表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Summer Echo  作者: イワオウギ
IV
160/292

160.「太陽が沈んで、辺りが段々と暗くなってきた」

「太陽が沈んで、辺りが段々と暗くなってきた」


「遊歩道には、

 僕だけが、まだ残っていて、

 石で出来た作品の周りを、ずっとウロウロとしていた」


(すね)当てが、

 片方だけ、どうしても見付からなかった」


「アイツらは、

 もうとっくに帰っていた」


「ひとりきりで、

 一生懸命、探し続けていた」



「夜になり、

 ついに、ほとんど何も見えなくなった」


「脛当て探しを一旦諦めた僕は、

 ひとまず、家に帰ることにした」


「歩いてる最中、

 どうやって言い訳しよう・・・って、ずっと考えていた」



「家の前に着いた」


「門の外で、

 おじいちゃんたちが立って待ってるかもしれない・・・って、心配したけど、

 そんなこと無かった。

 誰も立っていなかった」


「ちょっと、ホッとした」


「玄関の前にもいなかったけど、

 でも、

 その代わり、玄関の明かりは点いていた。

 僕は、

 音をさせないよう、静かに庭を歩いていった」


「玄関まで来ると、

 少しの間、そこでじぃっとして、

 それから、手を戸にかけると、

 ドキドキしながら、そうっと開けた。

 鍵は、かかっていなかった」


「ただいま・・・」


「小さな声でそう言って、中に入った。

 開けた戸を、音がしないように静かに閉め、

 鍵をかけ、

 靴を脱いで、家に上がった」


「廊下を歩いて、茶の間の前に差し掛かると、

 新聞を畳む音と、じいちゃんの声が聞こえた」


「ちょっとこっちに来なさい」


「僕は足を止めた。

 俯いたまま、黙って茶の間に入っていった」


「じいちゃん、

 昨日の夜、お前に何て言った?」


「ちゃぶ台の前に立つと、

 じいちゃんが、そう言った。

 僕は、

 下を向いたまま、小さく答えた」


「・・・もうちょっと早くに帰ってきなさい」


「それで、

 今、何時だ?」


「僕は、壁の時計を見て、

 時間を確認してから、答えた」


「・・・7時50分」


「これのどこが早いんだ。

 言ってみろ」


「僕は黙っていた。

 少しして、

 じいちゃんが、また訊いた」


「早い時間なのか?、7時50分ってのは」


「・・・遅いです」


「こんな時間まで何してた」


「・・・公園でサッカーしてました」


「ずっとか?」


「・・・はい」


「本当か?。

 暗くて、ボールも見えないだろ」


「電気が点いてて、明るかったから・・・」


「誰とサッカーしてたんだ」


「友達・・・」


「友達って、誰だ?。

 なに君だ?」


「僕は黙っていた。

 ただ、

 自分の、靴下を履いた足をじぃっと見ていた。

 お腹や背中、腕や足が、

 ジンジンと痛んだ。

 お勝手で食器を洗っている音が、よく聞こえた。

 しばらくしてから、

 じいちゃんがため息をついて、僕に言った」


「お前のご飯は、じいちゃんが下げさせた。

 今夜は無しだ」


「はい、分かりました・・・」


「明日は、6時には帰ってきなさい」


「はい・・・」


「本当に分かったのか?」


「はい・・・」


「じゃあ、

 帰ってくるのは何時までだ、言ってみろ」


「6時です・・・」


「6時まで、だ。

 必ず守れ。

 いいか、

 1分でも遅れたら、

 そのときは、明日も夜ご飯を食べさせないからな。

 分かったな」


「はい、分かりました・・・」


「じゃあ、もう行ってよろしい」


「はい・・・」


「僕は、

 俯いたまま、ゆっくりと後ろへ向き直した。

 部屋の出口に向かって歩き出すと、

 後ろからすぐに、

 長い大きなため息と、新聞を広げる音が聞こえた」


「まったく、

 こんな出来の悪い子じゃ、せっかく生んだ母さんも浮かばれんわ・・・」


「じいちゃんが、そう呟いた。

 僕は、茶の間をそのまま出ていった。

 廊下をトボトボ歩いて、自分の部屋に戻り、

 ドアを閉めた」

次の161話は、描写を出来るだけマイルドにしたつもりですが、

人によっては、それでもキツイと思います。

読まなくともそんなには影響はない・・・と私は思っていますので、

読みたくない人は1話飛ばし、読むのを162話から再開すると良いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