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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
187/292

187.それからは、先生は

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ それからは、先生は、

│ パソコン画面を見ながら、

│ ワタシの年齢や血液型といった基本的なことから訊き始めて、

│ 次に、

│ 病歴、服用中の薬、アレルギー、

│ 基礎体温の記録の有無、

│ 妊娠検査薬で調べたかどうか、その陽性を確認したのはいつか、

│ ツワリの具体的な症状、

│ お腹の、おへそよりも下の方は痛まないか・・・などを質問し、

│ ひとつひとつ確認していきました。

│ そうして、

│ 先生が、ワタシの結婚状況について尋ねたときでした。

│ ワタシが、

│ 未婚で、結婚の予定も無いことを伝えると、

│ 先生が手を止め、こっちを向きました。

│ ワタシの顔を見て、

│ 少ししてから尋ねました、

│ 「・・・ちょっと答えにくい質問かもしれないんだけどさ、

│  お相手の人、今日はどうしたの?」って。

│ ワタシは、顔を俯けました。

│ 「えと、その・・・」って、口ごもってしまいました。

│ しばらくすると、

│ ワタシの代わりにお母さんが答えてくれました。

│ 「あの、逃げられちゃったみたいで・・・」

│ 先生が、

│ パソコンのキーボードを、少しカタカタと鳴らしました。

│ そのあと、

│ 「・・・どこに行ったか分からないし、連絡も取れなくなった、

│  そういう認識で合ってますか?」って訊きました。

│ お母さんが言いました。

│ 「はい。

│  ・・・だよね?」

│ ワタシが黙って頷くと、

│ 先生が、再びキーボードを打ち始ました。

│ そうして尋ねました。

│ 「警察か弁護士には相談しましたか?」

│ お母さんが答えました。

│ 「いえ、まだです。

│  私も、

│  今朝、ウチの娘から聞いたばかりでして・・・。

│  それに、まだ妊娠が確定したわけではありませんから・・・」

│ 「今後、相談の予定は?

│  あぁ、

│  これからの検査で娘さんの妊娠が確定したと仮定して、ですが・・・」

│ 「主人には、まだ何も伝えてないんです。

│  なので、

│  今ここで、はっきりとは答えられません。

│  ただ、

│  多分、そうなると思います」

│ 「警察か弁護士に相談することになるだろう・・・ということですね?」

│ 「はい」

│ 「分かりました」

│ そう言った先生は、更に訊きました。

│ 「出産するかどうかについては、

│  方針未定の欄にチェックが入ってますが、

│  これも、

│  検査の結果を見て、

│  それから家族で話し合って決める・・・ということですね?」

│ 「はい。

│  娘には、そうしようと言ってあります」

│ 「そうですか。

│  ウサギさん自身は、どう思っているんですか?」

│ 急に話が振られ、驚いたワタシは、

│ 顔を上げ、先生を見ました。

│ 「え?

│  あの、どういう・・・」って訊き返しました。

│ キーボードを叩いていた先生は、

│ 手を止め、顔をこちらへ向けて言いました。

│ 「あぁ、ゴメンね。

│  ちょっと僕の言葉足らずだったよね。

│  仮に・・・の話だけれどね、

│  自分がいま本当に妊娠している、としたときに、

│  産む意思があるのかどうか・・・ってこと。

│  ウサギさんの、率直な気持ちを知りたくてさ」

│ 「・・・」

│ 「今のところ・・・でいいから。

│  あとで変えてもいいから」

│ ワタシは、ゆっくり下を向きました。

│ 少ししてから、首を振りました。

│ 「分からないです・・・」って答えました。

│ 先生が訊き返しました。

│ 「分からない?」

│ ワタシは答えました。

│ 「はい。

│  産んではいけない気がするし、

│  でも、

│  堕ろすのも、なんだかちょっと・・・」

│ 「産んではいけない・・・ってのは、

│  どうしてなの?」

│ 「ワタシは、まだ高校生です。

│  働いてません。

│  収入がありません。

│  それに、

│  産んで育てるとなると、ワタシひとりでは絶対に無理だと思います。

│  家族に、かなりの迷惑がかかります」

│ 「迷惑ってのは?」

│ 「お金がかかってしまうし、

│  赤ちゃんの世話も、色々と手伝ってもらわないといけないだろうし・・・」

│ 「妊娠中のあなたも世話してもらわないといけないだろうし、

│  それに、産まれてからの赤ちゃんの夜泣きだって大変だよね?」

│ 「あ。

│  はい、気が付きませんでした・・・」

│ 「堕ろすのも、なんだかちょっと・・・ってのは、

│  少し抵抗がある・・・って意味で合ってるかい?」

│ 「はい、合ってます」

│ 「分かった。

│  じゃあ、次の質問へ移らせてもらうね」

│ 「はい」

│ 続きます。

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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