162.「気付くと、もう朝になっていた」
「気付くと、もう朝になっていた」
「一瞬だった」
「目覚まし時計が、ピピピピッ・・・って鳴ってて、
僕は、
目をこすりながら、アラームを止め、
体を起こした」
「頭が、ズキッとした」
「喉も、いがらっぽくて、
顔が熱っぽかった」
「仏間に行って、
救急箱から体温計を出して熱を計ったら、37℃ちょっとあった」
「ホッとした」
「その体温計を、お勝手にいるばあちゃんに見せて、
僕は、また自分の部屋に戻って、
ベッドに潜り込んだ」
「学校は、
その日は休むことになった」
「次の日も、学校を休んだ」
「ひと晩経っても、熱が下がっていなかった」
「でも、
夕方になると、だいぶ楽になってきて、
夜、熱を計ってみると、
もう、平熱になっていた」
「僕は、
ため息をつきながら、明日の学校の支度をして、
ベッドに入った」
「朝になった。
念のため、体温計で計ってみたけど、
やっぱり平熱だった」
「その体温計を、お勝手にいるばあちゃんに見せて、
そのまま朝ご飯を食べ、
ランドセルを背負って、体操袋を持って、
家を出た」
「すぐに気持ち悪くなってきて、
しばらく歩くと、吐きそうになった」
「こっちは、全然治っていなかった」
「僕は、
また、ときどき立ち止まって、
しゃがみ込んで、靴紐を結び直すフリをしながら、
学校へ向かった」
「教室に入ると、
お喋りをしていた連中がこっちを見て、
すぐに顔を寄せ、
何かを言って笑いあった」
「ランドセルの中身を机に入れて、
その、カラになったランドセルを持って、
教室の後ろの、ロッカーの方へ歩いていった。
途中、さっき笑ってた連中の近くを通ると、
誰かが、
『何だ、
お前、死んだんじゃなかったのかよ』と言って、
僕のお尻を蹴飛ばした」
「転びそうになって、近くの机にぶつかった」
「うわ、きったねー。早く消毒しないと」
「お祓いもした方がいいんじゃね?。
コイツ、悪魔だし」
「聖水にしようぜ。
そしたら、どっちもオーケーでお得じゃん。
一石二鳥作戦」
「笑いながら、
みんなで楽しそうに、ワイワイと話し始めた」
「僕は、
そのままロッカーに行き、ランドセルをしまって、
自分の席に戻った」
「学校での毎日の嫌がらせは、
また、普通に始まった」
「サッカー部には、
その日から行かなくなった」
「顧問の先生には、何も言わなかった」
「ズル休みだった」
「前と同じように待ち伏せされ、
家に帰るのが遅くなって、また怒られるのがイヤだった」
「学校を出たあと、ダッシュで帰った。
でも、家の中には入らないようにして、
裏に回って、
納屋と家の隙間にこっそりと入って、隠れた。
それで、
5時の音楽が聞こえたら、そーっと表に出て、
普通のフリして、玄関でただいまを言って、
そうして、家に入った」
「何日か経って、
茶の間で、家族3人で晩ご飯を食べているとき、
じいちゃんが言った」
「やれば出来るじゃないか。偉いぞ」
「・・・うん」
「明日からも、ちゃんと早く帰ってくるんだぞ。
分かったな?」
「・・・うん」




