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Summer Echo  作者: イワオウギ
IV
144/292

144.「2月8日」

「2月8日」


「その日は土曜日で、

 学校も部活も無かった」


「みんなで卓球して遊んで、その帰り、

 日暮れどきの商店街の道を、友達とふたりで歩いていた。

 友達と話しながら、

 ふと、道の脇にあるファストフードの店を見ると、

 奥の席に、

 僕と同じくらいの背の、メガネをかけた子供が座っていた」


「オマキだった。

 オマキは、店の中でひとりでゲームをしていて、

 そのゲーム機の画面に目を向けたまま、

 テーブルの上の、紙コップに差したストローに口を伸ばし、

 ジュースをちょっとだけ飲んで、

 すぐに、

 また、ゲームを始めた」


「知ってる?、

 オマキってさ、今度はブラスバンド部に入ったんだって」


「友達が、そう言った」


「うん、知ってる」


「前に向き直した僕は、

 歩きながら、そう返した」



「次の日」


「僕の、11回目の誕生日」


「午前中は子供会があって、市民体育館でスポチャンをやった。

 お昼に、

 スタッフの人が作ってくれた豚汁と俵のおにぎりを食べて、

 その後、お片付けをして、

 そうして子供会が終わったあと、

 スマホを持ってる友達が、仲の良い人を何人か呼んで、

 みんなで近所のオモチャ屋さんに行った。

 お店の1階の売り場にある色々なオモチャを見て回って、

 それから2階に上がって、

 そこにあるミニ四駆のコースで、大会用のマシンを走らせていた友達たちと話をしていると、

 いつの間にか5時を過ぎてて、

 それで、

 みんな、家に帰ることになった」


「オモチャ屋さんを出て、友達と別れて、

 ひとり、商店街を歩いているとき、

 また、ファストフードの店の前を通った。

 歩きながら、店の中を覗くと、

 奥の席には、その日もオマキがいて、

 ひとりでゲームをしていた」


「僕は、足を止めた。

 少しの間、じっと見ていた。

 でも、

 オマキが指先をメガネとの隙間に入れて、少しだけ目をこすって、

 その後、こちらを振り向こうとしたので、

 僕は、すぐに見るのをやめて、

 再び歩き始めた」



「本屋が近付いてきた」


「折り紙の本とか漫画とかを、ここでちょっと見てから帰ろうと思って、

 入り口の扉を手で押して、中に入った。

 けど、

 棚の前で、

 台に乗って、本の整理をしていた店員さんを見たら、

 段々と胸が苦しくなっていって、

 それで、

 1分もしないうちに、本屋を出た」


「僕は、

 来た道の方を向き、歩き出した。

 でも、すぐに立ち止まった」


「下を向いて、考えて、

 ちょっとしてから顔を上げて、

 また、歩き出した」


「そのまま、

 ファストフードの店に向かった」



「オマキは、

 まだ、奥の席でゲームをしていた。

 僕は、

 自動ドアを開けて、中に入った。

 フライドポテトを注文して、

 それが乗ったトレイを持って、オマキのいるテーブルに向かった」


「そのときの店内は、そんなに混んでいなかった。

 半分以上のテーブルが()いていた。

 僕は、

 オマキの横に立つと、少ししてから声をかけた」


「何してるの?」


「オマキはビクッとし、こっちを見上げた。

 そして、僕の顔を確認すると、

 すぐに、またゲーム機の画面に視線を戻して、

 指を動かしながら答えた」


「ポケドラ。

 ・・・Gじゃない方」


「面白いの?」


「まぁまぁ」


「そこ、座っていい?」


「僕が尋ねると、

 オマキは、ちょっとしてから答えた」


「いいよ」


「僕は、

 荷物を奥の席に置いてから、持っていたトレイをテーブルの上に下ろし、

 そうして、オマキの向かい側に座った」


「ポテト、食べる?」


「いい」

作中に登場するスポチャンは、スポーツチャンバラの略です。

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