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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
207/292

207.ありがと

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ 「ありがと。

│  もう、大丈夫・・・」

│ ワタシは、

│ そう言って、友達から離れようとしました。

│ 「・・・」

│ 「?

│  あの、もういいから。

│  ワタシ、大丈夫だから」

│ 「・・・」

│ 「ねぇ、聞いてる?

│  ホントにワタシ、もう大丈夫だから」

│ 「・・・」

│ 友達は、

│ 少し間を置いてから、

│ ようやく抱き締めていた手を離しました。

│ そうして、

│ 目元を拭ってるワタシの、ちょっと乱れてる髪を優しく整えてくれました。

│ ワタシは、

│ 鼻をすすったあと、

│ 「・・・ねぇ、

│  さっき、どうしたの?」って尋ねました。

│ 友達が、

│ ソファのほうへ戻りながら答えました。

│ 「ん?

│  あぁ、

│  一瞬、イタズラしてやろうと思ったんだけどさ、

│  そう言えば、

│  あんた、

│  この前のカラオケのとき、

│  私のこと、ずっと慰めてくれてたな・・・って思い出しちゃってさ、

│  だから、

│  まぁ、今日のところは勘弁しといてやるか・・・って」

│ 「・・・。

│  別に、

│  勘弁しなくても良かったのに・・・」

│ ワタシがそう言うと、

│ 友達は、ソファに腰掛けながら言いました。

│ 「いい、今日はやめとく。

│  それに、

│  元気じゃないあんたにイタズラしても、やり甲斐ないし」

│ ワタシは、少し笑いました。

│ 「ちょっとー、

│  やり甲斐ないって、どういう意味?

│  ひどーい」って返しました。

│ ちょっと笑った友達は、

│ テーブルの上から自分の麦茶を取ると、ひと口すすって、

│ そうして、

│ 少ししてから訊きました。

│ 「・・・じゃあ、

│  産まないことにしたのは、

│  自分の中に、そんなに強い気持ちがないから・・・ってこと?」

│ ワタシは、

│ 「うん。」って頷き、

│ 言葉を続けました。

│ 「さっきもちょっと話したけどね、

│  ホントはね、

│  もう少し、考える時間が欲しいの。

│  でも、そうするとね、

│  ワタシの場合、

│  多分、入院が必要になってくるでしょ?

│  何万円もお金かかっちゃうでしょ?

│  産むかどうかを悩むだけで、

│  しかも、

│  自分の中の気持ちがそんなに強くなさそうなのに、

│  家族に、そこまでの迷惑はかけられないなぁ・・・って思って」

│ 「・・・そっか」

│ 「うん・・・。

│  それにね、

│  もしかしたら、

│  妊娠悪阻、大変かもしれないし・・・」

│ ワタシがそう言うと、

│ 友達は、

│ 「まぁ、

│  確かに、もう既にかなりキツそうだもんね」って言いました。

│ 「うん・・・」って返したワタシは、

│ 次いで、

│ お母さんも・・・って言おうとしたのですが、

│ それはやめました。

│ 黙ってました。

│ 友達が、

│ ちょっとしてから訊きました。

│ 「・・・同意書は?

│  もう、貰ってきた?」

│ ワタシは、首を振りました。

│ 「ううん、まだ。

│  明日、貰ってくる」って返すと、

│ 友達が言いました。

│ 「私、

│  ネットで調べて、ちょっと気になることがあったんだけどさ、

│  その同意書って、

│  もしかして、相手の男のサインも必要になるんじゃないの?

│  あんたと、あんたの両親のサインだけで大丈夫なの?」

│ ワタシは答えました。

│ 「あぁ、えと、

│  先生ね、

│  ウチの病院では必要ない・・・って。

│  連絡が取れない場合、無くてもいい・・・って」

│ 「そっか。

│  なら、問題ないか」

│ 「うん・・・」

│ ワタシがそう返すと、

│ 友達は、残ってる麦茶をグイっと飲み干しました。

│ ワタシも、

│ 後ろのミシン台にあった、りんごジュースのコップを手に取り、

│ 少し飲みました。

│ 友達が言いました。

│ 「じゃあさぁ、

│  一段落ついたら、またふたりでカラオケ行かない?

│  この前、ぜんぜん歌えなかったし」

│ 「行く行くー。

│  夏期講習の終わりに・・・あ、

│  ねぇねぇ、

│  今日のプリントは? どこまで進んだ?」

│ 「あぁ、

│  ごめんごめん、忘れてた。

│  ちょっと待ってね。

│  今日の1限目は数学でさぁ、先生が・・・」

│ 続きます。

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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