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Summer Echo  作者: イワオウギ
V
171/292

171.「それには、こんなことが書かれていた」

「それには、こんなことが書かれていた」


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

┃ ワタシは高校生です。

┃ タイトルにも書いた通り、

┃ 今、ワタシのお腹の中に赤ちゃんがいるらしくて、

┃ それで、堕ろそうかちょっと悩んでます。

┃ 皆さんは、どう思いますか?

┃ 意見を聞かせてください。

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「詳しいことが何ひとつ書かれていない、

 かなり素っ気ない投稿だった」


「当然、

 みんなの反応も、あまり良いものではなかった」


┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ 堕ろしたければ堕ろせば?

│ ってか、これ、

│ どう考えても意見を聞かせてください、って態度じゃないよね?

│ 何も書いてないじゃん。

│ たったこれだけの説明で、

│ ウチらに、どんな答えを期待してるわけ?

│ 相談する気、本当にある?

│ ま・さ・か、ウソじゃないよね?

│ ウソなら、即 通報するから。

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ どうせ避妊してなかったんでしょ。

│ せっかく赤ちゃんを授かったんだから、

│ 責任持って産んで、あなたたちの手でちゃんと育ててやりなさいよ。

│ 世の中には、

│ なかなか子供が出来なくて、

│ それで、つらい思いをしながら頑張ってる人もたくさんいるんだから。

│ あなた、その人たちの気持ちを少しは考えたことある?

│ 堕ろすなんて、軽々しく口にするんじゃないよ。

│ 命って、

│ 『ちょっと悩んでる』とか、そういう軽いものじゃないんだよ?

│ 分かる?

│ さっきのはボツったけど、これなら載るよね?

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ 堕ろしたらいいじゃん。

│ 要するに、そう言って欲しいんでしょ?

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「そんな感じの、

 掲載基準ギリギリの、辛辣(しんらつ)なコメントが多く並んでいた。

 でも、中には、

 ウサギさんのことを親身になって心配しているコメントも、ときどきあった」


┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ 高校生で妊娠って、大変だね・・・。

│ 不安になっちゃうよね。

│ 彼氏やご両親とは、もう相談した?

│ 産むにしても堕ろすにしても、

│ ある程度のまとまったお金が必要になってくるから、

│ もしまだなら、早めに言っておいた方が良いよ。

│ それから、

│ もう夏休みに入ってると思うけど、

│ 一応、学校の先生にも報告しておかないと。

│ あと、お腹にいる赤ちゃんって、

│ 今、何週目くらい?

│ それによっても、だいぶ違ってくるよ。

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ ごめんね。

│ こういう相談って、どうしても荒れやすいの。

│ あんまり気にしないでね。

│ でも、

│ みんなの言う通り、もう少し色々と書いてくれないと、

│ こっちもアドバイスのしようがないよ。

│ ウサギさんの力になってあげたくても、力になれない。

│ あなたとお腹の赤ちゃんのこと、もうちょっと教えてくれない?

