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Summer Echo  作者: イワオウギ
IV
146/292

146.「何で言ってくれたの?」

「何で言ってくれたの?」


「オマキが、しばらくして尋ねた」


「僕が、

 下を向いたまま、黙っていると、

 オマキが、また尋ねた」


「俺が可哀想だったから?」


「それもあるけど・・・、」


「僕は、

 そう言って、少し考えたあと、

 顔を上げ、周りを見た。

 近くの席に人がいないことを確認して、

 それから続けた」


「あの前の日の夜、

 僕、オマキを見たんだ、

 ・・・隣町の、本屋の前で」


「オマキは、何も言わなかった。

 何事も無かったかのように、

 ゲームを、そのまま続けていた。

 僕は、

 少ししてから、更に言った」


「あの夜、

 じいちゃんの車に乗って、ご飯を食べに行ったんだ。

 で、

 その帰り、スーパーに寄っていくことになって、

 じいちゃんたちの買い物が終わるのを本屋で待とう・・・って思って、

 ひとりで本屋へ向かって、

 大通りの信号が変わるのを、バスの待合所で座って待ってたら、

 本屋からオマキが出てくるのが見えて、

 僕の目の前を、走って通り過ぎていって、

 それで・・・」


「僕は、そこで話すのをやめた。

 上目で、こっそりとオマキを見た。

 オマキは、

 ゲーム機の画面に目を向けたまま、指を黙々と動かしていた」


「僕は、

 しばらくしてから訊いた」


「お金、払った?」


「オマキは答えなかった」


「お店の人に言った?」


「オマキは答えなかった」


「お店に、ちゃんと返した?」


「オマキは、

 やっぱり、何も答えなかった」

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