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Summer Echo  作者: イワオウギ
IV
137/292

137.「11月に入った」

「11月に入った」


「日曜日、

 近くの小学校に出向いて、サッカーの対外試合をすることになった」


「午前中に5年生の試合が終わって、

 階段とか適当な段差に座って、お昼ご飯を食べて、

 午後から始まる6年生の試合を、みんなで待っているときだった。

 友達とトイレに行って、その帰り、

 校庭に下りていくと、

 ピッチに入るタッチラインの前で、

 何人かの男子が、かたまって立っていた。

 その、かたまって立っている男子は、

 ウチの学校の6年と5年で、

 ひとりだけが、こっちを向いて立っていて、

 残りはみんな、向こうを向いていた。

 よくよく見てみると、

 そのかたまりの中心に、オマキの姿が見えた。

 オマキは、

 タッチラインの上で両足を突っ張り、進まないよう踏ん張っていて、

 周りの人たちは、楽しそうに何かを言いながら、

 その、オマキの背中や肩とかを押していた」


「隣を歩いていた友達が、

 進む向きを急に変え、僕に言った」


「そっちはやめて、こっちに行こうぜ」


「僕は、ちょっと歩いてから足を止めた」


「そうして、少ししてから、

 オマキに背中を向け、友達の方に向き直すと、

 そのまま、歩き始めた」


「でも、

 友達と並んで歩いてるときに、また足を止めた」


「オマキの方を振り返り、そっちへ近付いていった」



「先輩たちの声が、段々とハッキリ聞こえるようになった」


「いいから行けって。

 ぜってぇウケるから。

 そしたらお前、こっちの学校でも人気者だぞ?。

 んな心配するなって」


「お前、男だろ。

 さっさと行って、やって来いよ。

 大丈夫だって。俺らがここで見といてやるから」


「僕は、

 そんなことを言って囃し立てている先輩たちの(そば)へ行き、立ち止まった。

 こっちを向いて立っていた人が、僕を睨み付けて言った」


「あ?、何だよお前。

 邪魔すんなよ」


「その瞬間、

 オマキの背中を押していた先輩たちは、ピタッと止まった。

 一斉に僕の方を振り返る」


「僕は、

 その先輩たちの顔を見ながら、口を開いた」


「あの・・・、すみません。

 え、えと、その・・・、

 せ、先生がオマキ君を探してて、それで僕・・・」


「先輩たちは、

 途端に嫌な顔をして、舌打ちをした」


「チッ、・・・行こうぜ。

 あーあ、クソつまんねぇ・・・」


「そう言って、

 先輩たちは去っていった」


「僕は、

 あとに残ったオマキに近付き、声をかけた」


「僕たちも戻ろうよ」


「オマキは返事をしなかった。

 こちらに背中を向け、俯いたまま、

 そこに立ち尽くしていた」


「そのとき、

 離れたところにいた友達が駆け寄ってきて、

 僕に言った」


「バカだなぁ、お前。

 俺、知らないからな」


「僕は下を向いた。

 何も言い返せなかった」


「友達は、

 少ししてから、ため息をつき、

 僕に訊いた」


「で、

 お前、何て言ったわけ?」


「えっと、僕、

 先生がオマキ君を探してる、って・・・」


「だったら、さっさと先生のところに行くフリをしろよ。

 先輩たちが、こっち見てるんだぞ」


「僕は、

 その瞬間、ドキッとした。

 怖くなった。

 オマキの方を向いて、慌てて言った」


「今の聞いた?。早く行こ」


「オマキは顔を少し上げ、こっちを向いた」


「僕と友達は、すぐに校舎の方へと向き直し、

 ふたり揃って駆け出した」


「階段を上がったあと、後ろを振り返ると、

 オマキは、ちゃんとついてきていた」


「顔中が赤くなっていて、泣きそうな表情をしていた」

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