174.彼のアパートに着きました
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│ 彼のアパートに着きました。
│ あ、さっきの続きです。
│ 彼の部屋は、2階の奥のほうでした。
│ 階段を上ったところで友達と別れ、
│ ひとりで、彼の部屋の前に行きました。
│ 呼び鈴を押しました。
│ しばらくして、もう一度押しました。
│ ドアは開きませんでした。
│ 階段のところで様子を見守ってくれていた友達が、
│ 少ししてからワタシのところに来て、
│ 『いない?』って訊きました。
│ 『多分・・・』って返しました。
│ 『ホントに?
│ 実は、いるんじゃないの?』
│ 『物音が聞こえないし、多分・・・』
│ 『でも、
│ 駐車場にあったじゃん、車は』
│ 『・・・。
│ 歩いて出かけたのかも、しれないし・・・』
│ ワタシが、
│ 声を小さくし、そう答えると、
│ 友達は何かを言いかけ、
│ そうして、ため息をつきました。
│ ワタシに、
│ 『・・・カギは? 持ってる?』って尋ねました。
│ 『え?』
│ 『部屋のカギ。
│ あんた、渡されてないの?』
│ 『あ。
│ うん、渡されてない。持ってない』
│ ワタシがそう返すと、
│ 友達は、
│ 『そっか・・・』って呟いたあと、
│ いつものように顎に右手を当て、じっと何かを考え始めました。
│ ワタシは言いました。
│ 『ねぇ、そろそろ行こうよ。
│ 他の人に見られたら、変に思われちゃう・・・』
│ 『あぁ、
│ そういや、そっか。そだね』
│ 友達は、
│ そう口にしつつ、顔を上げました。
│ 彼の部屋に近付いていき、呼び鈴を押し、
│ すぐに耳をドアに押し付けたので、
│ ワタシは、
│ 慌てて友達の手を掴んで、引っ張りながら、
│ 『ねぇ、早く行こうよ。
│ 近所の人に見られたら怪しまれちゃう』って言いました。
│ 友達は、
│ 少しして、ようやく耳をドアから離しました。
│ そうして、
│ 息をひとつ吐き、
│ 髪を手で簡単に整えたあと、
│ 階段のほうを振り向き、
│ そのまま、何も言わずに歩き出したので、
│ ワタシもついていきました。
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│ さっきコメントに、
│ 《そんなに全部書かなくて良いよ。必要な事柄だけで良いよ》ってあって、
│ ワタシも、最初のうちはそう思っていたのですが、
│ ただ、
│ そうすると、
│ どれをどう書けばいいか迷ってしまって、結局時間がかかってしまいそうなのと、
│ 状況をなるべく正確に伝えたかったので、
│ もう、全部書くことにしました。
│ かなり長くて、すみません。
│ あと、
│ ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
│ 続きです。
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│ 階段を下りたワタシたちは、
│ アパートの敷地内を歩いて、建物の反対側へ回りました。
│ 2階の彼の部屋を見上げると、
│ いつも通り、窓にレースのカーテンが引かれていました。
│ 明かりは、点いていませんでした。
│ 暗かったです。
│ そのときの時間は、
│ 確か、まだ6時ちょっと前でしたが、
│ 空が曇っていたので、
│ 外は、それほど明るくはありませんでした。
│ 2階の窓を見上げたまま、
│ 友達がワタシに尋ねました。
│ 『さっき、あんたが彼氏に送ったメッセージ、
│ 未読のまま?』
│ ワタシは、
│ スマホを見て言いました。
│ 『・・・うん。
│ まだ、読んでないみたい・・・』
│ 『・・・彼氏の家、電話は置いてないの?
│ スマホだけ?』
│ 『うん、
│ スマホだけ・・・』
│ 『なら、
│ 彼氏の友達か知り合い、家族でも良いけど、
│ 誰か知らない? 連絡つかない?』
│ ワタシは、
│ ちょっと考えてから答えました。
│ 『彼の友達なら、何人か会ったことあるけど、
│ でも、連絡先とかは・・・。
│ 話したこともほとんどないし・・・』
│ 『そっか・・・。
│ じゃあさ、
│ 彼氏の行きそうなところは?』
│ 『行きそうなところ?』
│ 『うん。
│ たとえば・・・だけど、
│ 休みの日とか、時間があってヒマな日とかは、
│ いつもどこに行ってるわけ?』
│ 『あぁ・・・、えっと、
│ 駅前にあるパチスロのお店か、
│ あとは、その近くにある漫画喫茶かな・・・』
│ 『じゃあ、
│ 今から行って、探してみようよ。
│ そんなに遠くないし』
│ ワタシ、ゆっくり下を向きました。
│ そうして、
│ ちょっとしてから、
│ 『・・・いいよ、もう明日にする。
│ 会えないと思うし・・・』って返しました。
│ 友達が、
│ ため息をついてから訊きました。
│ 『・・・なに、どこか具合でも悪いわけ?
│ それとも、
│ これから何か用事でもあるの?』
│ 『そういうわけじゃ、ないけども・・・』
│ ワタシがそう返すと、
│ 友達が言いました。
│ 『だったら、行くだけ行ってみようよ。
│ ちょっとだけ探してみて、
│ それで見付からなかったら諦めて帰ろ?
│ ね? そうしよ?』
│ ワタシ、
│ 下向いたまま、黙ってました。
│ でも、
│ 少しして、
│ 『うん・・・』って頷きました。
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