172.続きです。夜11時の少し前
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│ 続きです。
│ 夜11時の少し前、
│ お兄ちゃんに車を運転してもらって、彼に言われたコンビニに向かいました。
│ 本当は、ひとりで行くつもりだったのですが、
│ 家を出る前に、お父さんに見付かってしまって、
│ それで、
│ 『もう遅いから明日にしなさい』とか、
│ 『友達の相談って、
│ メッセージとか電話じゃダメなのか』とか、玄関で散々言われてて、
│ そのやり取りを見ていたお兄ちゃんが、
│ 『だったら、オレが車で送り迎えするよ。
│ それならいいでしょ?』って助け舟を出してくれて、
│ それで、
│ お父さん、しぶしぶOKしてくれました。
│ コンビニに着くとお兄ちゃんが、
│ 『オレ、
│ 相談が終わるまで、ここで待ってるから』って言いました。
│ ワタシが、
│ 『相談、結構長くなると思うし、
│ ここでずっと待ってもらうのも悪いから、帰っていいよ。
│ 終わったらメッセージ送る』って、いくら言っても、
│ お兄ちゃん、
│ 『いや、
│ オレ、ここで待ってる』って言って、ちっとも帰ろうとしなかったので、
│ それで仕方なく、正直に、
│ 『実は友達じゃなくて、彼に会うの』って伝えました。
│ お兄ちゃん、
│ ワタシが誰かと付き合っていることを知らなかったみたいで、
│ ちょっと驚いた顔をしました。
│ そして、
│ 前を向いたまま、何かをじっと考えたあと、
│ 『なら、この車の中で待ってろよ。
│ お前の彼氏が来たら、すぐに降りればいい』って言いました。
│ ワタシは、本当はそれも断りたかったのですが、
│ でも、いくら言ってもダメな気がしたので、
│ それで、車の中で待つことにしました。
│ お兄ちゃんがコンビニに行って買い物してる最中、
│ 車に残ったワタシは、スマホで彼にメッセージを打ちました。
│ 《今、コンビニに着きました。
│ お兄ちゃんが車を運転してワタシを送ってくれて、
│ その車の中で待ってます》
│ 少しすると、
│ お兄ちゃんがコンビニの袋を持って車に戻ってきて、
│ 運転席に座りながら、ワタシに言いました。
│ 『適当に飲み物買ってきた。
│ 好きなほう、取っていいよ』
│ 渡された袋を覗き込むと、
│ 中には、
│ いつもの紅茶じゃなくて、麦茶とレモンスカッシュが入ってました。
│ すぐに、お兄ちゃんの顔を見ました。
│ お兄ちゃん、
│ 前を向いたまま、
│ 必死に、なんでもないフリをしてました。
│ ちょっと笑ってしまいました。
│ お礼を言って、麦茶を選びました。
│ お兄ちゃん、
│ 少ししてから、何も言わずにレモンスカッシュを取りました。
│ しばらくの間、
│ 車の中で、ふたりで黙って飲み物を飲んでいると、
│ お兄ちゃんが言いました。
│ 『話ってすぐ終わるよな? 長くなったりしないよな?
│ オレ、
│ 今日中にお前を連れて帰らないと、親父に怒られちゃうんだけど』
│ ワタシ、
│ 『・・・なるべく早く終わらせるようにする』って返しました。
│ お兄ちゃん、
│ 『分かった』って言って、また無言になりました。
│ その後、
│ 20分くらい経っても、彼は来ませんでした。
│ スマホに連絡も来ていなかったので、
│ 《来れなくなったの?》って、彼にメッセージを送りました。
│ すぐに返事が来ました。
│ 《わりぃ、行けなくなった》
│ ワタシは、
│ 《分かった。
│ なら、明日は?》って送りました。
│ ちょっとしてから、メッセージが返ってきました。
│ 《明日なら、多分》って書いてありました。
│ ワタシは、
│ 《じゃあ、
│ 大事な話、明日にする。
│ 急に無理なお願いをしてしまって、ごめんなさい》って書いて、
│ 次いで、会う場所と時間を決め、
│ そのあと、
│ 運転席にいるお兄ちゃんに、
│ 『なんか、来れなくなったみたい』って伝えました。
│ お兄ちゃん、何も言いませんでした。
│ 前を向いたまま、黙ってて、
│ 車も、発進させようとしませんでした。
│ ワタシが、
│ 少ししてから、
│ 『早く帰らないと、お父さんが・・・』って言うと、
│ お兄ちゃん、ようやくシートベルトを締め始め、
│ 黙って車を発進させました。
│ ワタシは、
│ スマホで友達にメッセージを送り、報告しました。
│ すごく怒ってる感じでした。
│ 《アイツ、絶対に勘付いてる》ってメッセージが送られてきました。
│ 《そうかも》って返しました。
│ 更に続きます。
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