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Summer Echo  作者: イワオウギ
IV
136/292

136.「10月・・・」

「10月。

 運動会の日が近付いてきた」


「校庭で全体練習があって、その行進が終わって、

 次の練習の開始時間まで、みんなで休憩して待ってるときだった。

 後ろの方で、

 何人かの男子の、大きな笑い声が聞こえた」


「何コイツ、すっげー面白いじゃん。

 ちょー腹痛いんですけどー」


「俺なんか笑い過ぎで、顔中の筋肉がいてーわ。

 こんな笑ったの久し振りだわ」


「すげーなコイツ、お前の言った通りじゃん」


「でっしょー?。

 コイツ、大人しいくせに実は意外と面白いヤツで・・・」


「僕は、声のした方を振り向いた。

 隣のクラスの男子、数人が歩いてて、

 先頭にはオマキがいた。

 そのときのオマキは、

 お笑い芸人のネタの、進化した〇〇(まるまる)が歩くシリーズをやっていて、

 体の前で伸ばした腕をこんなふうにパタパタと動かし、(もも)を高く上げ、

 ・・・ッチーン!、・・・ッチーン!、・・・ッチーン!、って言いながら歩いてた」


「おい、オマキ、

 進化した電子レンジが歩くシリーズはもういいから、

 次はタクワンでやってみろよ。

 3・・・、2・・・、1・・・、

 ハイ!、進化したタクワンが歩くシリーズ!」


「そう言われたオマキは、ムンクの叫びみたいな変顔になった。

 そして、

 両腕も両足も伸ばしたままで、

 体を左、右、左、右って順番に傾けて、

 タックワン!、タックワン!・・・って強く言いながら歩き始めた」


「タクワンって、進化するとそんな顔になるのかよ。

 俺、初めて知ったわ」


「タックワン!、タックワン!って何だよ。

 あー、くっそ腹いてー」


「オマキのすぐ後ろを歩いていた男子は、

 そんな感じのことを言って、

 また、ゲラゲラと大きな声で笑った」


「僕のクラスのみんなも、

 オマキの歩くタクワンを見て、クスクスと笑っていた」


「あの転校生ってさー、すげーオモロくね?」


「僕の隣にいた友達が近くに顔を寄せ、そう訊いた」


「僕は、

 少ししてから、何も言わずに頷いた」


「だよな、面白いよな。

 ちくしょう、羨ましいなぁ。

 何であの転校生、ウチのクラスに入ってこなかったんだよ」


「そう言った友達は、僕から離れると、

 オマキを見ながら、腹を抱えて笑った」


「僕も確かに面白いと思ったし、ちょっとだけ笑っちゃったけど、

 でも、すぐに笑うのをやめた」


「僕の心の奥で、

 よく分からない、嫌な気持ちが、

 グルグルと動いていた」



「オマキは、

 それからは、その男子グループと(つる)むようになった」


「休み時間のときも部活のときも、いつも一緒で、

 度々出される、お笑い芸人のネタのリクエストに対して、

 ニコニコと笑いながら、

 一生懸命に、面白おかしく応えていた」



「運動会が終わって、しばらく経ったある日のことだった。

 友達と話をしながら、学校の廊下を歩いてると、

 向こうから、

 階段を下りてきたばかりの、6年生のグループが歩いてきた。

 サッカー部の先輩たちだった」


「僕も友達も立ち止まって、廊下の端に寄ってから、

 チーッス、って挨拶した」


「先輩たちは、軽く手を上げると、

 そのまま楽しそうに何かの話をしながら、僕たちの横を通り過ぎていった」


「その先輩たちのすぐ後ろを、

 5年生の、ふたりの男子が歩いていた。

 ふたりとも隣のクラスの男子で、

 そのうちのひとりは、オマキだった」


「友達と僕が、再び廊下を歩き出すと、

 後ろから声が聞こえてきた」


「えー、

 そういうの、俺じゃなくてオマキに言って下さいよぉ。

 オマキの方がそっくりだし、ぜったい面白いッス。

 保証するッス。

 ・・・おい、オマキ、

 さっきの先輩の言葉、聞いただろ?。

 早くやれよ。トロいなぁ。

 いい加減、少しは学習しろよな」


「僕は、後ろを振り返ろうとした。

 そしたら、隣を歩いてた友達がすぐに言った」


「やめとけって。

 俺らが目ぇつけられるじゃん」


「それを聞いて、

 僕は、振り返るのをやめた」


「友達が、少ししてから言った」


「アイツ、最低だな」


「僕も、そう思ったけど、

 でも、

 その友達の言葉に、素直に頷くことは出来なかった」

上述のお笑い芸人のネタは、私が勝手に考えたヤツです。

多分、大丈夫だと思いますが、

既に誰かがやっていたネタでしたら、スミマセン・・・。

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