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Summer Echo  作者: イワオウギ
IV
162/292

162.「気付くと、もう朝になっていた」

「気付くと、もう朝になっていた」


「一瞬だった」


「目覚まし時計が、ピピピピッ・・・って鳴ってて、

 僕は、

 目をこすりながら、アラームを止め、

 体を起こした」


「頭が、ズキッとした」


「喉も、いがらっぽくて、

 顔が熱っぽかった」


「仏間に行って、

 救急箱から体温計を出して熱を計ったら、37℃ちょっとあった」


「ホッとした」


「その体温計を、お勝手にいるばあちゃんに見せて、

 僕は、また自分の部屋に戻って、

 ベッドに潜り込んだ」


「学校は、

 その日は休むことになった」



「次の日も、学校を休んだ」


「ひと晩経っても、熱が下がっていなかった」


「でも、

 夕方になると、だいぶ楽になってきて、

 夜、熱を計ってみると、

 もう、平熱になっていた」


「僕は、

 ため息をつきながら、明日の学校の支度をして、

 ベッドに入った」



「朝になった。

 念のため、体温計で計ってみたけど、

 やっぱり平熱だった」


「その体温計を、お勝手にいるばあちゃんに見せて、

 そのまま朝ご飯を食べ、

 ランドセルを背負(しょ)って、体操袋を持って、

 家を出た」


「すぐに気持ち悪くなってきて、

 しばらく歩くと、吐きそうになった」


「こっちは、全然治っていなかった」


「僕は、

 また、ときどき立ち止まって、

 しゃがみ込んで、靴紐を結び直すフリをしながら、

 学校へ向かった」


「教室に入ると、

 お喋りをしていた連中がこっちを見て、

 すぐに顔を寄せ、

 何かを言って笑いあった」


「ランドセルの中身を机に入れて、

 その、カラになったランドセルを持って、

 教室の後ろの、ロッカーの方へ歩いていった。

 途中、さっき笑ってた連中の近くを通ると、

 誰かが、

 『何だ、

  お前、死んだんじゃなかったのかよ』と言って、

 僕のお尻を蹴飛ばした」


「転びそうになって、近くの机にぶつかった」


「うわ、きったねー。早く消毒しないと」


「お(はら)いもした方がいいんじゃね?。

 コイツ、悪魔だし」


「聖水にしようぜ。

 そしたら、どっちもオーケーでお得じゃん。

 一石二鳥作戦」


「笑いながら、

 みんなで楽しそうに、ワイワイと話し始めた」


「僕は、

 そのままロッカーに行き、ランドセルをしまって、

 自分の席に戻った」


「学校での毎日の嫌がらせは、

 また、普通に始まった」



「サッカー部には、

 その日から行かなくなった」


「顧問の先生には、何も言わなかった」


「ズル休みだった」


「前と同じように待ち伏せされ、

 家に帰るのが遅くなって、また怒られるのがイヤだった」


「学校を出たあと、ダッシュで帰った。

 でも、家の中には入らないようにして、

 裏に回って、

 納屋と家の隙間にこっそりと入って、隠れた。

 それで、

 5時の音楽が聞こえたら、そーっと表に出て、

 普通のフリして、玄関でただいまを言って、

 そうして、家に入った」


「何日か経って、

 茶の間で、家族3人で晩ご飯を食べているとき、

 じいちゃんが言った」


「やれば出来るじゃないか。偉いぞ」


「・・・うん」


「明日からも、ちゃんと早く帰ってくるんだぞ。

 分かったな?」


「・・・うん」

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