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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
204/292

204.点滴が終わり

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ 点滴が終わり、

│ 迎えに来てくれたお母さんと一緒に病院を出ました。

│ 車に乗り込み、駐車場を出たあと、

│ 大通りに入って信号待ちをしていると、運転席のお母さんが言いました。

│ 「ウサギ、

│  今日からは、1階の漫画部屋をあなたの部屋にしなさいね。

│  2階のあの部屋だと、トイレに行くのが大変でしょ」

│ お母さんは、

│ 病院でワタシが点滴を受けている間に、

│ 漫画部屋のソファとかリビングテーブルとかを端に寄せ、

│ 布団を敷けるようにしてくれたみたいでした。

│ その話のあとは、

│ お母さんは、ワタシの今の具合についてちょっと尋ね、

│ それからは、

│ 車を走らせつつ、

│ お兄ちゃんが愚痴ってた、大学の研究室に関する話とか、

│ ご近所さんの飼い猫の話とか、

│ ワイドショーで紹介された変なお店や便利そうな収納グッズとか、

│ そういったことを色々喋ってくれました。

│ 本当は、ワタシは、

│ 病室で先生が話してくれたことを、お母さんにも聞いてもらいたかったのですが、

│ でも、

│ 前日の夜の、お母さんとお父さんの修羅場のことがあって気が引けたのと、

│ あとは、

│ 車に乗ったら気持ち悪いのが酷くなってしまったので、

│ 念のため、ポシェットからエチケット袋を出し、

│ 助手席で、そのお母さんの話をずっと聞いてました。

│ 家に着きました。

│ 漫画部屋の引き戸を開けると、

│ 中は、少し涼しくなってました。

│ お母さんが、

│ 家を出る前に、エアコンを入れておいてくれたようで、

│ 窓には、レースのカーテンが引かれていました。

│ ワタシは中に入り、

│ 引き戸を後ろ手で閉めました。

│ 車の中でお母さんが言っていた通り、

│ 部屋の中央のスペースは広く()けられていて、

│ そこには、

│ 三つ折りされた布団が置いてあり、上にタオルケットと枕が載ってました。

│ 元々そこにあった ソファとリビングテーブルは、

│ 両方とも、

│ 部屋の壁際の、漫画とかの棚の前に寄せられていました。

│ その寄せられたソファの前には、

│ 足を折り畳まれたミニテーブルが立て掛けてありました。

│ リビングテーブルのほうには、

│ 洗面器とタオル、消臭剤や消臭スプレーが2種類ずつ、

│ あとは、

│ きれいに畳まれているワタシのパジャマが置いてありました。

│ ワタシは、

│ パソコン机に兎のポシェットを置いたあと、

│ リビングテーブルのところへ行って、パジャマを手に取りました。

│ 匂いは大丈夫そうでした。

│ 次いで、

│ 消臭剤をひとつ手に取りました。

│ 無香料タイプと書かれていて、まだ未開封でした。

│ もうひとつも そうで、

│ 消臭スプレーも、2種類とも無香料でした。

│ お母さんの声が聞こえました。

│ 「ウサギー、入るわよー」

│ 「あ、はーい」

│ 持っているスプレーを置き、振り返ると、

│ 漫画部屋の戸が、ガラガラ・・・って開きました。

│ お盆を片手で抱え持ったお母さんが現れ、部屋に入ってきて、

│ 「りんごジュースと、

│  あと、もしかしたら食べれるかもしれないと思って、

│  ゼリーもちょっと持ってきたわ」って言いつつ、戸を閉めました。

│ ワタシは、

│ 「うん、ありがとう」って返しました。

│ 振り返ったお母さんは、

│ ワタシを見て、パソコン机を見て、

│ またワタシを見て、そのままこっちに近付いてきました。

│ 「お盆、

│  ちょっと持っててくれない?」って言いました。

│ ワタシは、

│ 「あ、うん」って返しつつ、

│ 差し出されたお盆を受け取りました。

│ お母さんは、

│ ソファに立て掛けてあるミニテーブルの前に行き、

│ しゃがみました。

│ 畳まれている脚をひとつひとつ戻していき、

│ 4つ脚にすると、

│ そのテーブルを両手で持って、立ち上がりました。

│ こっちを振り返り、

