ、またあとでねー」
│ 「うん、ばいばーい」
│ 玄関で手を振り、友達を見送ったワタシは、
│ そのドアを閉め、
│ 漫画部屋に戻りました。
│ 自分のコップを拾い上げ、
│ 次いで、
│ リビングテーブルにある友達のコップを、自分のものに重ね、
│ 漫画部屋を出て、台所に向かいました。
│ 重ねてある友達のコップを外して、シンクの上に置き、
│ 自分のコップには、
│ 冷蔵庫から出した りんごジュースを注いで、
│ また、漫画部屋に戻りました。
│ 勉強しなくちゃ・・・って思い、
│ 2階の自分の部屋に行き、
│ 昨日、友達が渡してくれたプリントを持ってきて、
│ 布団の中で勉強していたのですが、
│ いまいち集中できなくて、
│ しかも、気分も段々と悪くなってきたので、
│ やめることにしました。
│
│ 布団に仰向けになり、ひとりでボーッとしていると、
│ 門の開く音が聞こえました。
│ 次いで、
│ ドアの開く音がし、
│ お母さんの、「ただいまー」って声が聞こえました。
│ ワタシは、
│ 寝転がったまま、
│ 「おかえりー」って返しました。
│ ちょっとしてから、
│ 部屋の引き戸が少しだけ開きました。
│ 顔を覗かせたお母さんが、
│ 「あら、起きてたの」って言って、
│ 引き戸を更に開けて、部屋の中に入ってきました。
│ ワタシは体を起こしつつ、
│ 「あぁ、ごめん。
│ おかえり、って言ったつもりだったんだけど、
│ 声、ちっちゃかったかも」って返しました。
│ お母さんは、
│ 後ろ手で引き戸を閉めつつ、
│ 「いいの いいの。
│ 無理しないで寝てなさい。
│ それよか調子はどう? 少しは良くなった?」って訊きました。
│ ワタシは答えました。
│ 「あ、うん。
│ ちょっと前までは良かったんだけどね、
│ でも、
│ なんか、また・・・」
│ 「あら、
│ ジュースは飲めてなかったみたいけど、
│ ゼリーはちょっと食べれたのね」
│ 「うん、1つだけね。
│ 友達に少しあげたから。
│ あと、
│ ジュース、
│ それ、2杯目だから・・・」
│ 「あら、
│ じゃあ、今朝よりだいぶいいじゃない。
│ 点滴のおかげかしら。
│ 食欲は どう? 食べられそう?」
│ ワタシは、
│ 「あぁ、えーっと、」って少し考えたあと、
│ 「・・・分からないけど、
│ でも、もしかしたら食べれるかも」って返しました。
│ 「分かったわ。
│ じゃあ、
│ 一応、持ってくるね。
│ ミニトマトを買ってきたから、
│ 取り敢えずそれと、
│ あとは、冷奴でいいかしら」
│ 「あぁ、えっと、
│ ・・・うん、
│ じゃあ、それで」って返すと、
│ お母さんは、
│ 「そう、分かったわ。
│ なら、今から持ってくるから。
│ ちょっと待っててね」って言って、漫画部屋を出ていき、
│ 後ろ手で、戸を閉めました。
│ 足音が離れていきました。
│ 振り返ったまま、
│ 少しの間、閉まった戸を見ていたワタシは、
│ そのまま視線を、自分のすぐ後ろにある枕に落とし、
│ 次いで、体をゆっくり横たえました。
│ また仰向けになり、天井を見上げました。
│ 少しして、
│ ため息をひとつつきました。
│ 続きます。
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