│ 自分が妊娠してる、って、

│ いつ、どうやって分かったのか・・・とか、

│ 病院にはもう行ったのか・・・とか、

│ あなたや彼氏さんは、どうするつもりでいるのか・・・とか、

│ お互いの親は、このことを知っているのか・・・とか、

│ もし知っているのなら、なんて言っているのか・・・とか。

│ 書ける範囲で良いから。

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「そして、

 そういった色々なコメントが20件近く並んだ先に、

 ウサギさんからの返事が付いていた」


┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ 全部読みました。

│ 詳しいこと何も書いてなくて、ごめんなさい。

│ 本当は色々と書いてあったのですが、ちょっと長くなり過ぎてしまったので、

│ それで、投稿の直前になって全て消してしまいました。

│ あまりに長いと読んでもらえないかも、って思ってしまって・・・。

│ 今から、また全部書きます。

│ かなり時間がかかると思います。

│ もし宜しければ

│ それを読んだあとで、改めて意見を聞かせてください。

│ お願いします。

│ ワタシのせいで皆さんに不快な思いをさせてしまって、

│ 申し訳ありませんでした。

│ ろんりーウサギ

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「その後、

 ウサギさんに対する慰めや励ましのコメントが2、3件あって、

 それから、

 また、ウサギさんの返事が付いていた」


┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

│ かなりの長文ですが、宜しくお願いします。

│ ワタシは、

│ 今、高校3年生です。

│ 妊娠したかも・・・って、最初に思ったのは、

│ 7月上旬でした。

│ 予定日を1週間過ぎても来てなくて、

│ それで、もしかしたら・・・と思いました。

│ そのときの気持ちは、

│ こう書くと怒る人もいると思いますが、

│ 嬉しいと言うよりも、

│ ワタシ、どうなっちゃうんだろう・・・という不安や怖さでいっぱいでした。

│ 親や学校の先生になんて言われるか、

│ 学校中で噂になって、みんなにヒソヒソ話されないか、

│ とても心配でした。

│ 次の日の夕方、

│ 彼に会って、伝えてみました。

│ こう言われました。

│ 『そんなの気のせいだろ。

│  オレ、いつも つけてるじゃん』

│ ただ、

│ ワタシは、やっぱり不安でした。

│ だから、

│ 『一応、検査薬を買って確かめたい』って言ったら、

│ 『大丈夫だって。

│  ストレスとか体の調子とかで1週間くらい遅れることもあるんだろ?』って返されました。

│ 結局、そのときは調べませんでした。

│ でも、それから1週間しても来ませんでした。

│ そのことを、

│ 彼に4日振りに会えたとき、伝えてみたのですが、

│ そうしたら、

│ 『お前、最近ずっと体がだるいとか熱っぽいとか言ってたじゃん。

│  カゼだよ、カゼ。体の調子が悪いだけだよ。気にし過ぎ』って言われました。

│ 二日後の夜、

│ 不安で仕方なくなって、友達に打ち明けました。

│ 友達は、

│ 『それ、絶対に妊娠だよ。

│  ツワリっぽい症状だって出てるんでしょ?

│  だったら、間違いないよ・・・』って言ってくれて、

│ 次の日、

│ お姉さんの検査薬を、学校にこっそり持って来てくれました。

│ 休み時間にトイレで調べました。

│ 陽性でした。

│ ショックはそれほどありませんでした。

│ やっぱり、って感じで、

│ むしろ、逆にスッキリしました。

│ トイレを出たあと、

│ 友達の待つ、渡り廊下に行きました。

│ 友達は、

│ ひとりで外を眺めるフリして立っていたので、ワタシもその横に並び、

│ 近くに人がいないタイミングを見計らい、スカートのポケットから検査薬を出し、

│ 前を向いたまま、隣の友達に渡しました。

│ ちょっと間があって、ワタシの手に検査薬が返ってきたので、

│ ワタシは、それをスカートのポケットに戻しました。

│ 友達が、

│ 『・・・やっぱ、そうだったんだ』って言いました。

│ ワタシは、

│ 『うん、そうみたい・・・』って返しました。

│ 少しすると、

│ 隣で、鼻をすする音がしたので、

│ すぐにそっちを見ると、

│ 友達が顔を俯け、涙ぐんでいました。

│ ワタシは慌てて、

│ 『あの、

│  ワタシ、大丈夫だから。平気だから』って言いました。

│ 友達は、

│ 鼻をすすって、目元の涙を手で拭ったあと、

│ 『うん・・・』って返しました。

│ 次の休み時間になると、すぐに友達がワタシの教室に来てくれました。

│ ふたりで、

│ あまり人のいない、図書室前の廊下に行きました。

│ 友達が、

│ 『いつ言うの?』って訊きました。

│ ワタシが、

│ 『多分、明日かな・・・。

│  彼、今日はバイトで忙しい日だし、

│  こういうことって、会って直接言った方が良いと思うし』って答えたら、

│ 友達が、

│ 『今日言わなきゃダメ!

│  あと、

│  私、あんたの彼氏のこと絶対に許せない!

│  文句言ってやる。一緒に行く!』って怒り出したので、

│ 一緒に行くのは、なんとか我慢してもらって、

│ それで、

│ 学校が終わったあと、スマホで彼にメッセージを送りました。

│ 《大事な話があるから、どうしても今日中に会いたい》って書きました。

│ すぐ既読になったのですが、

│ それから10分くらい経っても返事が来なかったので、

│ 《何時になっても良いから、どうしても会いたい》って、もう一度送りました。

│ 5分後くらいに返事が来ました。

│ 《夜の11時過ぎなら、たぶん会えると思うけど》って書いてありました。

│ ワタシは、

│ 《良かった。ありがとう。

│  どこで会う?》って書いて送りました。

│ すぐに返事が来ました。

│ 《いつものコンビニで待ってて。

│  バイトが終わったら車で迎えに行くから。

│  でも、多分だからな。

│  もしかしたら急用で行けないかもしれないからな》って書いてありました。

│ ワタシは、

│ 《分かった、夜の11時くらいにコンビニで待ってる。

│  来れないようなら連絡して》って送って、

│ それで、彼とのやり取りを終えました。

│ 隣でワタシの様子を見守っていた友達に、そのやり取りの内容を伝えると、

│ 物凄く怒り始めちゃって、

│ 『やっぱり私も一緒に行く! 許せない!』って、また言い出したのですが、

│ 必死に(なだ)めて、

│ なんとか遠慮してもらいました。

│ ちなみに、

│ ワタシの友達は、この話では怒ってばかりいますが、

│ 普段は、こんなに怒ったりする人じゃありません。

│ ワタシが、うっかりミスして迷惑をかけてしまっても、

│ いつも笑って許してくれて、

│ 逆にワタシのことを心配してくれるような、とても優しい人です。

│ 次に続きます。

└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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