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Summer Echo  作者: イワオウギ
IV
138/292

138.「11月のあとの方になると・・・」

「11月のあとの方になると、

 オマキは、先輩や一部の5年生たちの完全なパシリになっていた」


「ドリブル練習のときのカラーコーンを並べたり、

 紅白戦のときのライン引き、部活終わりのトンボがけ・・・、

 そういった雑用は、

 5年も6年も関係無く、みんな順番でやることになっていたけど、

 オマキだけは、誰かの代わりに毎回やらされていた」


「部活の遠征のときは、

 列の後ろの方で、みんなの荷物を持たされていたし、

 部活が終わったあと、

 オマキが、僕たちと一緒にボールを雑巾で拭いていると、

 先輩たちが、

 楽しそうにお喋りをしながら、履いていたスパイクをオマキの前へ次々と投げ、

 そのまま何も言わずに、校舎にある多目的教室の方へ着替えに行き、

 それに続いて、

 何人かの5年生たちも、同じように自分のスパイクをオマキの前に投げ、

 そのまま、校舎の方へと歩いていった」


「僕や他のみんなも、そんなオマキがちょっと可哀想だったから、

 先輩たちが見ていないとき、スパイク拭きをコッソリと手伝っていた。

 でも、何日かしてそれがバレた。

 先輩に、

 『俺らはオマキに任せたのに、何でお前らがやってるんだよ。

  今度、誰かが手伝っていたら、

  そしたら、次からはソイツに全部やらせるからな』・・・って言われて、

 それで、

 僕もみんなも、オマキを手伝わなくなった。

 オマキは、辺りが暗くなり始めても、

 体育倉庫の陰で、

 ひとり、スパイク拭きを続けていた」



「先輩たちの、オマキに対するそういった扱いは、

 部活の間だけじゃなかった」


「休み時間のとき、

 ヘッドロックをかけられながら廊下を歩いていたオマキに、

 後ろから別の先輩がケリを入れたり、

 笑いながら頭にバリカンを決めていたりしているのを、何回か見かけたことがあった」


「噂によると、

 土日とか、学校が休みの日も、

 そんな感じのようだった」


「公園の砂場で、

 アニメやゲームに出てくる必殺技を受ける役をやらされているのを見た・・・という人がいたし、

 自転車の前カゴにジュースやお菓子をたくさん入れたオマキが、

 先輩たちの方へ走っていくのを見た・・・という人もいた」


「こういった噂は、

 日が経つにつれて、段々と酷くなった。

 クラスの女子全員に、電話で無理やり告白させられた・・・という噂もあったし、

 漫画の新刊をオマキに持ってこさせて、

 それをみんなで回して読んでいる・・・という噂もあった」


「部活中でも、

 先生の見ていないところで腕をつねったり、足を引っ掛けて転ばせたり、

 オマキの靴や服を、ライン引きの粉まみれにしたり・・・、

 とにかく、やりたい放題だった」



「誰がどう見てもイジメだった」


「それに気付いていないのは、学校の先生たちだけで、

 5年の男子も女子も、

 そして多分、6年生も、

 全員、オマキのイジメを分かっていた」


「でも、

 みんな、見て見ぬフリをした」


「オマキがイジメられているのを見かけても、

 何事も無かったかのように、その場を通り過ぎていたし、

 先生に言いつける人もいなかった」


「誰も助けなかった」


「僕だって、そうだった」


「見て見ぬフリをした」


「イジメに巻き込まれるのが怖くって、

 だから、助けなかった」


「友達とバカ話をして、たくさん笑って、

 そうして、

 出来るだけオマキのことを考えないようにして、毎日を過ごしていた」


「最低なヤツだった」

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