│ 「ウサギ、

│  どこら辺で寝るつもり?」って訊きました。

│ ワタシは、

│ 「多分・・・、」って口にしつつ、歩いていって、

│ 「ここら辺かな」って、

│ その場所を足で差しました。

│ ミニテーブルを抱え持ったお母さんが、

│ こっちに来ながら、

│ 「頭、廊下側よね?」って確認しました。

│ 「うん」って返しました。

│ 「・・・。

│  よい、しょ・・・っと。

│  ふぅ。

│  ・・・で、

│  あぁ、そう、

│  そこに置いて」

│ 「うん」って返したワタシは、

│ そのままお盆をミニテーブルに置きました。

│ お母さんが尋ねました。

│ 「それで、

│  あそこの消臭剤とか消臭スプレーとかは、どう?

│  平気だった?

│  一応、大丈夫そうなのを買ってきたんだけど」

│ 「あ、えと、

│  まだ試してない・・・」って返しました。

│ 「なら、

│  ちょっと試してみなさいね。

│  もしかしたら、ダメかもしれないから」

│ 「うん・・・」

│ 「あと、

│  あなたのパジャマね、

│  私、水洗いにしたんだけどね、

│  ついうっかり、他の洗濯物と一緒に干しちゃったのよ・・・。

│  もし匂いが移ってて、ダメそうな――」って、お母さんが言ったので、

│ ワタシは、

│ 「あぁ、

│  大丈夫だった。

│  ワタシ、

│  さっき、ちょっと嗅いでみた」って言いました。

│ 「そう、良かったわ。

│  じゃあ、

│  私、ちょっと出掛けてくるから」

│ 「うん、分かった。

│  何時くらいに帰ってくる?」

│ お母さんは、

│ 片手を頬に当て、顔を斜めに傾けました。

│ 「そうねぇ、

│  多分、5時くらいかしらねぇ・・・」って言いました。

│ 「うん、分かった」

│ 「ついでに、

│  何か、買ってきてほしいものある?」

│ 「えーと・・・、

│  ううん、大丈夫」

│ 「そう。

│  じゃあ、出掛けてくるわね。

│  何かあったら、すぐに電話しなさいね」

│ 「はーい」

│ ワタシが返事をすると、

│ お母さんは、

│ 出入り口の引き戸を開け、部屋を出ていきました。

│ ひとり、布団に仰向けになり、

│ 外で鳴くセミたちの声を耳にしつつ、ぼんやり考え事をしていると、

│ しばらくして、

│ 枕元のスマホが、ヴーッ、ヴーッ・・・と唸りました。

│ そちらに顔を向けたワタシは、

│ 充電スタンドからスマホを外して、来ているメッセージを確認しました。

│ 友達から、スタンプが届いてました。

│ ホウキに(またが)った魔女で、

│ その背景には、“Coming soon!”って書いてありました。

│ ちょっと笑いました。

│ 寝転がったままスマホを操作し、友達にメッセージを返しました。

│ 《カキコ、お疲れー》

│ 《そっちも、お疲れー。

│  今日も暑かったー。

│  授業中、

│  もう、ずーっと左うちわ状態だった。

│  手をパタパタさせ過ぎて、すっかり筋肉痛だわ。

│  さっさとエアコン入れやがれ》

│ 《ワタシの部屋、

│  今、エアコン効いてて涼しいよ?

│  早くおいでよ》

│ 《え?

│  あんたの部屋って、エアコンあった?》

│ 《ワタシ、

│  今日から1階の漫画部屋に移ったの》

│ 《あー、

│  2階だと大変そうだもんねー。

│  行く行く、すぐ行くー。

│  今宵のホウキは、ひと味違うぞ》

│ 《今宵じゃ、ワタシのウチから いなくなるときでしょ?

│  そんなに全力で去らなくてもいいじゃん》

│ 《あはは、確かにー。

│  あ、バス。

│  じゃ、行くから》

│ 《うん、待ってるー》

│ その後、他の人から来たメッセージを返していると、

│ また、友達からの着信がありました。

│ 確認すると、

│ 刀を構えたお侍さんスタンプと、

│ 《×47》と書かれたメッセージでした。

│ ワタシはスマホを操作し、

│ 友達にメッセージを返しました。

│ 《こら! 討ち入りを企てるな笑》

│ 《ちぇっ》

│ 続きます。

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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