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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
186/293

186.廊下のイスに腰掛け

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ 廊下のソファに腰掛け、お母さんと一緒に待ってました。

│ 向かい側には診察室の扉があり、

│ それには、大きく《1》って書かれてました。

│ 閉まってました。

│ ワタシは、

│ 膝の上で手を軽く握り、下を向いて座ってました。

│ 震える息のまま、

│ 少しずつ慎重に空気を吸って、少しずつ慎重に吐き出してました。

│ それを、

│ ただひたすら、1回1回繰り返してました。

│ 緊張してました。

│ 途中、息が つっかえてしまって、

│ 口元を手で押さえ、

│ ゲホッ、ゲホッ・・・って()き込みました。

│ その手を膝に戻し、

│ ハァ、ハァ・・・って、呼吸を整えていると、

│ ワタシの手の上に、

│ お母さんの手が、そっと重ねられました。

│ 「大丈夫?」って訊かれました。

│ ワタシは、

│ そのまま少し、呼吸を整えました。

│ そうして、無言で頷きました。

│ それからちょっとすると、

│ 向かい側の診察室の扉が、ガラガラ・・・って半分くらい開きました。

│ 女の看護師さんが顔を覗かせ、ワタシを見て、

│ 「大変お待たせしました。ウサギさんですね?」って訊きました。

│ ワタシは慌てて、

│ 「あ、えと・・・、

│  は、はい、そうです」って答えました。

│ 看護師さんは、続けて、

│ 「そちらの方は、ウサギさんのお母様ですか?」と訊きました。

│ 『そうです』って、

│ お母さんと一緒に答えました。

│ 看護師さんは、

│ 「分かりました。

│  では、お母様もご一緒にお入りください」って言って、扉を更に開けてくれて、

│ そうして脇へ寄って、

│ ワタシたちが通れるように、道を()けてくれました。

│ ワタシは、

│ 息をひとつ吐いたあと、立ち上がりました。

│ お母さんが、

│ 少ししてから、

│ 「・・・ほら、行きましょ」って言いました。

│ 呼吸を整えていたワタシは、

│ 「・・・うん」って頷き、顔を上げました。

│ 心臓をバクバクさせ、

│ 緊張し過ぎで吐きそうになってるのを(こら)えつつ、

│ 診察室の中に入っていきました。

│ 続きます。

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ 後ろで、扉の閉まる音が聞こえました。

│ 診察室は、白いデスクが横の壁に寄せられていて、

│ そこで、イスに座った男の先生が、

│ デスク上のパソコンの画面を見ながら、キーボードをカタカタと叩いてました。

│ 「待たせちゃってゴメンねー。

│  そこのイスに座っててくれるかなー。

│  もうすぐ始めるからねー。

│  近くに緑色のカゴがあるでしょ。

│  軽い荷物は、そこ使っていいからねー。

│  お連れの方も隣に座ってねー。

│  もうちょっとだからねー。待っててねー」

│ そう言われたワタシとお母さんは、

│ 先生の近くに用意されていたイスに腰掛けました。

│ 先生が、

│ パソコンのマウスをカチカチさせつつ、ワタシに尋ねました。

│ 「随分と緊張してたんだって?」

│ 「え? ・・・あ、

│  は、はい、

│  緊張してました・・・。

│  今も、緊張してます・・・」

│ 「そうみたいだね。

│  まぁ、

│  ここに初めてくる人、みんな少なからず緊張してるから、

│  そんなに気にしないで」

│ 「あ、

│  はい、分かりました・・・」

│ そう返すと、

│ 先生が、

│ 「・・・よし、

│  じゃあ、始めようか。」って言って、イスを回し、

│ こっちに向き直しました。

│ そうして、

│ ワタシの顔を見るなり言いました。

│ 「おや、

│  どことなくだけど、ちょっと(やつ)れたような顔をしているね。

│  ダイエットじゃないよね?

│  食事とか水分は、しっかり摂れてる?」

│ ワタシは答えました。

│ 「あ、えと、

│  両方とも、あんまり摂れてないです・・・。

│  もしかしたら、妊娠悪阻なのかも・・・って」

│ 「妊娠悪阻かどうかは、

│  検査をして、その結果を見てみないと僕の方からはなんとも言えないけど・・・、

│  でも、ということは、

│  今、相当につらい状態・・・ってことだよね?」

│ 「はい、つらいです・・・」

│ 「よし、分かった。

│  じゃあ、まずは問診票に書いてくれた内容を改めて確認していくね」

│ 「はい、お願いします」

│ 続きます。

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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