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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
200/292

200.夜の10時51分になりました

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ 夜の10時51分になりました。

│ ベッドに寝転び、壁掛け時計を見上げていたワタシは、

│ 体を起こしました。

│ 勉強机のところに行き、

│ イスを引いて腰掛け、

│ 机の上にある充電スタンドから、スマホを外しました。

│ 《終わったー、一応だけど》ってメッセージを打ち、友達に送ると、

│ 一瞬で既読になりました。

│ スタンプが2コ、返ってきました。

│ 《お嬢様、お疲れ様でございました》スタンプと、

│ 目をウルウルさせている《良かった》スタンプでした。

│ ちょっと笑いました。

│ 何から説明しようか、迷っていると、

│ 友達からのメッセージが来ました。

│ 《かなり遅かったけど、やっぱ()めたの?》

│ ワタシは、

│ 少し考えたあと、

│ 《揉めたー。

│  でも、遅くなったのは他に理由があって》って返しました。

│ 《他に理由? 何かあった?》って、すぐに友達から来て、

│ 続けて、

│ 《あ、

│  私、遅かったのを責めてるわけじゃないよ。

│  ちょっと気になっただけ》って送られてきました。

│ ワタシは、

│ また少し笑ったあとで、友達にメッセージを返しました。

│ 《ワタシ、

│  話の途中で気分が悪くなって、

│  それで、急いでトイレに駆け込んだの。

│  長い時間、ひとりでそこで戻してて・・・》

│ 《えー。

│  長い時間って、どれくらい?》

│ 《30分くらいかな。

│  もしかしたら、もっと長かったかも。

│  で、

│  ちょっと落ち着いてきて台所に戻ったら、

│  お母さんに、

│  今日はもうお風呂に入って休みなさい・・・って言われて、

│  それで、お風呂に入ろうと思ったんだけどね、

│  浴室の匂いを()いだ途端、うっ・・・てなって》

│ 《あちゃー》

│ 《でね、

│  お風呂に入るのを諦めて部屋に戻ったら、お母さんが来てね、

│  体、拭いてあげるわ・・・って言ってくれて、

│  持ってきた手拭いタオルで、ワタシの体を()いてくれたの。

│  ワタシ、

│  拭いてもらってる最中に、段々と申し訳ない気持ちになってきちゃって、

│  自然と泣けてきちゃって・・・》

│ 《別に、あんたが悪いわけじゃないじゃん。

│  仕方ないよ・・・》

│ 《お母さんも、そう言ってくれたんだけどね、

│  でも、すごく迷惑かけちゃってるなぁ・・・って。

│  で、

│  体を拭いてもらったら、少し気分もスッキリしたから、

│  それで、

│  今まで横になって休んでたの。

│  連絡遅れてゴメンね》

│ 《ううん、

│  私、そんなの全然気にしてないけどさ、

│  でも、

│  そっかー、大変だったんだ。

│  で、

│  妊娠のこと、お父さんに伝えたんでしょ?

│  どうなったの?

│  なんか、

│  揉めた・・・って、さっき言ってたけど》

│ 《うん、揉めたー。

│  ワタシが妊娠したことについては、

│  お父さん、怒らなかったんだけどね、

│  でも、

│  彼がいなくなって消えたことを話した途端、すごくキレちゃって、

│  テーブルを思いっきり叩いて、

│  “ふざけるな!”って大声で怒鳴って・・・。

│  ワタシ、

│  あんなお父さん、初めて見た。

│  怖かった》

│ 《そりゃー、普通そうなるよ。

│  で、言ったわけ?》

│ 《言えるわけないじゃん》

│ 《そっかー》

│ 《お父さんには、

│  “堕ろしなさい”って言われた。

│  “明日、病院に行ったとき、

│   先生に言って、同意書を貰ってきなさい”って》

│ 《お母さんは?》

│ 《お母さんは、

│  “ワタシが産みたいって言ったら産ませる”って言ってた。

│  “当然でしょ?”って》

│ 《もしかして、

│  お父さんとお母さんで修羅場になった、とか?》

│ 《なったなった。

│  で、

│  その途中なの、ワタシの気分が悪くなったのは。

│  すぐにトイレに駆け込んで、ずっと戻してて、

│  それで終了になったの》

│ 《そっかー。お疲れさまー》

│ 《うん。

│  今日は色々な事があってさ、

│  ワタシ、もう疲れちゃったよ・・・》

│ 《うんうん。

│  今日は早めに寝て、ゆっくり休んでよ、

│  明日の第2ラウンドに備えて》

│ 《ちょっとぉ、

│  最後に気が滅入ること書かないでよ・・・。

│  ワタシを励ましてくれるんじゃなかったの?》

│ 《あはは、ごめんごめん。

│  じゃあ、

│  明日のカキコは、休み? だよね?》

│ 《うん。

│  病院に行って、

│  また点滴受けないといけないし・・・》

│ 《終わるの何時?》

│ 《予約の時間が11時だから、

│  終わるの、2時過ぎくらいかな》

│ 《じゃあ、

│  明日はカキコが終わったら、チョクであんたの家に行くから》

│ 《うん。

│  ワタシ、待ってる》

│ 《あれ?

│  なんか、今日は やけに素直じゃん。

│  どした?

│  そんなに私が恋しくなった?》

│ 《最初はね、

│  “そんなに無理しなくてもいいよ”って書いて、送ろうとしたの。

│  でも、

│  逆の立場だったら、ワタシも絶対会いに行くだろうな・・・って思って、

│  で、消しちゃった》

│ 《あ、来てくれるんだ》

│ 《当たり前でしょ》

│ 《そっか。サンキュ。

│  あぁ、それと、

│  ひとつ、訊くのを忘れてたんだけどさ、

│  歯磨き、って平気?

│  ツワリのせいで気持ち悪くなってしまって、なかなかできない、って人の記事、

│  ネットで読んだけど》

│ 《うん、

│  実はかなりしんどい・・・》

│ 《なんかね、

│  そういうときは、

│  歯磨き粉を匂いの少ないものに変えてみたり、

│  もしくは、

│  歯磨き粉を使わないで、水だけで磨いたりすると良いかもしれないんだって。

│  あとは、

│  使う歯ブラシを小さくしてみたり、

│  それでもダメなときは、

│  マウスウォッシュ液で簡単に済ませる人もいるみたい。

│  明日、

│  学校からの帰りにドラッグストアに寄って、買ってきてあげる》

│ 《ありがと。

│  でも、大丈夫。

│  今日、ワタシが点滴を受けてる間に、

│  お母さんが買ってきてくれたから。

│  もしかして、

│  勉強時間を削って、他にも色々と調べてくれてたりするの?》

│ 《勉強時間は削ってないよ。

│  もともと観るつもりだったドラマの時間に調べてたから》

│ 《でも、

│  録画したのを、あとで観るつもりなんでしょ?》

│ 《大丈夫 大丈夫。

│  睡眠時間のほうを削るから》

│ 《あ、お肌に響くよ?》

│ 《じゃあ、

│  学校に行くときの電車の中で観る。問題なーし》

│ 《そっかー、分かった。

│  今日はありがとね。ちょっと元気出た》

│ 《じゃあ、また明日ね》

│ 《うん、また明日》

│ 続きます。

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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