表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Summer Echo  作者: イワオウギ
V
198/293

198.隣に座っていたお母さんが立ち上がり

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ 隣に座っていたお母さんが立ち上がり、そのまま台所を出ていきました。

│ お父さんが言いました。

│ 「電話をかけろ!、××に!

│  今すぐ!」

│ ワタシは言いました。

│ 「えと・・・、

│  電話、繋がらなくなっ――」

│ 「は? 着信拒否か?

│  だったら、メールかメッセージを送れ!

│  今すぐ××に電話をかけろと言え!」

│ そのとき、

│ ワタシの後ろで、お母さんの声がしました。

│ 「着信拒否じゃないわよ。

│  その人の電話番号ね、もう使われてないんですって」

│ お父さん、すぐに言い返しました。

│ 「番号が変わってても、メールとかなら送れるだろ」

│ お母さん、

│ ホウキで床を掃きながら答えました。

│ 「そこら辺のことは、だいたい私が訊いておいたわよ。

│  連絡、まったく取れないんですって。

│  その人の友人とか家族、バイト仲間の連絡先も知らないし、

│  実家のある場所も分からない、って言ってたわ」

│ 「・・・ウサギ、そうなのか?」

│ お父さんが、そう訊きました。

│ ワタシは、

│ 下を向いたまま、黙って頷きました。

│ お父さん、

│ 再びテーブルを強く叩いてから言いました。

│ 「・・・ふざけやがって。

│  興信所に頼んで、すぐに見付け出してやる」

│ お母さんが言いました。

│ 「興信所に頼んでもいいけど、

│  ネットで軽く調べてみた感じだと、

│  こういう場合、弁護士さんにお願いすることが多いみたいよ。

│  ほら、足上げて」

│ 「あぁ、そうか。

│  それで探してもらって、慰謝料を請求するわけか」

│ 「そうみたい。

│  ただ・・・、

│  ほら、反対の足。

│  ・・・相手の男が自分の子であることをなかなか認めないケースがあって、

│  そうすると、慰謝料の請求も一筋縄ではいかないみたいよ。

│  足、もういいわよ」

│ 「なるほどな。

│  そこら辺のことについては、

│  弁護士の先生ともよく話し合っておかないと。

│  正直、お金をいくら貰おうと許す気にはなれんが、

│  ただ、そうは言っても、

│  診察や堕ろすときの費用だけは、何があっても払ってもらわんとな。

│  で、

│  弁護士の先生には、もう連絡したのか?」

│ 「まだよ。

│  でも、

│  良さそうなところをいくつか見付けて、メモしておいたわ。

│  それと・・・」

│ 「それと、なんだ?」

│ お父さんが訊き返すと、

│ 床を掃いていたホウキの音が止まり、

│ それから、

│ ワタシに向けられた、お母さんの声が聞こえました。

│ 「一応、

│  ウサギの気持ちも聞いてみないと・・・」

│ お父さんが、お母さんに言いました。

│ 「ウサギの気持ち?

│  慰謝料を請求する気があるのかどうか、ってことか?

│  確かにウサギの気持ちも大事だけどな、

│  でも、

│  病院の費用を実際に負担するのは、親であるオレたちなんだぞ?

│  ウサギに請求する気があろうが無かろうが、

│  請求してもらわないと、こっちが困る」

│ 「そっちの問題は・・・、

│  そうね、確かにそうだわ。

│  でも・・・」

│ 「・・・でも、なんだ?」

│ 「もうひとつの問題は、

│  ウサギの気持ちをちゃんと聞いてからにしないと・・・」

│ 「もうひとつの問題って、なんだ?

│  どういうことだ?」

│ お父さんがそう尋ねると、

│ お母さんが言いました。

│ 「・・・妊娠した赤ちゃんを堕ろすのかどうか、って問題よ」

│ 続きます。

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